ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年8月23日
評価年月日:平成30年5月16日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀
1 案件名
1-1 供与国名
ボリビア多民族国(以下,「ボリビア」という。)
1-2 案件名
オキナワ道路整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,サンタクルス県オキナワ市において,オキナワ第一~第二移住地間の道路の舗装,橋梁架け替え及び排水施設の整備等により,円滑で安全な通行の確保及び市街地までのアクセスの改善を通じ,サンタクルス県の経済の発展を図り,もって地方開発等に寄与するもの。供与限度額は42.49億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
考慮すべき留意点としては,以下の事項が挙げられる。
- (1)ボリビア政府により,本計画により整備された道路が適切かつ継続的に維持管理されること。
- (2)サンタクルス県(一部サンタクルス市)が整備するサンタクルス市~オキナワ第三移住地間の道路及びボリビア道路管理局・韓国が整備するオキナワ第一移住地~トロンコス間の道路は,オキナワ道路と共に地域の基幹道路としてネットワークを構成するものであることから,右道路が整備されることが望ましい。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ボリビア(一人あたり国民所得3,070ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されている。
- (2)内陸国で交通手段の限られるボリビアにおいて,道路は輸出入貨物の約7割を担う輸送手段として重要な役割を担っている。しかしながら,起伏に富んだ地形や厳しい自然条件により,同国の道路舗装率は8.5%に留まっており,中南米地域内平均23.3%を大きく下回っている。特に県道は2.4%の舗装率に留まっており,同国の地域発展・統合や物流の妨げとなっている。我が国は,同国に対する国別援助方針において,「地方開発等を通じた生産力向上」を重点分野として定め,その中でも「農産品の流通強化・生産基盤の整備」を重要課題としている。
- (3)このような状況に対し,ボリビア国家開発計画では,運輸部門は「生産力のあるボリビア」の実現に向けた重点分野と位置づけられ,道路交通の重要課題として,ア 全ての県庁所在地までの道路の舗装,イ 国境へのアクセス道路の舗装,ウ 全国国道道路網の構築が挙げられている。また,サンタクルス県は,短期的に県道の舗装道路を200キロメートルまで整備・延長する方針を定めている。
- (4)今回の協力対象であるオキナワ道路(県道)は,移住地間及び移住地と都市部をつなぎ,日系人を含む移住地住民の生活を支えるものである。また,同道路は農業生産主要地域(同移住地を含むサンタクルス県の農業生産高は全国の約50%を占める)とボリビアの主要経済都市圏の中心地であるサンタクルス市を結ぶ幹線道路のバイパスとして機能するほか,南米域内(ブラジル,ペルー,チリ,アルゼンチン)と同国を結びつける国際道路ネットワークの一部を形成することになり,もって物流の改善及び地方を含む国内経済の発展に寄与することが期待される。
- (5)ボリビアは日系人が多く伝統的な友好国であり,亜鉛,鉛,リチウム等の天然資源を豊富に有することから,資源外交の観点からも重要な国である。本計画を通じ,同国政府の国家開発計画にある「生産力のあるボリビア」に寄与し,同国の開発ニーズに応えることは同国との二国間関係の強化に資すると期待される。
2-2 効率性
- (1)整備対象範囲の検討にあたっては,当初のオキナワ第一移住地~第三移住地全域の整備要請に対して,事業規模の観点から対象区間を絞ることとし,農畜産物の物流確保,洪水時の通行障害の解消,住民の交通安全の確保等の開発効果の観点に重点を置き,最も効果的かつ効率的な区間を選定した。
- (2)道路のルート検討にあたっては,事業費,技術的観点,輸送能力向上,地域開発効果,自然・社会環境を総合的に勘案の上,最も効率的なルートを選定した。
- (3)道路の舗装設計については,耐久性及び経済性の観点から路床の置換え厚,舗装種の組み合わせを比較検討し,最も経済的となる舗装構造及び舗装種を選定した。
2-3 有効性
- (1)本件の実施により,2016年実績との比較上,事業完成3年後の2024年には以下の成果が期待される。
- ア 悪天候によりオキナワ道路が通行困難となる年間日数が14日間から0日間に低減される。
- イ オキナワ道路の交通量が553台/日から3,740台/日に増加する。
- ウ 輸送旅客量が31万人/年から210万人/年に,輸送貨物量が34万トン/年から229万トン/年に増加する。
- (2)オキナワ移住地と周辺地域間の物流の円滑化が図られることにより,移住地を含むサンタクルス県の経済の発展に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ボリビア政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)ボリビア国別評価(2010年度)