ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年10月30日
評価年月日:平成30年8月20日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
アフガニスタン・イスラム共和国(以下,「アフガニスタン」という。)
1-2 案件名
バーミヤン県,カブール県及びカピサ県における灌漑設備改善による農村の生計拡大計画(国連食糧農業機関(FAO)連携)
1-3 目的・事業内容
本計画は,アフガニスタンのバーミヤン県,カブール県及びカピサ県(以下,「対象地域」という。)において,灌漑設備の整備・改修及び水・エネルギー省,対象地域農民の能力開発支援により,対象地域の農業生産性の向上及び農家の生計向上を図り,もって同国の持続的・自立的発展に寄与するもの。供与限度額は10.95億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
今後アフガニスタン,特に本計画の対象地域の治安状況が著しく悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)アフガニスタンは依然としてテロとの闘いの最前線であり,治安,経済,社会面において多くの課題を抱えており,同国(一人あたり国民所得は580ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類されている。
- (2)同国は,農村部人口が全人口の約80%を占め,国内全世帯の50%以上が農業に従事するなど,農業を基幹産業としている。しかし,同国は,乾燥した気候で,国土に占める耕作可能地は約15%のみであり,同国の農業生産量の約80%を灌漑に頼っており,同国農業の生産面積・生産性の向上には灌漑設備の整備が不可欠である。特に,同国最大の穀物消費地であるカブール県,及びその近隣県のカピサ,バーミヤン両県における灌漑設備の整備による農業生産性向上の必要性は高い。
- (3)しかし,20年以上に及ぶ内戦による混乱の結果,灌漑設備をはじめとした基本的な農業インフラが損壊したため,現在は,耕作可能地約961万ヘクタールに対し,灌漑面積は約321万ヘクタールのみである。このため,灌漑設備の整備・改修とともに,設計・実施・維持管理を担う技術者の育成が喫緊の課題となっている。
- (4)このような状況を踏まえ,アフガニスタン政府から,対象地域における灌漑面積の拡大及び農業生産性の向上に必要となる活動への支援について,我が国に要請があった。本計画は,対象地域における灌漑施設の整備・改修及び水・エネルギー省,対象地域農民の能力開発支援により,同地域の農業生産性の向上及び農民の生計向上を図り,もってアフガニスタンの持続的・自立的発展に寄与するものであり,実施の必要性は高い。
- (5)我が国は同国の国別援助方針において,「持続的・自立的発展のための支援」を重点分野に定めており,本計画は我が国の援助方針に合致する。
- (6)2012年7月,我が国及びアフガニスタン政府の共催で開催された「アフガニスタンに関する東京会合」において,我が国を含む国際社会全体として,同国の自立に向けた支援を行うことを確認し,その一環として,開発分野においては,同国の経済戦略を踏まえ,「農業」,「インフラ整備」及び「人づくり」の3つの柱を重視することを表明した。本計画は,その柱の一つである農業を支援するものである。
2-2 効率性
本計画は,灌漑による水資源の安定供給に加えて,限られた水資源を活用し農業生産性の向上を図るものであるが,FAOは,農業や牧畜等,一次産業にかかる支援をマンデートとする国際機関であり,この分野において十分な実績と知見を有している。
治安リスクが高く,開発支援が困難なアフガニスタンでの効果的な支援を行うためには,政府各機関,地方政府,現地コミュニティ等とのネットワークを持ち,これら治安の不安定な地域で十分な活動実績を有するFAOと連携して本計画を実施することが効率的である。
2-3 有効性
- (1)灌漑設備の整備・改修により,対象地域において約7,000ヘクタールの土地の灌漑農業が可能となり,16,000世帯の農業用水へのアクセスが改善され,農業生産性が向上する。
- (2)水・エネルギー省職員や対象地域の農民に対する灌漑設備の維持管理能力等の向上支援により,中央省庁での流域管理も含めた総合的な水資源管理能力の向上に資する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- アフガニスタン政府からの要請書
- FAOからの要請書