ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成31年3月11日
評価年月日:平成31年3月7日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一
1 案件概要
(1)供与国名
スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ」という。)
(2)案件名
コロンボ都市交通システム整備計画(第一期)
(3)目的・事業内容
本計画は,コロンボ市及びその近郊において新交通システム(LRT)を導入することにより,輸送能力の増強,公共交通サービスの安全性・快適性の向上及び大気汚染等の交通公害の軽減を図り,もって社会経済活動の活性化及び都市環境の改善に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- (ア)土木・建築工事(約15.7kmの高架軌道敷設,駅(16駅)・車両基地の建設)
- (イ)車両調達
- (ウ)電気・通信・信号関連工事等
- (エ)コンサルティング・サービス(詳細設計,入札補助,施工監理,運営・維持管理支援等)
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 300.40億円 0.1% 40(12)年 タイド (注)金利は,本邦技術活用条件(STEP)を適用。
コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(以下「JICAガイドライン」という。)(2010年4月制定)に掲げる鉄道セクターに該当するため,カテゴリAに分類される。本計画に係るEIA報告書は,2018年7月に中央環境局によって承認済みである。 - イ
- 用地取得
本計画では,1世帯(3人)の住民移転を伴う21.9ヘクタールの用地取得が想定されており,スリランカ国内手続及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に基づき手続が進められる。住民協議では,被影響住民から本計画に対する特段の反対意見は確認されていない。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
スリランカでは現在,人・貨物輸送の90%以上を道路輸送網に依存しているが,最大都市であるコロンボ市を含む西部州では,国内紛争終結後の堅調な経済成長等を背景に,2008年から2015年にかけて自動車総台数が約1.7倍に増加するなど,既存の主要道路網が飽和状態となっている。これに伴い,コロンボ市中心部では激しい交通渋滞が発生し,交通流動性の低下が都市圏の経済活動に悪影響を及ぼしている。
2015年1月に発足した現政権は,西部州の都市開発・インフラ整備政策を所掌するメガポリス西部開発省を新たに設置し,2016年1月には西部地域の都市開発計画を定めた「西部地域メガポリスマスタープラン」を発表。同マスタープランでは,コロンボ市及びその近郊における渋滞解決の手段として,LRT導入の必要性を挙げている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の「対スリランカ民主社会主義共和国国別開発協力方針」では,同国に対する援助重点分野の一つとして「質の高い成長の促進」を掲げ,我が国技術の活用も視野に入れつつ,首都圏を中心とする人の移動の改善等のための運輸インフラ整備の必要性を指摘しており,本計画は同分野に位置付けられる。
また,2018年3月の日スリランカ首脳会談において,安倍総理大臣からシリセーナ大統領に対し,港湾,運輸及びエネルギー等の分野で「質の高いインフラ」整備を通じて同国の発展を全力で支援していく旨を表明しており,こうした首脳間の合意を着実に実行することは,二国間関係の更なる強化に繋がる。
さらに,本計画は,LRTの導入を通じてコロンボ市及び近郊における持続的な都市開発,さらに社会経済活性化に資するものであり,SDGsゴール11にも貢献すると考えられる。
(2)効率性
本計画では,LRTの効率的な運営/維持・管理に資するよう,スリランカ政府の100%出資により新たに設立される公共企業体の能力構築をコンサルティング・サービス等により支援する。
(3)有効性
本計画により,総延長約15.7kmの区間にLRTを整備することで,フォートからITパークまでの所要時間が68.2分から32.8分に短縮されるとともに,2028年には1日当たり222本の列車が運行され,1年当たりの乗客輸送量は約1億3,200万人となる見込みである。これにより,スリランカにおける社会経済活動の活性化と都市環境の改善に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,JICAガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。また,2013年度スリランカ国別評価(第三者評価)報告書。
本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお,本計画に関する事後評価は,実施機関である国際協力機構が行う予定。