ODA(政府開発援助)

平成31年4月18日

評価年月日:平成30年5月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場雄一

1 案件名

1-1 供与国名

ナイジェリア連邦共和国(以下「ナイジェリア」という。)

1-2 案件名

ナイジェリア疾病予防センター診断能力強化計画

1-3 目的・事業内容

 ナイジェリア連邦首都区に位置するナイジェリア疾病予防センター(NCDC)の国家標準検査室敷地内にバイオセーフティ・レベル(BSL)3の封じ込め検査室等を設置することにより,感染症対応及びサーベイランス機能体制の強化を図り,もって同国の包摂的かつ強靱な保健・医療システムの整備に寄与するもの。供与限度額は15.8億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画の環境社会配慮カテゴリ-分類はCであり,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
  • (2)本計画の実施機関である連邦保健省及びNCDCが,先方負担事項である用地提供や整地を適切に履行することが必要となる。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ナイジェリア(一人当たり国民所得2,450ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されている。
  • (2)同国は,野生株ポリオウィルス常在国の1つであり,同国起源のラッサ熱の流行により,毎年多くの死者が発生(直近の流行期(2018年1月~4月)で114名)し,感染症リスクが依然高い国である。このため,同国政府は,国家開発計画「Nigeria Vision 20: 2020」において保健分野を重点セクターとし,また,国家保健政策において感染症対策を重要課題の1つと位置づけ,検査室の診断能力強化に取り組んでいる。
  • (3)2010年に感染症の予防,緊急対応や監視能力の向上を目的として,NCDCが設立され,ナイジェリアにおける感染症検査室ネットワークの中心的な役割を果たしている。しかし,NCDCには,高病原性病原体の詳細な検査を行う検査室がなく,迅速かつ安全で確実な感染症の検知の阻害要因となっている。2014年に同国でエボラ出血熱が流行した際にも,詳細な検査を行う検査室がないことにより,迅速かつ安全で確実な検知が行えず,公衆衛生危機への初動の遅れにつながったように,検査室設置の緊急性・必要性は高い。
  • (4)我が国は,対ナイジェリア国別開発協力方針において,「包摂的かつ強靱な保健・医療システムの整備」を重点分野と定め,同分野の支援を実施している。具体的には,無償資金協力「小児感染症予防計画」(2000~2012年度)及び円借款「ポリオ撲滅計画」(2014~2015年度)によりポリオ・ワクチンの調達等を支援するとともに,JICAの技術協力「ラゴス州における貧困層のための地域保健サービス強化プロジェクト」(2014~2018年度)により,地域保健サービスを提供する公的機関の組織能力強化を広く支援している。我が国によるこれら支援と相互補完的な関係にある本計画を,我が国が実施する意義は大きい。
  • (5)第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)において,我が国は,G7伊勢志摩サミットにおける成果の1つである「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」をアフリカにおいても着実に実践し,強靱な保健システムの促進のため「公衆衛生危機への対応能力及び予防・備えの強化」を進めることを表明しており,本計画は,かかる取組を具体化するものである。
  • (6)また,ナイジェリアは国際社会において基本的に我が国の立場を支持する友好国であり,二国間関係の維持・発展の観点からも同国への支援は重要である。

2-2 効率性

  • (1)ナイジェリア政府の要請及び検査室に関する国際基準を踏まえつつも,現地調査による支援対象の絞り込みを実施し,必要かつ適切な規模とした。
  • (2)供与機材については,単価及び維持管理費の比較検討を行い,その結果を基に導入機材を選定した。
  • (3)過去に実施した同様の案件との比較を行い,事業費の妥当性を検討し,コスト縮減を図った。

2-3 有効性

  • (1)定量的効果
    本計画の実施により,計画完了から3年後に,NCDCの診断能力の向上に係る以下の成果が期待される。
    • ア BSL3検査室で新たに導入・実践される診断法:3手法
    • イ BSL3検査室を活用した研究案件:年5件
    • ウ BSL3検査室研修修了者:25人
  • (2)定性的効果
    本計画の実施により,BSL3検査室の運営開始に伴って以下の直接的,間接的成果が期待される。
    • ア 検査・研究の安全性・質が向上する。
    • イ 感染症対応の強化により,同国における公衆衛生危機が予防される。
    • ウ 西アフリカ地域の感染症対策拠点としての機能が向上する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ナイジェリア政府からの要請書
  • (2)「ナイジェリア疾病予防センター診断能力強化計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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