ODA(政府開発援助)

平成30年10月30日

評価年月日:平成30年10月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

チェンナイ周辺環状道路建設計画(フェーズ1)

(3)目的・事業内容

 インド南部タミル・ナド州チェンナイ都市圏において,周辺環状道路(約133キロメートル)のうち,市北部のエンノール港へのアクセス道路となる区間(本線と支線にて構成)を建設することにより,急増する道路交通需要への対応を図り,もって同都市圏の経済発展に資することを通じて,連結性の強化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)道路建設工事
    • (イ)ITS(料金収受システム(ETC等)及び交通管制システム)の導入
    • (ウ)コンサルティング・サービス(詳細設計レビュー,基本設計,入札支援,施工監理等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    400.74億円 1.45% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる道路セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに該当する。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は,実施機関であるタミル・ナド州高速道路・港湾局により作成され,タミル・ナド州環境影響評価局から承認されている。
用地取得及び住民移転
 本計画では,250.8ヘクタールの用地取得,60世帯の住民移転を伴うため,同国国内法及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に沿って用地取得・住民移転が進められる予定。住民協議では,支線(旧線形の延長4.35キロメートル)の線形変更の要望が確認されたため,実施機関は代替線形を検討し,社会影響を最小化した線形にて再度住民協議を実施した。線形変更後の住民協議では,事業実施への反対は確認されていない。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進む一方で,交通インフラ整備が十分進んでいないことから,大都市圏では交通渋滞が深刻な問題となっており,経済開発の障害となっている。道路が旅客輸送の85.2%,貨物輸送の62.9%を担うインドでは,3年行動アジェンダ(2017年4月~2020年3月)において,経済成長の実現に必要なものとして運輸交通を第一に挙げ,道路等の運輸インフラ整備を推進している。
 本計画の対象地域であるインド南部タミル・ナド州のチェンナイ都市圏は人口増加が著しく,交通量も増加の一途を辿り,慢性的な交通渋滞が一層深刻化している。同州政府は高水準の経済成長を目指す中,物流促進のための道路インフラの整備を重視しているところ,一層の交通需要の増加に対応するため,チェンナイ周辺環状道路を計画しており,同道路は日印両国が推進するチェンナイ・ベンガルール間産業回廊構想における優先事業にも位置づけられている。また,チェンナイ市中心部にあるチェンナイ港の処理能力不足が問題となる中,整備・活用が進められているチェンナイ市北部のエンノール港へのアクセス改善が喫緊の課題とされていることから,同州政府は,チェンナイ周辺環状道路の建設計画のうち,同港へのアクセス道路となる区間の新設を特に重視している。以上から,インドの開発政策とも高い整合性を有している。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 本計画は,インド南部タミル・ナド州チェンナイ都市圏において,周辺環状道路(約133キロメートル)のうち,市北部のエンノール港へのアクセス道路となる区間(本線と支線にて構成)を建設することにより,急増する道路交通需要への対応を図り,もって同都市圏の経済発展に資することを通じて,連結性の強化に寄与することから上記(ア)に合致する。
 また,2017年9月の安倍総理大臣のインド訪問時には「両国のパートナーシップを新たな次元に引き上げるべく協力することを決定」するとともに,日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの「アクト・イースト政策」の連携に向けた取組の強化を誓うなど両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進めるインドの取組を支援することは,こうした日印二国間関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 計画・実施段階においてより積極的に住民,関係者の意見を取り入れることがスムーズな用地取得につながることから,住民移転計画に基づく適切な補償が行われるよう事業実施体制内に用地取得担当者を配置し,スムーズな用地取得・住民移転を実施すると共に,実施機関が十分なフォローを行い,その後の工事を円滑に実施する予定である。

(3)有効性

 運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2025年)の見込み)として,対象区間の本線(約31.4キロメートル)の所要時間は約50分(2018年実績値)から約22分に短縮,対象区間の支線(約23.7キロメートル)の所要時間は約36分(2018年実績値)から約22分に短縮等が設定されている。
 また,定性的効果として,対象区間の移動快適性の向上及びチェンナイ都市圏の地域経済発展の促進に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(2017年度)国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る