ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成29年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
タミル・ナド州投資促進プログラム(フェーズ2)
(3)目的・事業内容
タミル・ナド州において,民間投資促進や産業振興に関連する政策・制度の改善を促すと共に,主に道路,電力,上下水道等のインフラ整備の早期実現を推進することにより,同州投資促進環境の整備を図り,もって同州に対する海外直接投資の増加を通じた連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与するものである。
- ア 主要事業内容
州政府関係部局の投資環境整備に向けた事業計画や民間セクターからの要望を踏まえて,年度毎に達成すべき政策アクションを政策マトリクス(インフラ整備の加速化,産業人材育成の推進,投資受付担当局の強化,中小零細企業向け投資窓口・情報提供の強化)として整理し,その達成を州政府とJICAの双方でモニタリングすることで政策アクション達成を促進する。
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 221.45億円 1.4% 30(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため,カテゴリCに該当する。 - イ
- 用地取得及び住民移転
特になし。 - ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
2014年9月,モディ印首相は「Make in India」政策を発表し,国内外の民間企業による投資促進を通じた経済成長と雇用創出を推進している。本政策の実現に向け,商工省は各州・政府直轄領の地方政府に対して,投資申請手続きの簡素化等に関する制度改善策を奨励している。
2015年9月に公表された各地方政府の取組結果によると,投資・建設許可取得や税金の支払い等が依然として課題となっており,商工省及び地方政府には各種制度改善を通じた投資環境改善の更なる加速化が求められている。
インド南部に位置するタミル・ナド州は,東南アジア地域とのシーレーンに位置し,その豊富な労働力や一貫した外資誘致政策等から,四輪・二輪自動車関連産業を中心に本邦企業が進出しており,本邦企業拠点数は増加傾向にある。また,同州はチェンナイ・バンガロール産業回廊(CBIC)の対象州として産業振興上の重要地域となっている。
他方で,タミル・ナド州は,州別ビジネス環境ランキングで2015年は36の州及び政府直轄領のうち12位,2016年は18位に位置づけられており,制度・インフラ面ともに更なる投資環境改善が課題となっている。
本計画は,タミル・ナド州において,民間投資促進や産業振興に関連する政策・制度の改善を促すと共に,主に道路,電力,上下水道等のインフラ整備の早期実現を推進することにより,同州投資促進環境の整備を図り,もって同州に対する海外直接投資の増加を通じた連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与するものであり,インドの開発政策との高い整合性を有している。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
「タミル・ナド州投資促進プログラム(フェーズ2)」は,タミル・ナド州において,民間投資促進や産業振興に関連する政策・制度の改善を促すと共に,主に道路,電力,上下水道等のインフラ整備の早期実現を推進することにより,同州投資促進環境の整備を図り,もって同州に対する海外直接投資の増加を通じた連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与する案件であることから,上記(ア)及び(イ)に合致する。
(2)効率性
既に実施済みの対インド円借款「タミル・ナド州投資促進プログラム」では,有償勘定技術支援を通じた政策モニタリングや本邦企業も含む関係者間調整が行われ,政策アクションの円滑な進捗確認や実施促進の観点から,技術支援の実効性が認められた。ついては,本事業でも同様の技術支援の実施を検討する。
(3)有効性
本計画の実施により,タミル・ナド州投資促進環境の整備を図り,もって同州に対する海外直接投資の増加を通じた連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2020年)見込み)として,州インフラ基金管理会社により実施促進されるプロジェクト数(4件,2015年:0件),小規模インフラプロジェクト特別委員会により実施促進されたプロジェクト数(25件,2015年:0件),州職業訓練公社及び民間活用型職業訓練スキームによって育成される訓練生数(250,000人/年,2015年:150,000人/年),民間企業参画プログラムにより研修受講した講師数(100人/年,2015年:0人/年),投資窓口一元化システムを通じた投資許認可発出までの所要日数(30日以内,2015年:N/A),中小零細企業向け投資申請一元化窓口システムへのアクセス数(500回/月,2015年:0回/月),投資申請一元化機能を利用した中小零細企業数(40社,2015年:0社)等を設定している。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インド国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。