ODA(政府開発援助)

平成29年7月18日

評価年月日:平成29年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件概要

(1)供与国名

チュニジア共和国

(2)案件名

スファックス海水淡水化施設建設計画

(3)目的・事業内容

 チュニジア共和国第2の都市スファックスにおいて,海水淡水化施設等を建設することで,水供給能力の強化及び質の向上を図り,もって生活環境の改善及び経済的・社会的発展に貢献するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 本体工事及びコンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    366.76億円 年1.7% 25(7)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は0.01%

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 環境社会配慮:
    • (ア)EIA(環境影響評価)
       本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに分類される。
    • (イ)社会環境面
       本計画は,国有地で実施されるため,用地取得及び住民移転は発生しない見込み。ただし,送水管敷設,サージタンク(調圧水槽)設置及び送電線建設で用地取得や補償が発生する場合,国内法令及び国際協力機構環境社会配慮ガイドラインに沿って用地取得等の手続きが進められる。送水管敷設等で影響を受ける可能性のある住民との協議では,事業に係る特段の反対意見は出ていない。また,水質汚濁により漁業に影響を与える可能性があるため,事業実施機関である水資源開発公社が漁業従事者に説明した上で,濁水対策を実施し,必要に応じて補償を行う予定。
  • イ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     チュニジアは国土の南半分が乾燥地帯に位置し,北部の首都チュニスの年平均降水量は約500ミリメートル,中部に位置するスファックス大都市圏は約230ミリメートルと僅少である(世界平均は970ミリメートル,日本平均は1,718ミリメートル)。同国では,表流水,地下水共に利用に適した水資源量のほぼ満量を使用していることに加え,水資源の量の8割,また,塩分濃度の低い良質な水資源は北部に集中するなど,水資源の量及び質の著しい地理的偏りがある。このため,北部の水源に依存するその他の地域では,安全な水の供給能力を増強し,地下水を保全するために,新たな水資源開発が課題となっており,そのための手段として,海水淡水化が不可欠な状況になっている。
     スファックス大都市圏では,水供給の大部分(約8割)を他地域(北部・中西部)の水源に依存している。しかし,近年の人口増加や他地域における需給逼迫及び地下水の利用制限によって,2017年から水不足が発生し,2025年には約7万立方メートル/日の需給ギャップが生じる見込みであり,安全な水の安定供給のため,海水淡水化による水資源開発が喫緊の課題となっている。
     このような状況を受け,チュニジア政府は新5か年開発計画方針において,本事業を含む海水淡水化施設建設,水資源保全等を掲げてスファックス海水淡水化施設建設計画を緊急性の高い最重要案件の一つとして位置付けている。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     我が国は対チュニジア国別援助方針の重点分野において「公正な政治・行政の運営に向けた安定的な国内改革」を掲げている。本件は地方都市であるスファックス大都市圏への水供給能力を強化するものであり,首都との経済的・社会的格差の是正に寄与すると考えられることから,我が国の援助方針に合致する。
     対チュニジア支援は,同国との関係強化に資するのみならず,中東・北アフリカ地域全体の発展・安定にも資するため重要である。また,G7はドーヴィル・パートナーシップのもと,中東・北アフリカ諸国の民主的な体制移行,雇用対策,格差是正等の国内諸改革支援を進めているところ,G7の一員としても,チュニジアへの支援には意義が認められる。

(2)効率性

 これまでチュニジアの水セクターに対して無償資金協力,円借款,技術協力等を実施してきており,本件との相乗効果が見込まれる。

(3)有効性

 スファックス大都市圏において,2025年(事業完成後2年後)に,新設する海水淡水化施設から10万立方メートル/日の水を供給することが可能になることにより,水不足が解消される。また,本計画によって他地域への水源依存が低下し,他地域の水資源保全も図られる。更に,水供給能力の強化のみならず,水資源全体の塩分濃度が下がり,水質が向上する。これらにより,生活環境の改善及び経済的・社会的発展の促進に寄与することが期待される。
 さらに,チュニジアの経済的・社会的発展への支援を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者の知見等

 要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,チュニジア国別評価(2007年度),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開く を参照。
 なお,本件に関する事後評価は実施期間である国際協力機構が行う予定。

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