ODA(政府開発援助)

平成30年10月24日

評価年月日:平成30年10月24日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件概要

(1)供与国名

インドネシア共和国

(2)案件名

ジャカルタ都市高速鉄道計画(フェーズ2)(第一期)

(3)目的・事業内容

 交通混雑が深刻なジャカルタ首都特別州に都市高速鉄道システムを整備することにより,増加するジャカルタ首都圏の輸送需要への対応と自動車交通から公共輸送へのモーダルシフトを図り,もって,同首都圏の交通混雑の緩和,投資環境の改善,環境負荷の軽減に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事
    • 建設工事
    • 車両調達
    • 電気・機械システム調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    700.21億円 1.0%(STEP) 40(12)年 日本タイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA):本計画は,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月制定)に掲げる鉄道セクター,影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに分類される。本事業の環境影響評価(EIA)報告書は2011年1月にジャカルタ特別州の環境管理局により承認済み。
用地取得及び住民移転:本計画の延伸部分では,約3.8ヘクタールの用地取得,96世帯(590名)の住民移転及び59世帯の経済的移転を伴う他,車両基地等の建設では約5.5ヘクタールのインドネシア国鉄用地上に居住する832世帯(1,614名)の非正規住民の非自発的住民移転が発生することが想定される。そのため,インドネシア国内手続及びJBICガイドラインに沿って作成された用地取得・住民移転計画(LARAP)に基づいてインドネシア政府により,用地取得・店舗等移転・非正規住民の移転手続等が実施される予定。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ジャカルタ首都圏の人口は毎年2.7%のペースで増加し続けており,特にジャカルタ首都特別州に隣接する県における人口増加は顕著であり,同地域からのジャカルタ中心部への通勤者は,増加し続けている(2010年の約110.5万人から2014年には2.2倍の約242.9万人に増加。)。
 加えて,ジャカルタ首都圏においては,旅客・貨物輸送の約91%を道路交通に依存する中,堅調な経済成長を背景とした車両数が増加している(ジャカルタ首都特別州の車両登録数は,2010年の約1,199万台から,2016年には1.5倍の約1,800万台まで増加。)。
 これらによって,深刻な交通混雑が引き起こされており,同国の投資環境の悪化や排気ガスによる大気汚染へと繋がっているなど,旅客輸送力の増強及び交通混雑の緩和が大きな課題となっている。
 このような状況の中,ジョコ政権は,中期国家開発計画(2015~2019)において,都市部における大量公共交通機関の整備を重点目標としているとともに,運輸省の5か年計画「STRATEGIC PLAN(2015~2019)」(2015年12月)でもジャカルタ首都圏における大量公共交通機関の計画を掲げており,国家レベルで優先度が高い重点課題に位置づけられている。
我が国の基本政策との関係
 2017年9月に発表した対インドネシア国別援助方針では,(ア)国際競争力向上に向けた支援,(イ)均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に向けた支援,(ウ)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援を重点分野としている。本計画は,都市高速鉄道の整備を通じてジャカルタ首都圏の旅客輸送の強化を支援することにより,ジャカルタ首都圏の投資環境を改善し,国際競争力の向上に寄与するものであり,同方針に合致する。
 我が国とインドネシアは,政治・外交・経済及び地理的関係において極めて重要な関係にあり,同国は我が国にとって重要な戦略的パートナーである。2017年1月の日インドネシア首脳会談では,経済インフラ整備を通じたビジネス環境改善に係る協力を強化する方針を両首脳が確認しており,本計画はこの方針を具体化するものである。
 さらに,本案件は,都市高速鉄道システムを建設することにより,首都圏の渋滞混雑の緩和を図るものであり,SDGsのゴール9(インフラ,産業化,イノベーション)及びゴール11(持続可能な都市)に貢献すると考えられる。

(2)効率性

 2008年以降,JICA専門家として「ジャカルタMRT事業アドバイサー」をMRT運営会社(MRTJ:PT MASS RAPID TRANSIT JAKARTA)の監督機関であるジャカルタ首都特別州に派遣中であるほか,MRT事業の円滑な計画・実施・運営維持管理能力のキャパシティビルディングを目的としたJICA技術協力「ジャカルタMRT運営維持管理プロジェクト」を実施しており,当該分野での相乗効果が見込まれる。

(3)有効性

 本計画の実施により,ジャカルタ都市高速鉄道につき以下のような成果が期待される。

旅客輸送量が2,723,748人・キロメートル/日(2027年:事業完成2年後)となる。
車両運行数が236本/日となる(2027年:事業完成2年後)。

 また,ジャカルタ首都圏の旅客輸送能力を含む投資環境改善,経済発展の促進,インドネシアの持続的経済成長への寄与が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インドネシア国別評価報告書(2007年度),JICA環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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