ODA(政府開発援助)

平成31年2月15日

評価年月日:平成31年2月4日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康

1 案件名

(1)供与国(地域)名

パレスチナ自治区(以下,「パレスチナ」という。)

(2)案件名

廃棄物管理に関する収集及び運搬の改善計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,パレスチナにおいて,14か所の広域行政組合に対して,廃棄物管理に関する収集・運搬機材を供与することにより,廃棄物管理サービスの拡大を図り,もって地域住民の生活環境改善,自然環境保全とともに行政サービスの向上に寄与するもの。供与限度額は17.85億円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の点が前提条件・留意点となる。

  • ア パレスチナ自治政府の廃棄物管理行政に大きな政策上の変更が生じないこと。特に,最終処分場・中間施設の運用及び廃棄物管理に関して広域行政組合制度を活用した収集及び運搬体制が継続されること。
  • イ イスラエルとの関係により生じうる調達時の通関等に関するリスクに留意する必要があること。

2 無償資金協力の必要性

2-1必要性

  • (1)パレスチナ(一人当たり国民総所得3,180ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類される。
  • (2)パレスチナでは,地方自治体が個々に廃棄物収集・処分サービスを提供しているが,行政能力不足や限られた財源の中で各自治体が十分なサービスを提供することは容易ではなく,その結果,オープンダンピング(野ざらし処分場)や野焼きが行われることにより,地域住民の衛生環境や健康への悪影響が懸念されている。
  • (3)パレスチナ自治政府は,「国家アジェンダ2017~2022」の中で,廃棄物管理を「強じんな社会作り」の柱と位置付けるとともに,それを実施する「広範な社会行政サービス」及び「市民へのサービス向上」を重点として掲げ,地方自治体の広域行政組合への組織化を通じて,廃棄物管理等の地方行政のサービス向上に取り組んできている。
  • (4)これまでに我が国が実施してきたJICAによる技術協力等の成果により,広域行政組合制度を通じた廃棄物収集・処分の体制構築が進んできている。一方で,住宅地から中間施設・最終処理場への廃棄物を収集・運搬する機材が不足しているため,廃棄物を適切に運搬できないことが効率的な廃棄物管理体制を構築していくための大きな課題となっている。
  • (5)かかる背景の下,パレスチナ自治政府より我が国に対して,パレスチナ全域をカバーする14か所の広域行政組合を対象とした廃棄物収集・処分機材の供与について要請が行われた。
  • (6)我が国は,対パレスチナ国別開発協力方針(平成29年9月策定)の重点分野の一つとして「財政基盤の強化と行政の質の向上」を掲げ,そのために廃棄物管理等の分野における公共サービスをより自立的,効果的かつ財政面で持続可能なものにするための支援を行うとしている。また,日本は,安倍総理が打ち出した「中庸が最善」という考え方の下,中東・北アフリカ地域への安定化支援として,パレスチナ等の不安定な国・地域における経済開発・社会安定化支援を実施していくことを表明している。
  • (7)本計画は,パレスチナ全域にまたがる14か所の広域行政組合に対する廃棄物管理のための収集・運搬及び処分場の改善に資する機材の整備により,廃棄物管理サービスの拡大を進め,住民にとって身近な行政サービスの一つである廃棄物管理の向上を更に促進し,地域住民の衛生環境や健康状態の向上に貢献するものである。このように,本計画は,廃棄物管理体制の強化を通じた住民の生活環境及び行政サービス機能の改善に資するものであり,もってパレスチナの社会安定化に貢献するものであることから,上記方針と合致するものである。

2-2 効率性

  • (1)パレスチナの「廃棄物国家戦略」に基づき,現地調査結果を踏まえた支援の優先順位を策定し,今回の供与機材を選定している。本計画により,多くの旧式の廃棄物収集車両が更新されることにより,廃棄物収集車両全体の燃費が良くなり,また,機材点検管理を徹底させることで,燃料費及び修理費が大幅に削減される。また,最終処分場で使用する重機の整備により,同重機のレンタル代金(年間約8百万円)が削減される。
  • (2)収集車両の供与台数の算定に際し,各広域行政組合の有する需要を勘案しつつ,個々の広域行政組合の維持管理能力や各広域行政組合による自助努力を考慮し,抑制的な計画としている。また,ガザ地区への機材整備に関し,輸送・通関等のリスクやこれに伴う請負業者の負担を考慮して,需要に比して限定的な数量とした。また,各広域行政組合の収集サービスの拡大を通じた収入増加を見越し,本計画で整備するコンテナ数は必要最低限として自助努力を促している。

2-3有効性

 14か所の広域行政組合による1日当たりの廃棄物収集量が,1,609トン(2016年実績値)から1,952トン(事業完了3年後の2024年)に増えるとともに,パレスチナ住民全体の生活環境改善,自然環境保全,廃棄物管理分野における広域行政組合の行政サービスの向上が見込まれる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • パレスチナ自治政府からの要請書
  • JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • パレスチナ自治区に対する支援の評価(平成24年度外務省ODA評価(第三者評価))
  • パレスチナ自治区に対する「ノンプロジェクト無償資金協力支援」の評価(平成29年度外務省ODA評価(第三者評価))

(注)ヨルダンに対する2013年度「シリア・アラブ共和国から流出した難民等に対する緊急無償資金協力」の評価も参照。

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