ODA(政府開発援助)

平成30年10月10日

評価年月日:平30年9月6日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康

1 案件名

1-1 供与国名

シリア・アラブ共和国(以下,「シリア」という。)

1-2 案件名

シリアにおける包括的保健分野強化計画(WHO連携)

1-3 目的・事業内容

 本計画は,シリアのイドリブを除く全県において,医療機材等の供与,一次医療保健施設の改修及び保健分野を対象とした能力強化活動等を実施することにより,国内避難民を含むシリア国民への安定的な医療サービス供給を図り,もって同国内での人道危機の改善に寄与するものである。供与限度額は11.48億円である。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の点が確保される必要がある。

  • (1)円滑な計画実施のため,今後シリアの治安状況が著しく悪化しないこと。
  • (2)本計画の実施に際し,シリア政府機関及び現地コミュニティー等の積極的な関与を促すとともに,本計画完了後もWHO側で適切な維持管理がなされること。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)シリアは,2011年3月以降の政府と反政府勢力との間の暴力的衝突以降,人道状況の悪化が続いており,2018年4月現在,これまでの死者はシリア全土で50万人以上,国内避難民は610万人以上,周辺国へ流入した難民は550万人以上といわれており,人道上の危機的状態が続いている。なお,シリアは,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されているが,2016年は一人当たり国民所得が算出できていない。
  • (2)我が国は,シリア危機を踏まえた当面のシリア支援方針として,困窮する全てのシリア人に対し,緊急・人道的性格の支援を実施することとし,主に国際機関を通じた食糧支援や緊急救命活動等の緊急人道支援に加え,保健・水・衛生分野,教育や職業訓練等の分野での人道支援を実施している。
  • (3)紛争が8年目に入り,保健分野については病院や保健センターなど医療施設の半数以上が閉鎖されている,又は,一部が機能しているのみという状況である。かろうじて開いている保健医療施設でも,物資やスタッフ不足,機材の故障,停電の頻発,恒常的な治安の悪さといった困難を抱えている。また,空爆,地雷,砲撃などにより,多くの命に関わる重症患者が発生している。こうした状況を踏まえ,シリアの保健分野に対する支援は,国際社会の喫緊の課題となっており,2018年3月,WHOからドナーに対し,総額142百万ドルの新規支援要請がなされており,本計画は同要請に応えるものである。
  • (4)また,国連の「シリア人道対応計画(HRP)2018」では,目標1「生命を守る:被包囲地域・到達困難地域を含む支援の必要性が喫緊の課題である地域にいる最貧困層への救命人道支援の提供」を掲げており,本計画はこれに資するものである。
  • (5)本計画は,国内避難民を含むシリア国民に対する緊急人道的支援として位置付けられ,我が国の当面のシリア支援方針に合致するほか,我が国が推進する人間の安全保障の確保の観点からも実施の必要性は高い。本計画の実施は,国際社会全体としての主要課題に応えるものであり,我が国のシリア支援のコミットメントを国際社会に示す上で重要なものである。

2-2 効率性

 WHOはシリア危機発生以降も常に同国でのプレゼンスを維持しており,本件以外にも直近では,WHO経由で我が国の緊急無償資金協力案件や国際機関拠出金を通じた支援を含む3案件を実施しており,十分な支援実績及び社会経済事情,現地情勢等における知見を有することから,WHOと連携することが効率的である。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)シリアのイドリブを除く全県において,医療機材等の供与,一次医療保健施設の改修及び保健分野を対象とした能力強化活動等を実施することにより,42万人(女性約25万人,男性約17万人)を超える裨益者が安定的な保健医療サービスの支援を受けることができるようになり,国内避難民を含むシリア国民の保健状況が向上する。
  • (2)本案件では,保健サービスが届かない地域へアクセスできる現地シリア人NGOを実施パートナーに含めており,WHOとNGOが連携して医療協力体制を構築・強化することにより,各地コミュニティーを通じた地元住民のための医療サービス向上を効果的に実施する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)WHOからのプロジェクト・プロポーザル
  • (2)国連人道支援対応計画(HRP)
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