ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年4月20日
評価年月日:平成30年2月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
(1)供与国名
アフガニスタン・イスラム共和国
(2)案件名
カブール市南東部地区アクセス改善計画(国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)連携)
(3)目的・事業内容
本計画は,アフガニスタンにおいて首都カブール市の南西部・東部間を結ぶ既存道路の拡幅・改修を行うことにより,市内の交通混雑の解消と物流の活性化を図り,同国の経済に寄与するもの。供与額は12.50億円である。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
今後アフガニスタン,特にカブール市の治安状況が著しく悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 1999年に約200万人であったカブール市の人口は,2017年には396万人(2017年,アフガニスタン中央統計局)に達し,もともと80万人の人口を推定して造られた同市の人口吸収能力を大きく超えている状況にある。地方からの避難民や,就業機会等を求めて流入してくる人々が後を絶たない同市は,世界でも5番目に都市化の進行スピードが早い都市(2016年,世界銀行)とされており,2025年には650万人にまで達すると予測されている(2011年,JICA)。この人口の急激な増加に伴う車両通行量の著しい増加により,カブール市では交通渋滞が慢性化している。
- イ カブール市では2001年以降,国際社会の支援により約300kmの市内道路が整備されたものの,依然として道路舗装率は20%(2012年,JICA)にとどまり,優先整備対象である基幹道路でさえ未舗装または損傷が著しい道路が多い。走行性や交通安全の観点からも道路事情は劣悪であり,円滑な都市交通と物流ネットワークの弊害となっており,住民生活の支障となるだけでなく,首都圏のみならずアフガニスタンの経済全体に影響を及ぼしている。
- ウ このような背景の中,アフガニスタン政府とUNOPSから,我が国に対し,カブール市内の道路整備に関する支援要請がなされた。本計画は,アフガニスタンの首都カブール市の南西部・東部間を結ぶ既存道路の拡幅・改修を行うことにより,市内の交通混雑の解消と物流の活性化を図り,もって同国の持続的・自立的な発展に寄与するものであり,実施の必要性は高い。
- エ また,本計画は,アフガニスタンの自立と安定に向けたアフガニスタン政府の取り組みを支えるために開催された「アフガニスタンに関するブリュッセル会合(2016年10月)」で我が国が表明した相互責任の原則に基づき,2017年から2020年の4年間については,年間最大約400億円の支援を継続するとした開発,ビジネス環境整備支援を含む対アフガニスタン支援方針に合致するものである。
(2)効率性
治安リスクが高く,開発支援が困難なアフガニスタンでの効果的な支援を行うためには,現地のネットワーク及び社会経済事情等における十分な実績と知見,機動力を有するUNOPSとの連携が効果的かつ効率的である。
(3)有効性
- ア カブール市内における(ア)1.7キロメートルのマスラフ道路の整備及び拡幅工事,(イ)新クロヤン橋(50メートル)の建設工事,(ウ)アブドル・ハク広場の環状交差点(200メートル)の整備を行うことで,2017年と比べて2020年(事業完成年)に,本計画対象道路での平均車両走行速度が時速15~18キロメートルから時速30~40キロメートルに早まり,交通時間が約10分から約3分に短縮される。
- イ 都市交通と物流ネットワークの改善により,カブール首都圏に居住する約400万人の住民生活の改善及び同首都圏の経済の発展に資する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- アフガニスタン政府からの要請書
- UNOPSからの要請書