ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年8月17日
評価年月日:平成30年5月18日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
1-1 供与国名
コンゴ民主共和国(以下,「コンゴ(民)」という。)
1-2 案件名
キンシャサ市道路維持管理機材整備計画(以下,「本計画」という。)
1-3 目的・事業内容
本計画は,コンゴ(民)の道路・排水公社及び道路公社に対し道路維持管理機材の整備を支援することにより,キンシャサ市内の都市道路の維持体制の改善を図り,もってコンゴ(民)の交通網の利便性向上を通じた社会サービスへのアクセス改善及び経済開発に寄与するものである。供与限度額は10.62億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
特になし。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)コンゴ(民)(一人あたり国民所得420ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類されており,長年の政情不安もあり,政府の機能不全,経済活動の停滞,失業等の社会問題,基幹インフラの未整備等,深刻な課題を複数抱えている。
- (2)同国は,上記の事情もあり基幹インフラの整備が進んでおらず,道路舗装率は国全体平均で総延長の2%に過ぎず,首都キンシャサの舗装率も26%と低い水準に留まっている。また,同国の都市部は紛争の影響を受けた国内避難民の大量流入等により,無秩序な市街地化と居住地区の拡大等を伴う人口の急増問題に直面し,これら新規住民を含め市民の移動円滑化を確保するための道路整備が喫緊の課題となっている。これに対し,主に都市内の道路補修を担う道路・排水公社(以下,「OVD」という。)及び主に都市間を結ぶ幹線道路網の道路補修を担う道路公社(以下,「OR」という。)は,慢性的な資機材不足等により,補修を含む維持管理に対して十分な機能を果たせない状況(業務執行率は年間計画の50%未満)が続いている。このため,国の基幹インフラの一つである道路の老朽化や損傷が深刻化し,一部の舗装道路への交通集中による渋滞等に伴う移動時間・コストの増大を招き,経済発展の重大な支障になっているほか,病院等の社会サービスへのアクセス悪化等,市民生活への影響も大きくなっている。また,補修の遅れは最終的に大規模な改修が不可避となり,経済面での損失も大きい。
- (3)かかる状況の下,先般,コンゴ(民)政府から我が国に対し,OVD及びORに対する維持管理機材の整備を通じ,キンシャサ市内の劣悪な道路状況の改善を図るため支援の要請があった。
- (4)コンゴ(民)は世界有数の鉱物資源産出国であり,輸出の約9割を鉱物資源が占めている(コバルト38%,銅35%,原油11%,ダイヤモンド10%)他,広大な森林と豊かな水資源を有し,林業・エネルギー産業への潜在力も高い。さらに,同国は大湖地域の主要国であり,地理的にサブサハラの中央に位置する同国の安定は,アフリカ全体の安定に関わることから,同国に対する支援は,我が国の資源外交及び対アフリカ外交に資するものである。
- (5)さらに,本計画は,我が国がTICAD VIにおいて表明した「都市開発(都市交通の整備等)等の分野等において,アフリカ開発銀行との共同イニシアティブ(EPSA)も活用しつつ,約100億ドル(約1兆円)の質の高いインフラ投資を実施する」という目標にも合致し,持続可能な開発目標(SDGs)ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくることを目指す」及び同ゴール11「住み続けられるまちづくりを目指す」にも貢献するものであり,実施の外交的意義は大きい。
2-2 効率性
- (1)整備予定機材の中で,OVD及びORのオペレーターが新規に扱う機材については,コンゴ(民)側の技術レベルに応じた規模及び仕様で選定する等,事業内容の適正化を図り,支援の持続可能性を確保した。
- (2)また,過去の類似案件とも比較し,1級道路(4車線以上(平均6車線)舗装道路)及び2級道路(2車線舗装道路)を対象として,10年周期での舗装補修を想定し,整備機材を絞り込む等,事業規模の適正化を図った。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)事業完成後3年で,OVD及びORにより舗装補修される道路(距離)が,約74%増加(253.5キロメートルから441.0キロメートル)する。
- (2)事業完成後3年で,キンシャサ市内の基準道路の通行量(台数),旅客数(人)及び貨物量(トン)がそれぞれ約27%増加する。
- (3)キンシャサ市内で,近年の交通量の増加により老朽化や損傷が深刻となっている道路インフラの利便性が向上する。
- (4)キンシャサ市内の一部の舗装道路への交通集中に伴う渋滞発生等が緩和され,病院等の社会サービスへのアクセスが改善される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)コンゴ(民)政府からの要請書
- (2)「キンシャサ市道路維持管理機材整備計画」協力準備調査報告書
(JICAを通じて入手可能)