ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成31年2月28日
評価年月日:平成31年2月8日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
モーリタニア・イスラム共和国(以下「モーリタニア」という。)
1-2 案件名
水産物衛生検査公社ヌアディブ検査・分析所建設計画
1-3 目的・事業内容
水産物衛生検査公社ヌアディブ検査・分析所の施設及び機材の整備を行うことにより,モーリタニアの水産物の衛生検査機能の維持・強化を図り,もって同国の水産物の安全性及び付加価値の向上による輸出競争力の強化を通じ,同国の経済成長に貢献するとともに,水産資源の持続的利用促進に寄与するもの。供与限度額は14.25億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
気象条件の悪化等による水産物生産量急減のリスク。また,治安が極度に悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)モーリタニア(一人あたり国民総所得1,100ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)モーリタニアは,豊富な水産資源に恵まれ,水産物や水産加工品が輸出総額の約30%を占めるなど,同国の主要輸出産業となっている。また,同国の開発計画「成長の加速化と共有される繁栄戦略」では,「力強く持続可能で包括的な成長の促進」の中で,水産セクターを高次成長産業に位置付け,産業多様化の促進戦略として輸出強化を掲げている。
- (3)同国は,水産物の主要輸出先であるEUへの輸出を拡大するため,衛生検査強化を図っている。水産物衛生検査公社の検査所において,EU基準に整合した衛生基準に則して衛生検査を行っており,同公社の検査等に合格した水産物や加工工場の水産加工品のみを輸出可能としている。また,同公社は,西アフリカで唯一,国際標準化機構の国際規格ISO17025(試験場の試験能力に関する規格)等の認証を受けており,国際水準を満たした検査機関として信頼を得ている。
- (4)同国の水産セクター開発における最重要拠点となっている同国北部沿岸のヌアディブにある水産物衛生検査公社ヌアディブ検査・分析所は,同公社の本部も兼ね,その検査数は,首都にあるヌアクショット検査所の約2倍である。一方で,施設の老朽化が著しいことに加え,多くの検査機器も老朽化していることから,国際規格の審査機関から改善勧告を受けているが,国際規格への適合性を維持し,検査機能を維持するには,施設の建替え・検査機材の更新が必要となっている。
- (5)我が国は,対モーリタニア国別開発協力方針(2017年9月)において,水産業への包括的な支援を重点分野の一つに掲げており,本計画は同方針に合致する。また,SDGsゴール14(海洋資源の保全)の達成に貢献すると考えられる。我が国は,2016年8月に開催したTICAD VIにおいて,フードバリューチェーンの構築による生産性・付加価値向上に取り組むことを表明しており,本計画はこれを具体化するものである。
- (6)我が国は同国に対して1970年代からタコ漁の技術指導に始まり,漁船,零細漁港,魚市場,海洋調査船,職業訓練学校等,様々な水産分野の支援を実施しており,同国では,我が国支援によるタコつぼ漁が普及している。現在,我が国が輸入しているタコの約4割を同国産が占めており,水産資源の安定的な確保の観点からも同国との関係強化は重要である。また,同国は,水産分野の各種国際会議等においても我が国と協力しており,二国間関係の強化の観点からも本計画を通じた支援は重要である。
2-2 効率性
- (1)必要性及び施工効率を勘案し,モーリタニア政府とも調整の上,本計画の規模の絞り込みを行った。
- (2)検査・分析所の建設場所及び建設構造に関して複数案を検討し,また,導入する検査機器に関して必要性の精査を行い,持続的かつ効率的な運用・維持管理を行う上で最も合理的な構造を採用した。
2-3 有効性
本計画の実施により,2016年基準値と事業完成3年後の2024年の目標値を比べて,主に以下のような効果が期待される。
- (1)国際標準化機構規格(ISO17025)の要求事項(検査場の組織体制,検査環境等)を満たした食品衛生検査項目の数が,6から10に増加する。
- (2)国際食品規格等の食品衛生基準に基づく検査項目数が,121から160以上に増加する。
- (3)検査精度の向上により,我が国や他地域に輸出される水産物の安全性が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モーリタニア共和国政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)