ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年3月23日
評価年月日:平成30年2月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
ミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)
1-2 案件名
マンダレー港開発計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,マンダレー市において,マンダレー港の移設及び近代化のための整備(接岸施設機材の整備,荷役機材の供与,ターミナル建設等)を行うことにより,内陸水運による交通・物流の効率化を図り,もってミャンマーの持続的経済成長に寄与することを目的としている。供与限度額は,60.33億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画の環境社会配慮カテゴリー分野はBであり,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され,また,影響を及ぼしやすい特性及び地域に該当しない。
- (2)以下の事項がミャンマー政府により実施される必要がある。
- ア プロジェクト用地の確保,電力供給,建設設備関連工事(電話設置等)
- イ 維持管理・運営のための予算及び人材の確保
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ミャンマー国内には,6,650キロメートルに及ぶ航行可能な水路があり,内陸水運水路は重要な交通網となっている。特に国土の中央を南北に流れる全長2,170キロメートルのエーヤワディー川は,支流を含め3,938キロメートルの航行可能水路であり,最大都市ヤンゴンから主要都市への水運航行に利用されている他,脆弱な道路網を補完し,自然災害時の代替輸送路としての機能も有している。
- (2)マンダレー市は,ヤンゴンから北方約700キロメートルのエーヤワディー川沿いに位置するミャンマー第2の商業都市である。同市内にあるマンダレー港は全国各地の河川港との間で旅客船及び貨物船が往来し,特に道路等のインフラが十分ではない北部地域との交通・物流の拠点となっており,ミャンマー内陸水運の最も重要な河川港の1つであり,同港の整備に対するニーズは高い。
- (3)しかし,現在のマンダレー港は,延長約6キロメートルの自然河岸であり,貨物荷役施設がなく,全て人力荷役が行われている。また,停泊した船舶に河岸や河原から木板を渡した通路によって,旅客の乗船や貨物荷役を行っており,極めて非効率な交通・物流を余儀なくされている。そのため,マンダレー港の移設と近代的な荷役施設の整備による,港湾機能の強化が喫緊の課題となっている。また後背地の不足により,雨季の河川水位の上昇時には,河岸道路上で荷役が行われており,周辺道路の渋滞を引き起こしている。かかる状況下において,マンダレー港の移設と近代的な荷役施設の整備による,港湾機能の強化が喫緊の課題とされている。
- (4)また,本案件は,ミャンマーの内陸水運による交通・物流の効率化を図り,ひいては北部地域等の生活状況の改善等を含むミャンマー全体の持続的な経済成長に資するものであり,当国全国運輸マスタープラン(JICAが策定を支援し2015年12月に閣議決定)においても緊急性が高い事業として優先プロジェクトリストに位置付けられている。
- (5)我が国は対ミャンマー経済協力方針において,「持続的成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」を重点分野の一つとしており,本事業は同方針に合致する。
- (6)2016年11月に実施された,安倍総理大臣とアウン・サン・スー・チー国家最高顧問との会談において,安倍総理大臣から,「日ミャンマー協力プログラム」(都市部と地方を結ぶ運輸インフラ整備)を踏まえて,日本は官民併せて2016年度から5年間で8千億円規模の貢献を行う旨表明しており,本計画はその支援を具体化するものの一つである。
2-2 効率性
個別専門家「運輸交通政策アドバイザー」(2012年~)をミャンマー港湾公社に派遣し,内陸水運を含む港湾セクターの政策立案及び計画実施能力強化等の支援を実施中。本計画はこれら活動と相互補完するもの。
2-3 有効性
本計画の実施により以下のような成果が期待される。
【定量的効果】
基準年(2016年実績値)⇒目標値(2023年(事業完成3年後):マンダレー港の状況)
- (1)機械化荷役による取扱い貨物量:0トン/年⇒20万トン/年
- (2)1時間当たりの荷役効率:17トン/時⇒100トン/時
- (3)船舶の係留期間:14日⇒0.5~1日
【定性的効果】
- (1)内陸水運の活用が増加するため,道路の交通混雑緩和に繋がり,また,道路交通から環境負荷の低い内陸水運へのモーダルシフトの推進に資する。
- (2)コンテナ化により,荷役中の輸送品の品質保持及び大型・重量貨物の輸送需要の喚起に繋がる。
- (3)内陸水運による交通,物流の活発化により,特に北部地域の経済・社会開発が促進される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ミャンマー連邦共和国政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)