ODA(政府開発援助)

令和元年5月30日

評価年月日 令和元年5月24日
評価責任者 国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

省エネルギー推進融資計画(フェーズ2)

(3)目的・事業内容

 本計画は,経済成長に伴いエネルギー需給が逼迫しているバングラデシュにおいて,ツーステップローン〔注〕による譲許的融資等を通じて省エネルギー機材の導入を促進させ,エネルギー利用効率を向上させることにより,エネルギー需給の安定及び温室効果ガスの削減を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与するもの。
〔注〕ツーステップローンとは,借入国の金融機関(開発銀行等)を通じ,民間企業等に一定の政策実施のために必要な資金を供与するもの。2つ以上の金融機関を経由して,最終受益者である企業に対する融資が実行される。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)ツーステップローン(民間企業の省エネ機材導入のための譲許的融資)
    • (イ)コンサルティング・サービス(資金管理を含む事業実施促進,省エネルギー機材導入促進融資の技術面の支援等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    200.76億円 0.9% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)金利は,一般条件(固定・基準)を適用。
     コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず,かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)上のカテゴリFIに該当する。なお,サブ・プロジェクトに,カテゴリA案件は含まれない。
用地取得
特になし。
外部要因リスク
特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュでは,近年,急速な経済成長や工業化の進展に伴う電力需要の急増により電力供給が追いついておらず,2020年時点の推計電力需要13,300メガワットに対し,最大発電実績は10,084メガワットと需要の約7割に留まる。2016年から10年間にわたり,年率約9.3%の電力需要の増加が見込まれる一方,発電の6割を依存する国内天然ガスは産出が頭打ちとなる見通しであり,電源開発やエネルギー源の多様化が急務となっている。かかる状況の下,同国政府はエネルギー源の多様化や発電設備の増強を通じ,電力の供給体制の強化を図ってきたが,同時に,発電能力に見合うようピーク電力需要を抑制していく省エネルギー政策の促進を図ることが不可欠となっており,課題解決に向け,同国政府は2012年に省エネルギー鉱物資源省の傘下に持続・再生可能エネルギー開発庁(SREDA)を設立した。SREDAは,「バングラデシュ省エネルギーマスタープラン」(2016年)の下,2029/30バングラデシュ会計年度までに2013/14年度比でGDP当たりエネルギー消費量(エネルギー強度)を20%削減することを目標とし,関連法規の整備や実施体制を強化しているが,目標を達成するためには,実際の省エネ設備導入に向けた促進策が必要不可欠となっている。
 かかる背景を受け,我が国は2016年より円借款事業「省エネルギー推進融資計画」(以下「フェーズ1事業」という。)を通じ,金利条件の譲許性や融資申請手続の簡便さを特長とする政策金融により,省エネ機材の導入促進を支援してきた。当該支援により,省エネ機材の導入が促進され,年間43,721メガワットアワーの消費電力量削減を実現する見込みであるとともに,同国内での省エネ機材への投資促進に係る認知度が向上した。
 本計画は,フェーズ1事業の成果を受け,エネルギー強度の削減目標達成に向けて,同国における省エネ設備への更なる投資促進を支援するため,譲許的融資を拡大するものであり,同国における電力セクターの重点事業に位置付けられる。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは,近年,急速な経済成長を遂げているものの,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラの不足が深刻な状況である。こうした開発ニーズを踏まえ,我が国は2018年2月に策定した「国別開発協力方針」において,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのSDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は,電力・エネルギー受給の安定を図るとともに,省エネルギー機材の導入促進によってエネルギー利用効率の向上を図るものであることから,重点目標の(ア)に合致するとともに(イ)に含まれる気候変動対策に資する側面も有している。また,SDGsゴール7(エネルギー),ゴール9(イノベーション)及びゴール13(気候変動)にも貢献するものである。
 さらに,本計画は,2014年の日バングラデシュ首脳会談で合意された「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の下,投資環境改善に寄与する重要案件であり,本計画を通じて,経済・社会開発を進めるバングラデシュの取組を支援することは,日バングラデシュ関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 本計画では,2つの実施金融機関(インフラストラクチャー開発公社及びバングラデシュインフラ融資基金)の融資枠を予め決めず,融資進捗状況に応じ各金融機関の取扱額を設定していくことで,競争性を確保する。また,事業全体の統括及び調整を担う実施機関であるSREDAが技術諮問委員会を形成し,融資対象機材リストの準備と改定への助言を受けることとする。

(3)有効性

 本計画により,ツーステップローンによる譲許的融資等を通じて省エネルギー機材の導入を促進させ,エネルギー利用効率を向上させる見込み。これにより,エネルギー需給の安定及び温室効果ガスの削減に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。また,2009年度バングラデシュ国別評価(第三者評価)報告書。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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