ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成29年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
アンドラ・プラデシュ州灌漑・生計改善計画(フェーズ2)(第一期)
(3)目的・事業内容
アンドラ・プラデシュ(AP)州において,老朽化した灌漑施設を改修し,生産農家組織に対する包括的な営農体制構築を支援することにより,実灌漑面積の拡大,農業生産性の向上及び農家のマーケティング能力強化を図り,もって事業対象地域の農家の生計改善及び農業バリューチェーンの構築を通じて産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援に寄与するものである。
- ア 主要事業内容
- 灌漑施設の改修(約470箇所の改修)(国内競争入札)
- 参加型水管理(水利組合及び政府職員の能力強化等)(国内競争入札)
- 生産農家組織の推進(普及員の指導支援及び組織形成支援等)(国内競争入札)
- 生計向上支援活動(畜産及び内水面養殖にかかる生産活動支援等)
(国内競争入札) - バリューチェーン構築及び農業機械普及化パイロットプログラム
(選定作物にかかる生産・加工・流通体制及び農業機械研修センター設立等)
(国内競争入札) - 事業実施管理体制支援(実施機関の体制整備等)(国内競争入札)
- コンサルティング・サービス(ショートリスト方式)
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 212.97億円 1.4% 30(10)年 一般アンタイド (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに該当する。 - イ
- 用地取得及び住民移転:特になし。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドでは,国土面積の約46%が農地として活用されており,人口の約7割が農村部に居住し,就労人口の約半数が農業に従事しているなど,インド政府の第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)において,農業セクターでは4%の成長率を目指し,生産性向上等の取り組むことが掲げられている。農業・農村開発はインドの均衡のとれた社会経済発展と貧困削減に不可欠である。
またインド政府は,従来から大規模な灌漑開発に取り組んできており,全耕地面積に占める灌漑率は約43%,農業生産全体の約3分の2を灌漑農業が占めるまでに至っている。しかし,不適切な灌漑施設の管理,非効率な灌漑用水の利用,不十分な営農支援等の問題が深刻化しており,農作物の生産性向上のため灌漑率向上に加え,農家への営農支援,農作物の付加価値向上が重要である。
AP州は,インド南部デカン高原に位置する農業が盛んな州であり,農耕可能地帯は805万ヘクタールにのぼり,人口の約62%が農業に従事している。また,同州政府は食品加工産業の発展にも注力しており,同州における食品加工施設数は5,735と全国で最も多い。他方で,同州は,農作物の生産から加工,流通までのフードバリューチェーンの構築に有利な条件が揃っているものの,灌漑施設の未整備,農業用水不足,収穫後処理・加工及び販売に係る知識不足,農作物の保管施設や流通用の車両等のインフラ未整備が課題となっている。
本計画は,AP州において,老朽化した灌漑施設を改修し,生産農家組織に対する包括的な営農体制構築を支援することにより,実灌漑面積の拡大,農業生産性の向上及び農家のマーケティング能力強化を図り,もって事業対象地域の農家の生計改善及び農業バリューチェーンの構築を通じて産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援に寄与するものであり,インドの開発政策との高い整合性を有している。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
「アンドラ・プラデシュ州灌漑・生計改善計画(フェーズ2)(第一期)」は,AP州において,老朽化した灌漑施設を改修し,生産農家組織に対する包括的な営農体制構築を支援することにより,実灌漑面積の拡大,農業生産性の向上及び農家のマーケティング能力強化を図り,もって事業対象地域の農家の生計改善及び農業バリューチェーンの構築を通じて産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援に寄与する案件であることから,上記(イ)及び(ウ)に合致する。
(2)効率性
本計画においては,州レベルの事業管理ユニット(Project Management Unit)及び県レベルの事業実施ユニット(District Implementation Unit)の下に各分野に精通した各関連部局の職員を配置し,事業実施及び管理を関連部局との連携下で行う体制を構築する。また,事業開始段階で関連部局の既存の組織体制及び能力を考慮し,不足箇所については支援要員を配置する実施体制とする。
(3)有効性
本計画の実施により,AP州において,老朽化した灌漑施設を改修し,生産農家組織に対する包括的な営農体制構築を支援することにより,実灌漑面積の拡大,農業生産性の向上及び農家のマーケティング能力強化を図り,もって事業対象地域の農家の生計改善及び農業バリューチェーンの構築を通じて産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2025年)見込み)として,実灌漑面積(大・中規模灌漑(104,000ヘクタール,2017年:69,000ヘクタール),小規模灌漑(57,000ヘクタール,2017年:39,000ヘクタール)),灌漑計画面積と実灌漑面積のギャップ(大・中規模灌漑(0%,2017年:33%),小規模灌漑(0%,2017年:29%)),水利費徴収率(大・中規模灌漑(50%,2017年:44%),小規模灌漑(50%,2017年:8%)),対象地域における生産農家組織数(900団体,2017年:0団体),事業対象企業の取引農家世帯数(5,100戸/年,2017年:0戸/年)等を設定している。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インド国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。