ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年12月21日
評価年月日:平成29年3月3日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
インド
(2)案件名
ベンガルール中心地区高度交通情報及び管理システム導入計画
(3)目的・事業内容
本計画は,カルナタカ州ベンガルール中心地区において,高度交通情報・管理システムを整備することにより,交通渋滞の緩和及び都市環境の改善を図り,もって連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与するもの。供与限度額は12億7,600万円である。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
案件実施に際し,既存施設の撤去等のインド側負担事項が適切に実施され,案件完了後もインド側で適切な維持管理がなされること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア インドでは近年急速な都市化が進む一方で,公共交通インフラ整備が十分進んでいないことから,大都市圏では交通渋滞が深刻な問題となっており,これに伴う深刻な経済損失が経済開発への大きな障害となっている。本計画の対象地域であるベンガルール都市圏の人口は,2001年の約570万人から2014年には約1,010万人まで増加し,経済成長も相まって車両登録台数は過去10年で年率10%以上の増加率を記録している。それに伴い市内の交通量は増加の一途を辿り,特に通勤時においては激しい渋滞が発生し,経済活動へ支障が出ている。
- イ このような状況下,ベンガルール開発庁及びカルナタカ州都市交通局は,深刻化した交通渋滞の緩和を目的とした高度道路交通システム(ITS)の整備を急いでおり,我が国の技術協力支援(2014年~2015年)にて策定した高度交通情報・管理システム整備に係る全体計画に基づき,交通渋滞の緩和に向けた検討を進めているところである。
- ウ かかる状況から,インド政府は我が国に対して,ベンガルール都市圏における高度交通情報・管理システムの導入に係る支援を要請したものであり,事業実施の必要性が認められる。
- エ また,高度交通情報・管理システムについては,日本は高い技術力を有しており,日本の同システムをベンガルール都市圏に整備することにより,「日本方式」を現地のデファクト・スタンダードとすることで,日本企業のインド市場への展開に寄与することも期待される。
(2)効率性
- ア 開発計画調査型技術協力「ベンガルール及びマイソール都市圏ITSマスタープラン策定プロジェクト」(2014年~2015年)にて同市におけるITSの整備・運営に係る全体計画及び技術仕様を策定しており,本計画はこれらに基づき実施することから,高度交通情報・管理システムの効率的な導入・運営が期待される。
- イ 本計画のソフトコンポーネントとして,調達機器を活用した運用管理技術に係る指導を実施機関やベンガルール市に対し予定しており,日本の知見を活用した適切な運用に必要となる技術力の定着を図り,効率性を高める。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 対象交差点29箇所において,2016年実測値と比べ事業完了後の2022年には,ピーク時の渋滞長が約30%削減される。
- イ ベンガルール都市圏において,渋滞が緩和されることにより,利便性が向上し,経済活動の障害が改善され,経済発展に寄与する。
- ウ 現地における「日本方式」の普及に寄与し,日本企業のインド市場への展開に貢献する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)インド政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)インド国別評価報告書(2009年度)