ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成31年4月11日
評価年月日:平成31年2月7日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
ミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)
1-2 案件名
航空機監視システム改良計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ミャンマー国内の3国際空港(ヤンゴン,マンダレー及びネーピードー)において,空港監視レーダー(ヤンゴン国際空港,マンダレー国際空港)又は航空路監視レーダー(ネーピードー国際空港)(以下,併せて航空機監視システム)の設置とヤンゴン航空交通管制センター(以下「ヤンゴン航空センタ―」)への接続により,同3国際空港の航空機,監視能力強化を図り,もってミャンマーの運輸インフラ能力の向上及び持続的成長に寄与する。供与限度額は28.28億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
本計画の国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリー分類はCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ミャンマー(一人あたり国民総所得1,190ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)ミャンマーでは現在32の民間空港が運用され,うち3空港が国際空港である。ミャンマーの航空需要は年々増加しており,全国空港の取扱旅客数,貨物取扱量は,2013年の約650万人/年,約2.7万トン/年から,2017年にはそれぞれ約1,012万人/年,約6.1万トン/年まで増加している。特に国際空港であるヤンゴン,マンダレー,ネーピードーの各国際空港では,2013年の旅客数455万人(3空港合計)および貨物約2.4万トン(ヤンゴン空港のみ)から,2017年にはそれぞれ726万人/年(3空港合計)および約5.5万トン/年(ヤンゴン空港のみ)と大きな伸びを示している。
- (3)ミャンマー政府は全国運輸マスタープランに基づき,国際民間航空機関(ICAO)が定める国際標準の施設整備を進めているが,航空機監視システムの整備が遅れている。ミャンマーの航空輸送の中心であるヤンゴン空港及びマンダレー空港では空港監視レーダーが未設置又は老朽化による機能不全のため,ノンレーダー離着陸管制を行っている。このため離着陸管制許容量が低く,現在許容量を超過する離着陸の時間帯が発生しており,運航における効率性・安全性の確保に大きな懸念がある。またネーピードー空港では航空路監視レーダーが未設置のため,国内線の約8割(年6千便)が飛行するネーピードー空港上空・周辺が航空路監視レーダーによる監視範囲外(ブラインドエリア)となっており,首都上空の安全が確保されていない。安全性・効率性の確保のため,航空機監視システムをヤンゴン航空センターの航空機監視装置と接続し,一元的に管制業務を実施する必要がある。
- (4)航空安全監督は,ミャンマー政府の義務であり,今後安全上の問題が生ずればICAOによる監査等で航空機の運航を制限されることも想定され,その場合,ミャンマー国内はもとより,ミャンマーと他国間の運航に重大な支障を来すおそれがある。そのため,本計画は,全国運輸マスタープランにおいて,緊急性の高い事業として優先プロジェクトリストに位置付けられている。
- (5)本計画は,航空分野の基本インフラ整備に資するものであり,我が国の対ミャンマー経済協力方針(2012年4月)の重点分野の1つである「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」に合致する。
- (6)また,2016年10月に我が国の国土交通省とミャンマー運輸・通信省の間で「日ミャンマー交通分野協力覚書」が交わされ,本計画は協力分野の一つに位置付けられている。さらに本計画は,2016年11月に行われた安倍総理大臣とアウン・サン・スー・チー国家最高顧問との会談において共同で表明された「日本・ミャンマー協力プログラム」における「ⅴ.地方と都市を結ぶ運輸インフラ整備」を具体化するものであり,ミャンマーの運輸通信大臣からも強い要請を受けてきたものであり,首脳レベルでの会談のフォローアップとしても意義が大きく,二国間関係の強化にも資するものである。
2-2 効率性
我が国は,JICA技術協力プロジェクト「次世代航空保安システムに係る能力開発プロジェクト」(2014から2018年)において,航空機監視システム導入,ヤンゴン航空センターでの一元的な管制業務の実施・監理を優先事業とする航空マスタープランの策定支援を行った。本計画で整備する機材は同技術協力プロジェクトにおける能力強化と相互補完するもの。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待される。
- (1)2024年(事業完成3年後)に,ヤンゴン及びマンダレー空港におけるレーダー管制による離着陸管制,及びネーピードー空港周辺における15,000フィート未満のレーダー監視能力が可能となる見込み。
- (2)ヤンゴン及びマンダレー国際空港に空港監視レーダーを整備し,ヤンゴン航空センタ―に航空機監視装置を設置し,両空港の監視レーダーを同航空センターと接続することで,両空港でターミナルレーダー管制が実施されることにより,ターミナルエリア内の航空機運航の安全性と効率性が向上する。
- (3)ネーピードー空港における航空路監視レーダーの整備により,同空港付近の空域の航空機運航の安全性が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ミャンマー政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)