ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成31年3月26日
評価年月日:平成31年2月6日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
南スーダン共和国(以下「南スーダン」という。)
1-2 案件名
「ナイル架橋建設計画」(追加贈与)
1-3 目的・事業内容
本計画は,南スーダンの首都ジュバからウガンダにつながる国際回廊の途中,ナイル川に架かる老朽化した既存橋の上流に新たな架橋を建設するもの。大型車両の円滑な通行を可能とすることにより,物流の円滑化が実現し,もって同国内の経済発展,ひいては平和の定着に寄与することを目的としている。
供与限度額81.34億円として2013年1月17日に交換公文への署名を行った本計画に対し,治安悪化に伴う工事中断期間中の維持管理費用,工事再開に伴う資機材の再調達等のために30.95億円を追加贈与するもの(追加贈与後の供与限度額:112.29億円)。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる道路セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに分類される。
- ア 事業開始後の大気汚染については,散水等の粉塵対策を行う。また,過積載の防止,散水や土砂運搬時の荷台カバーの設置,適切な建機の使用等による対策を行う。騒音については必要に応じて遮音シートの設置等を行う。
- イ 本計画は約80世帯の非自発的住民移転を伴うため,国内法及び南スーダン道路橋梁省が作成した住民移転計画に沿って用地取得が進められている。
- (2)以下の事項が,南スーダン政府により実施される必要がある。
- ア 適切な住民移転による用地確保
- イ 整備された橋梁の維持管理
- ウ 上記に要する人的手当及び予算措置
- (3)今後,南スーダンの政情・治安が悪化しないこと。事業実施機関や事業実施者との情報収集・連絡協議体制の構築に加え,施工現場や施工関係者の宿泊施設においても必要な安全対策を講じること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)南スーダン(一人あたり国民総所得390ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)2011年7月に独立した南スーダンは,独立までの内戦により,荒廃又は老朽化した都市インフラの整備の必要性が高い。特に,物資の多くを輸入に頼る内陸国であることから,国際輸送路の確保が同国復興上の重要課題となっている。
- (3)首都ジュバと国際流通網を繋ぐ経済回廊の一つであるジュバ-ニムレ道路(ケニアと接続)がジュバ市内中心部に直結するルート上の,バイパス道路がナイル川を渡河する位置に架かっている既存橋(仮設橋)は耐久性が低く,大型車両の通行により落橋の危険性があるものの,現在は同既存橋がジュバ市内でナイル川に架かる唯一の架橋である。今後,ジュバ市の経済発展に伴い国際回廊を通じた物流が更に活発化することが想定されることから,大型車両による貨物輸送の安全性を高め,かつ,市内交通を分散させ混雑を解消することで,物流の円滑化を図る必要がある。
- (4)本計画は,国際輸送の安全性及び効率性の向上を通じて輸送量の増加・円滑化を図るため,ナイル川に架かる橋梁の新設に必要な資金について支援の要請があったものであり,我が国の無償資金協力案件として,2013年6月に工事を開始した。しかしながら,南スーダン国内の諸勢力の衝突等により治安が悪化し,2016年7月以降は工事が中断している。
- (5)2018年9月に諸勢力間の合意が成立し,和平プロセスの進展に伴い国内情勢がある程度安定したことから,復興に向けた期待が改めて高まっている。経済活動の活性化に直結するインフラ整備事業である本計画を再開して経済復興に貢献することは,和平に向けたプロセスの進展を側面支援することにも繋がり,二国間関係の一層の強化に資するものである(計画の再開にあたり,追加贈与が必要となった)。
2-2 効率性
- (1)本計画では,橋梁の整備後,工事に際して仮設した道路を有効活用することで南スーダンが自ら整備すべき取付け道路整備を支援することにより,効率的な効果の発現を図る予定。
- (2)また,本計画と併せて,先方実施機関の道路維持管理能力向上を目的としたJICA技術協力プロジェクトを実施することにより,本計画の効率化を図る予定。
2-3 有効性
- (1)ナイル川を渡河する際の時間が短縮され(横断時の速度が20キロメートル毎時(2011年実績値)から60キロメートル毎時(事業完成予定の2021年計画値)に増大),かつ,大型車両の通行に対する安全性が向上することにより,国際物流が円滑化,活性化する。
- (2)ケニアなど周辺国からの物資輸送の安全性,効率性が向上し,輸送コストの低減に資することから,南スーダンにおける物価上昇の緩和・経済活動の活性化に貢献する。
- (3)国際物流がバイパス道路を迂回,分散してジュバ市内中心部へ運送されることが可能となることから,同市内の物流効率化,交通渋滞の緩和に資する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)南スーダン政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)