ODA(政府開発援助)

平成30年11月8日

評価年月日:平成30年10月18日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件概要

(1)供与国名

フィリピン共和国

(2)案件名

首都圏鉄道三号線改修計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,運行中断等のトラブルが相次ぐマニラの首都圏鉄道三号線(以下「MRT3号線」)を改修することにより,鉄道の安全性及び快適性を向上させ,同線の利用促進を図り,もってマニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和に資するとともに,大気汚染対策や気候変動の緩和に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)車両(営業中及び故障中),鉄道システム(軌道,信号,電気設備等),駅施設(エレベーター等)並びに維持管理用機器の改修等
    • (イ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    381.10億円 年0.1% 40(12)年 日本タイド

    (注)金利は,本邦技術活用条件(STEP)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる鉄道セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,同ガイドラインに掲げるカテゴリBに該当する。
 MRT3号線については,1997年の建設時に,環境天然資源省(DENR)から環境影響評価法(EIA法)の適用が免除されており,本改修計画についても,環境影響評価(EIA)・初期環境調査(IEE)の作成が免除されることを確認済みである。
用地取得及び住民移転
 本計画は,既存鉄道の改修であり,既存鉄道の敷地内で実施されるため,用地取得及び住民移転は発生しない。
外部要因リスク
 特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 マニラ首都圏内の高架鉄道三路線のうちの一つであるMRT3号線(全長約17キロメートル,総駅数13駅)は,市内で最も交通量が多い道路の一つである環状4号線(EDSA通り)上を通る幹線路線である。2000年の開業後12年間は,日本企業により維持管理業務が実施され安定した運行がなされていたが,他国企業が維持管理を担った2012年以降は予算不足等もあり,適切な維持管理業務が実施されず,現在は,線路や車両が劣化し,運行トラブルが頻発する事態となっている。
 フィリピン政府は,フィリピン中期開発計画「2017-2022年」において,マニラにおける大量輸送交通ネットワークの改修と拡大を主要施策の一つとして掲げており,MRT3号線を含むマニラ首都圏の鉄道網強化は,現政権の最優先課題の一つである。
我が国の基本政策との関係
 2018年4月に策定した対フィリピン国別開発協力方針では,(ア)持続的な経済成長のための基盤の強化,(イ)包摂的な成長のための人間の安全保障の確保,(ウ)ミンダナオにおける平和と開発を重点分野としている。本計画は,日本の技術を活用してMRT3号線を改修することにより,鉄道の安全性及び快適性を向上させ,同線の利用促進を図り,もってマニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和や物流改善とともに,大気汚染対策や気候変動の緩和に寄与するものであり,こうした質の高いインフラ整備が同国の持続的な経済成長のための基盤強化に資するものであるため,同方針(ア)に合致する。
 2017年1月,日フィリピン首脳会談において,安倍総理大臣は,今後5年間でフィリピンに対する1兆円規模の官民支援を表明しており,本計画はその着実な実施に寄与するものである。また,「今後5年間の二国間協力に関する日フィリピン共同声明」(2017年10月)において,日本政府は,「フィリピン共和国政府が(中略)積極的に推進している国内のインフラ整備に対する日本の資金及び技術力を最大限に活用した質の高いインフラ支援を通じて,フィリピンの持続可能な経済発展を強力に後押しする。」との方針を示している。本計画はこの方針を具体化するものであり,我が国とフィリピンとの二国間関係の強化に資することが期待される。さらに,本計画は,持続可能な開発目標(SDGs)ゴール9(強靱なインフラ構築)に資する取組である。

(2)効率性

 我が国は,これまでに「LRT1号線増強計画(I)(II)」,「メトロマニラ大都市圏交通混雑緩和計画(I)(II)」「マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張計画」,「南北通勤鉄道計画(マロロスーツツバン)」,「マニラ首都圏地下鉄計画」等の支援を行っており,維持管理機関の体制強化,技術者の能力・認識の強化のため,これら計画で得られた知見等を活かした協力を実施する。

(3)有効性

 本計画の実施により,MRT3号線の安全性が向上されるほか,以下の成果が期待される。

MRT3号線における乗客輸送量が812,882,534人・キロ(2017年実績値)から,1,402,051,018人・キロ(2022年:事業完成2年後)に拡大される。
MRT3号線における年平均一日当たり運行数が,142列車本数/日(2017年実績値)から255列車本数/日(2022年:事業完成2年後)に拡大される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。2010年度フィリピン国別評価(外務省ODA第三者評価)。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース,事業事前評価表を参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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