ODA(政府開発援助)

平成30年3月16日

評価年月日:平成30年2月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)

1-2 案件名

マラウィ復興のための住宅建設及び生計支援を通じたコミュニティ開発計画(UN連携/UN-HABITAT実施)

1-3 目的・事業内容

 ミンダナオ島のマラウィ市及び周辺の紛争影響地域において,紛争等の影響により破壊された住宅及びコミュニティ(集会所等)の再建,職業・起業訓練等を実施することにより,国内避難民の支援を通じて平和構築,持続可能な開発及び経済活性化を図る。供与額は11億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)環境社会配慮:特になし
  • (2)外部要因リスク:特になし

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)フィリピン共和国の南部に位置するミンダナオ島は,過去数十年にわたる政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)や共産系反政府武装組織(NPO)等の反政府武装勢力の間の紛争などの影響により,国内他地域に比べ開発が著しく遅れており,特に南西部では貧困率も高く,それが社会不安の一因となっている。
  • (2)フィリピン政府と武装勢力との和平交渉が行われる一方,予断を許さない治安情勢が続く中,2017年5月23日に,ミンダナオ島西部の南ラナオ州マラウィ市において,イスラム過激派武装組織マウテ・グループメンバーらによる市街地占拠事案が発生し,フィリピン国軍及びフィリピン警察とマウテ・グループとの間で武力衝突となり,ミンダナオ島全域に戒厳令が発令された。武力衝突についてはフィリピン政府により10月23日に完全終結が宣言されたものの,この影響で約36万人に及ぶ人々がマラウィ市内や近隣地域からの避難を余儀なくされ,未だ多くの国内避難民が存在する。
  • (3)社会福祉開発省では,災害支援のための「家族アクセスカードプログラム」に登録された約36万人が,今回の市街地占拠事案を発端とする国内避難民(IDP)であるとし,フィリピン政府及び地方自治体では,国内避難民の受け入れを行うなどの対応に努めており,フィリピンの住宅政策を統括している住宅都市開発調整評議会が設置したマラウィ復興タスクフォースが,被害状況査定や今後の復興・平和構築計画策定などを行っている。
  • (4)避難民たちは,各地域に設置された75の避難所や親族宅,他の仮設施設に身を寄せているとされており,避難生活の長期化等から生活環境の急速な悪化が懸念されている。また,14,000の避難世帯を対象にしたUNHCRの調査では,避難民の80%が元の土地に戻りたいと回答している。こうした状況の中,一刻も早いコミュニティの復興と避難世帯の民心・生活の安定が喫緊の課題となっている。
  • (5)国連人間居住計画(UN-HABITAT)は,アフガニスタン,パキスタン,ミャンマー,スリランカ,ネパール等のアジア諸国で自然災害・紛争後の再建復興事業をコミュニティ主体で実施している。特に,我が国の支援で実施したフィリピンにおける2013年の台風ハイエン(台風30号,現地名「ヨランダ」)の高潮で崩壊した地域をコミュニティ主体で復興した実績は広く認知されており,このような実績に着目したマラウィ市長や低所得者向けの住宅建設を支援するフィリピン社会住宅金融公社総裁から我が国に対し,UN-HABITATと連携した支援が求められている。
  • (6)我が国は,ミンダナオの紛争影響地域において,開発による和平プロセスの促進を通じた平和の確保と定着及び貧困からの脱却を実現するため,ガバナンス強化,社会サービスへのアクセス改善を含む貧困削減,インフラ整備や産業振興などによる地域開発に対する支援を実施してきている。本計画は,同地域の平和構築及び経済開発を図るものであり,我が国の対フィリピン国別援助方針に合致する。
  • (7)本計画は,2017年1月に日フィリピン首脳会談の場で安倍総理大臣が発表した,フィリピンに対するODA及び民間投資を含めた今後5年間で1兆円規模の支援の一環でもある。また,同年10月に日フィリピン首脳会談の場で発表した「日フィリピン共同声明」並びに「ミンダナオの平和及び開発のための日本の支援」の具体化の一つである。

2-2 効率性

 ミンダナオの一部の地域では,武装勢力によるテロ・誘拐事件が多発しているため,我が国は,渡航中止勧告(渡航情報:レベル3)を発出しており,同勧告対象に含まれる本計画対象地域では,二国間経済協力の実施が困難であることから,国際機関と連携した支援が重要となる。UN-HABITATはこれまでフィリピン政府機関と連携した災害復興等に関する政策提言や災害復興の能力向上等の多様な事業を実施し,十分な実績と知見を有する当該機関と密に連絡を取りながら,本計画を進めることが効率的である。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下の成果が期待される(2019年(事業完成)時点)。

  • (1)4,000世帯に対して住居が供給され,生活の安定が図られる。
  • (2)コミュニティが直接的に本計画に参画することにより,コミュニティの能力が強化されるとともに,職業訓練の結果,就業・起業に結びつくことにより,コミュニティの収入増加・地域経済の活性化に繋がる。
  • (3)コミュニティ主導の事業に関する地方自治体及び政府関係部局の能力向上に貢献する。
  • (4)コミュニティが本計画に参画することは,貧困の改善を含む地域の平和構築プロセスに関わることであり,コミュニティの紐帯の強化とともに地域の平和と安定に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)フィリピン政府からの要請書
  • (2)UN-HABITATからのプロジェクトプロポーザル
  • (3)フィリピン国別評価報告書(2010年度)
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る