ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年9月4日
評価年月日:平成30年8月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一
1 案件概要
(1)供与国名
ジョージア
(2)案件名
「東西ハイウェイ整備計画(フェーズ2)」
(3)目的・事業内容
本計画は,ジョージアの国際幹線道路である東西ハイウェイの未改修区間(アウグヴェタ~ショラパニ間)における既存道路改修及びトンネル・橋梁の建設等を通じて,同国及びコーカサス地域の輸送力増強を図り,もって同国及びコーカサス地域の経済発展に寄与するものである。
- ア 主要事業内容
- (ア)道路工事(新設4車線道路整備(トンネル(6箇所12本)・橋梁(7箇所14橋梁)の建設を含む),及び既存道路拡幅,計14.7キロメートル
- (イ)道路防災・落石対策
- (ウ)コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 387.35億円 0.1% 40(12)年 STEP(タイド) (注)金利は,本邦技術活用条件(STEP)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる道路セクターのカテゴリAに該当する。環境影響評価(EIA)報告書はジョージア国内法上作成が義務付けられており,2018年3月に環境保護・農業省より承認取り付け済。 - イ
- 社会環境面
本計画は約53.0ヘクタールの用地取得,21世帯112人の非自発的住民移転を伴い,同国国内手続き及び環境ガイドラインに沿って作成された用地取得・住民移転計画(Land Acquisition and Resettlement Plan: LARP)に沿って取得が進められる。ステークホルダー協議で,被影響住民から事業に係る特段の反対意見は確認されていない。 - ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ジョージアの運輸システムは,隣接国と接続する道路と鉄道による陸上輸送に加え,黒海沿岸のポチ港やバトゥミ港を中心とする海上輸送及び空路から構成される。陸上輸送のうち約22,000キロメートルの道路網が運輸システムの中核を成しており,国際貨物輸送量の3割以上,旅客輸送の9割以上を道路輸送に依存している。同国は,欧州と中央アジアを最短距離で結ぶルート上に位置し,カスピ海産の石油・ガスのパイプラインの経由地として,またコーカサス地域における物流の中継基地として重要性を高めている。
本件の対象である東西ハイウェイは,アゼルバイジャン共和国国境から黒海沿岸を結ぶ約460キロメートルの国際幹線道路であり,ヨーロッパとアジアを結ぶ重要な国際交通網の一部を構成している。2007年以降の東西ハイウェイの交通量は,年平均約8.5%の伸びを見せており,今後も着実に拡大していく見込みであり,同国内のみならずコーカサス地域全体にとっても非常に大きな重要性を持っている。
今次要請されている本計画は,東西ハイウェイのうちアウグヴェタ~ショラパニ区間を対象としているが,同区間を含むアウグヴェタ~チュマテレッティ間は東西ハイウェイで未改修区間の一つとして,物流のボトルネックとなっている。また同区間は山間部の狭隘な地形に位置しており,物流の効率化に向けてトンネルや橋梁の建設が必要であることに加え,斜面災害による寸断のリスクが高く,落石や地すべり対策等の適切な道路安全対策を施すことが安全性の向上のためにも必要不可欠である。
同国の開発計画「ジョージア2020」では,国内・国際物流輸送の効率化,道路輸送網の安全性と物流中継基地としての利便性の向上,地域経済振興を目的とした道路整備を重視しており,東西ハイウェイ整備を最優先事業の一つと位置付けていることからも,同国の開発政策とも高い整合性を有しており,本計画の必要性は高い。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の対ジョージア国別開発協力方針(2014年4月)では,「経済インフラ整備」を重点分野とし,「運輸プログラム」の下で地方部において劣化が進む道路インフラの整備を行うこととしており,本計画は右重点分野にも合致する。
(2)効率性
先行案件である「東西ハイウェイ整備計画」,「東西ハイウェイ整備計画(第二期)」にて,本計画の対象区間に隣接するゼスタフォニ~クタイシ~サムトレディア間を整備中であり,本計画を実施することで,更なる整備効果の向上が図られる。
(3)有効性
本計画の実施により,2023年(事業完成2年後)には,この区間の交通の安全性と快適性が向上し,一日当たりの平均交通量が現在の約1万4千台から1万8千台以上に増加,また,平均所要時間が現在の約20分から11分になり,ジョージア及びコーカサス地域の経済発展に寄与することが期待される。
さらに,ジョージアの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
ジョージア政府の要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,コーカサス諸国への支援の評価(2015年度外務省ODA評価),その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。