ODA(政府開発援助)

平成30年10月9日

評価年月日:平成30年9月6日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

ベトナム社会主義共和国(以下,「ベトナム」という。)

1-2 案件名

農業・水産食品の安全確保のための検査・農業食品品質コンサルティングセンター能力強化計画(以下,「本計画」という。)

1-3 目的・事業内容

 本計画は,ベトナムの検査・農産食品品質コンサルティング(RETAQ)センター(建設中)において,検査体制構築に必要な機材及びこれら機材を有効に活用するための設備を整備することにより,食品検査体制の拡充及び検査能力向上を通じたベトナム産農水産食品の安全性の確保及び品質管理の効率改善を図り,もって同国の農水産品の安全性確保及び輸出拡大による貧困削減・格差是正に寄与するものである。供与限度額は12.04億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 ベトナム側により,RETAQセンターの施設が本計画による支援対象施設の内装工事が開始されるまでに建設されること(2018年7月時点で施設建設工事にかかる契約が締結され着工済である。),また,RETAQセンターへの人員配置と開所前の技術研修が実施されることが必要である。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ベトナムは,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低・中所得国(一人当たり国民所得2,050ドル)に分類されている。
  • (2)ベトナムにおいては,農水産業及びその加工業が主要産業の一つであるが,農産物から基準を超える残留農薬や,水産物からも生産過程で使用された抗生物資や合成抗菌剤などが高い確率で検出されている。このため,国内に流通する食品の安全の確保とともに農水産物の輸出拡大の観点からも,農水産食品の安全性確保のための検査能力強化が喫緊の課題となっており,同国政府は,「第10次社会経済開発5か年計画(2016~2020)」において,食品とその原料にかかる安全性の確保及び品質管理の効率改善を重要課題の一つとしている。
  • (3)ベトナムは,2007年にWTOに加盟したことにより,WTO/SPS協定(衛生植物検疫措置協定)が適用され,農水産品の輸出入において国際標準に則った食品検査の確保等を求められることとなった。このため,同国政府は,農業農村開発省傘下の食品検査や研修を行う機関の設立を計画し,同機関の設立に関する支援を我が国に要請した。そして,2008年12月発効の日越経済連携協定(EPA協定)において,上記機関(当時は「SPSセンター」との名称を使用)の設立及び同国の食品衛生管理に係る能力向上を我が国が支援することが明記された。このような経緯から,我が国は本計画によってRETAQセンター(2012年から本名称)の設立を支援するものである。
  • (4)本計画は,安全な農水産物の供給を目的としており,我が国の対ベトナム社会主義共和国国別開発協力方針における重点分野の一つである「脆弱性への対応」における開発課題「社会・生活面の向上と貧困削減・格差是正」のうち,「農業・地方開発プログラム」に位置付けられている。
  • (5)また,本計画は,食品検査体制の拡充及び能力向上を支援することにより,ベトナム産農水産物の安全性確保等に資するものであり,持続可能な開発目標(SDGs)ゴール2(飢餓をゼロに)及びゴール3(すべての人に健康と福祉を)に貢献すると考えられる。
  • (6)ベトナムは,メコン地域の発展の牽引役として,我が国にとっても重要な経済活動のパートナーであることから,本計画は両国関係の更なる強化の観点からも重要である。

2-2 効率性

 本計画にて供与予定の機材については,ベトナム側の技術レベルに応じた規模及び仕様で選定する等,事業内容の適正化を図ることにより,本計画による支援効果の持続可能性を確保した。

2-3 有効性

  • (1)定量的効果
    本計画の実施により,新たに建設されるRETAQセンターにおいて,以下のような成果が期待される(2018年(実績値/年平均)から2023年(目標値/事業完成3年後))。
    • ア 食品検査能力試験:0件→600件
    • イ レファレンス試験:0件→200件
    • ウ リスク分析:0件→150件
    • エ モニタリング検査
      残留成分検査:0件→500件
      二枚貝検査:0件→750件
      ポストハーベスト検査:0件→500件
    • オ 輸出入食品検査(理化学検査,微生物検査):0件→5,000件
  • (2)定性的効果
    RETAQセンターの検査能力が向上することにより,ベトナム国内で流通する食品の信頼性が向上する。また,ベトナム産農水産食品の安全性の確保及び品質管理の効率の改善が図られることにより同国の農水産品の輸出が拡大する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ベトナム政府からの要請書
  • (2)「食品安全確保のためのRETAQセンター検査能力強化計画」協力準備調査報告書
    (JICAを通じて入手可能)
  • (3)ベトナム国別評価(2015年度外務省ODA評価)
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