ODA(政府開発援助)

平成30年10月25日

評価年月日:平成30年7月4日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀

1 案件名

1-1 供与国名

ネパール連邦民主共和国(以下「ネパール」という。)

1-2 案件名

シンズリ道路震災復旧計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,2015年のネパール地震で被害を受けたシンズリ道路の復旧工事を実施することにより,道路利用者の通行の安全と円滑化を図り,もってネパールのハード及びソフト両面にわたる震災復興及び災害に強い国づくりに寄与するもの。供与額は10.47億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)汚染対策:工事中は,大気質,水質,騒音等について,散水,工事労働者用トイレの設置,重機・工事用車両の定期的な維持管理等の対策により負の影響を緩和する予定。工事中に発生が想定される廃棄物は一般的な固形廃棄物であり,同廃棄物は,ネパールの法制度に沿って廃棄処分する。建設残土は,植生工に利用し,残りは埋戻しを行う。本計画では,工事中は施工業者が,大気質,水質,騒音,廃棄物等について,供用後は公共事業運輸省道路局(DOR)が大気質,騒音等について,モニタリングを行う予定。
  • (2)自然環境面:計画対象地域は,国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ネパール(一人あたり国民総所得730ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は,インドと中国の間に位置しており,同国における民主主義の定着,安定と平和は,我が国にとって,政治的・経済的に重要な南アジア地域全体の安定を確保する上で重要である。かかる観点から我が国は,1969年度の有償資金協力以来,主要ドナーとして,継続的に同国を支援している。
  • (3)2015年4月の地震により,ネパールにおいて,約9,000名の死者等が出るなどの甚大な被害が発生した際に,岸田外務大臣(当時)よりパンディ・ネパール外務大臣(当時)に対し,我が国として,緊急人道支援から復旧・復興に至るまで切れ目のない支援を可能な限り行う考えを表明した。また,我が国は復興支援会合を主導し,同国が震災からの復興と新憲法制定という2つの国づくりに同時に取り組んでいることを我が国として後押しすること,及び東日本大震災の経験や第3回国連防災会議の成果である「より良い復興(Build Back Better)」の概念を活用し,ネパールをより強靱な国にするための支援を積極的に行っていくことを表明した。
  • (4)シンズリ道路は,カトマンズ盆地とネパール南部のタライ平野を結ぶ約160キロメートルの道路であり,我が国の無償資金協力により,2015年3月に完工した。インドと国境を接するタライ平野は,インドとの交通及び物流の窓口となっていることから,同道路は,ネパールの社会経済発展に重要な役割を担っているが,2015年の地震の影響により,一部において現状のままでは崩落する可能性が指摘されており,仮に一部崩落した場合,人命被害や車両通行の遮断のみならず,本事業費を大きく上回る復旧費用の発生が見込まれる。
  • (5)ネパール政府は,大地震後,「地震災害後復旧計画(2016~2020)(Post Disaster Recovery Framework)」を発表した。同計画では,セクター別優先課題として,シンズリ道路の緊急復旧を優先復旧事業の一つに位置付けており,本計画は,その趣旨に合致するものであり,その必要性は高い。
  • (6)2015年の地震で損傷したシンズリ道路の復旧を目的とする本件計画は,「より良い復興」の概念に基づくものであり,ネパールの陸上交通の主要路線である同道路の復旧により同国の社会経済発展に貢献することで,良好な二国間関係の一層の発展に寄与することも期待される。

2-2 効率性

  • (1)協力準備調査では,25箇所の復旧が必要という結論に至ったが,うち20箇所については,本計画の実施箇所の検討に当たりコスト削減の観点から技術的検討を行った結果,先方政府の技術水準で復旧可能と判断されたことから,支援対象箇所を5箇所に絞り込み支援の効率化を図っている。
  • (2)技術協力プロジェクトにより,同道路の運営・維持管理体制構築支援に関する「シンズリ道路維持管理能力強化プロジェクト」を実施してきており,本計画との相乗効果による支援の効率化も図っている。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)事業完成から3年後となる2023年には,シンズリ道路を利用すると見込まれる最大約800万人の旅客数及び約60万トンの貨物量の安全が確保されること。
  • (2)社会経済の発展,災害に対する強靭性の向上,道路利用者の安全性の向上及び道路通行阻害損失の低減。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ネパール政府からの要請書
  • (2)ネパール国別評価報告書
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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