ODA(政府開発援助)

平成30年6月15日

評価年月日:平成30年3月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

ミャンマー連邦共和国(以下,「ミャンマー」という。)

1-2 案件名

金融市場インフラ整備計画(以下,「本計画」という。)

1-3 目的・事業内容

 本計画は,ミャンマー中央銀行の資金・証券決済システムの機能を拡充し,金融取引の増加・多様化への対応や国際規格への適合を図ることにより,ミャンマーの金融セクターの近代化を促進し,もって同国の持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等に寄与することを目的とする。供与限度額は,55.49億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がミャンマー政府,ミャンマー中央銀行等により実施される必要がある。

  • (1)金融セクター近代化にかかるミャンマー政府の方針が変更されない。
  • (2)市中銀行によって自行内勘定系システムが整備される。
  • (3)システム維持管理・更新に必要な予算確保がなされる。
  • (4)システムの運営維持管理に必要な人材が配置される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ミャンマーでは,社会経済発展に伴い,国内企業における資金需要の増加,対ミャンマー投資の活発化,個人の銀行利用の拡大が進んでおり,金融機関で取り扱う資金及びデータ量が増加している。こうした状況を踏まえ,2016年4月に発足したミャンマーの新政権が発表した「経済政策」では,金融・通貨の安定性の達成が重要政策課題として挙げられており,金融システムの安定化は,ミャンマーの重要な課題と位置付けられている。
  • (2)ミャンマー中央銀行は,銀行間取引の即時決済機能や証券決済機能などを含んだ業務システムであるミャンマー中央銀行資金・証券決済システム(以下,「CBM-NET」という。)を導入し,2016年1月から運用している。他方で,ミャンマーの経済発展に伴い,銀行口座数は年率10%以上の伸びを示しており,また,モバイルバンキングサービスが開始されるなど金融取引が急速に増加かつ多様化する中,CBM-NETと各市中銀行勘定系システムの直接接続や流動性節約機能による決済の効率化,モバイルバンキングやインターネットバンキングによる小口送金ニーズに対応する時点決済への対応といったCBM-NETの機能拡張に対するニーズが高まっている。
  • (3)また,域内のクロスボーダーの債券取引に向けて,債券市場慣行及び規制の調和化を目的とした官民一体のASEAN+3債券市場フォーラムの一環として,国境を越えた金融取引を促進すべく,金融サービス取引の国際規格であるISO20022化に向けた動きも始まっているほか,決済システム等の強靭性強化を目的に「金融市場インフラのための原則(PFMI)」(国際決済銀行決済・市場インフラ委員会及び証券監督者国際機構が発表)の実施を促進するG20等のイニシアチブもあり,ミャンマーにおいても,こうした国際的潮流への対応を進めていく必要が生じている。
  • (4)2016年11月の安倍総理大臣とアウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問との会談において安倍総理大臣が表明した「日本・ミャンマー協力プログラム」では,金融制度整備支援は重要な協力プログラムの一つとして掲げられており,また,日本はこれらのプログラム実施のために官民併せて2016年度から5年間で8千億円規模の貢献を行う旨表明した。本計画はその支援を具体化するものである。

2-2 効率性

 我が国は,JICA技術協力「資金・証券決済システム近代化プロジェクト」(2014年2月~2020年8月)」にて,ミャンマー中央銀行の資金・証券決済システムの運用・保守に係る組織・制度整備や,職員のシステム運用・保守・維持管理能力向上を実施中である。本計画は,本計画により整備するシステムの運用・保守にあたり,同技術協力を通じて育成された人材を活用すること等を通じ,我が国支援による開発効果を更に発展させるものである。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下の成果が期待される。

【定量的効果】

 決済金額(CBM-NET利用):

《基準年》
(2017年実績値)
 6,610億MMK(注)

《目標値》
(2023年:事業完成3年後)
 12,438億MMK

(注)1ドル=1,362MMK(ミャンマーチャット)
(中央銀行レート(2017年4月1日時点))

【定性的効果】

  • (1)ミャンマーの市中銀行における決済業務が効率化される。
  • (2)金融システムの耐障害性が向上する。
  • (3)金融市場インフラの原則(PFMI)で定められた基準に沿って決済システム運営が改善される。
  • (4)利便性の高い決済手段の提供により,金融市場における銀行間取引が増加する。
  • (5)安全かつ効率的な決済手段が提供されることで,ミャンマーの金融システムの安定が確保される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ミャンマー連邦共和国政府からの要請書
  • (2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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