ODA(政府開発援助)

平成31年2月21日

評価年月日:平成30年11月8日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

カンボジア王国(以下,「カンボジア」という。)

1-2 案件名

港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,シハヌークビル港及びプノンペン港において,港湾管理者等に対する申請・届出等の電子情報処理(以下,「港湾EDI」という。)に必要なシステムの構築を通じて,入出港に係る手続の合理化等を図り,もって物流システム改善効率化及び港湾行政の近代化を通じた産業振興に寄与するもの。供与限度額は13.40億円である。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 カンボジア側の実施機関により,システムの稼働に必要な入出港手続書類が整理され提出される必要がある。また,港湾EDI導入に係るカンボジア政府の方針が変更されない必要がある。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)カンボジアは,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国(一人当たり国民所得1,140ドル)に分類されている。
  • (2)カンボジアの主要国際港は,タイ湾に面したシハヌークビル港と首都プノンペンのメコン河岸にあるプノンペン港の2港である。コンテナ貨物は陸路を除けば両港のみで取り扱われており,両港でカンボジアの主要国境地点を通過する実入りコンテナの約80%を取り扱っている。カンボジアの実質GDP成長率は過去10年間で年平均約7%と高く,堅調な経済成長に支えられ,2017年のコンテナ取扱量は,シハヌークビル港においては前年比17%増,プノンペン港においては前年比15%増と急速に伸長しており,今後も貨物取扱量の増加が見込まれている。一方で,現在,両港における入港手続は,航海中の本船から必要情報をカンボジア海運代理公社が入手した後,同公社が各行政機関の担当官を港湾通関委員会に招集し,委員会での承認を得て,港湾管理者から入港許可が発行されている。これらの手続には膨大な書類を要し,書類作成から港湾通関委員会の承認まで半日~1日を要している。このため,港湾EDIの導入によって手続を電子化することで事務処理の大幅な合理化と手続き時間を短縮するなど,港湾機能の改善が急務となっている。
  • (3)カンボジア政府は,「産業開発政策」(2015~2025)において,2025年までに現状の労働集約型の経済構造を,よりスキル集約型の経済構造に変革することを目標としており,具体的施策の一つとして貿易の更なる円滑化を掲げている。本計画はこの政策を具現化するものとして位置付けられている。
  • (4)我が国は,対カンボジア王国国別開発協力方針(2017年)において,重点分野の一つとして「産業振興支援」を掲げており,本計画を通じてカンボジアにおける港湾の運営効率化を含めたカンボジアの物流能力向上を図ることは同方針に合致する。また,本年10月に開催された日カンボジア首脳会談においても,両国関係及びメコン地域全体の発展に資する日メコン関係の強化について首脳間で認識が一致した他,同国は北朝鮮や南シナ海を始め地域・国際社会における喫緊の課題についても連携していくことで一致している。以上のことから,カンボジアの開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致し,メコン地域の連結性にも資する本計画を実施することは,良好な二国間関係の維持・強化に資する。

2-2 効率性

 我が国は,円借款「シハヌークビル新コンテナターミナルビル整備事業」(2017年承諾)によるシハヌークビル港施設の整備,技術協力「シハヌークビル港コンテナターミナル経営・技術向上プロジェクトフェーズ2」(2018年4月~2021年4月)及び技術協力「物流システム改善プロジェクト」(2018年5月~2020年5月)を通じて,シハヌークビル港を含めたカンボジア全体の物流改善を支援しており,本計画との相乗効果が見込まれる。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)対象港(2港)における入出港手続の電子化率が0%(2017年:実績値)から100%(2024年:事業完成3年後)となる。また,入出港手続の電子化により,港湾通関委員会の開催が不要となるため,同委員会での承認に要する時間が1隻あたり30分(2017年:実績値)から0分(2024年:事業完成3年後)になり,手続が大幅に短縮される。
  • (2)輸出入手続の簡素化,港湾行政の近代化に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)カンボジア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)カンボジア国別評価(2017年度)
  • (4)南部回廊を中心としたメコン地域の連結性の評価(2017年度)
  • (5)メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(2014年度)
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