ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年3月31日
評価年月日:平成28年2月4日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
キルギス共和国
(2)案件名
ビシュケクーオシュ道路雪崩対策計画
(3)目的・事業内容
本計画は,首都ビシュケクと第二の都市オシュを結ぶ,キルギス国内唯一の南北幹線道路であるビシュケクーオシュ道路上において,雪崩対策を実施することにより,幹線道路の交通改善を通じた国内産業の輸出競争力の強化を図り,もって運輸インフラ維持管理と地域間格差の是正に寄与するもの。
供与限度額は42億8,800万円。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
考慮すべき留意点としては,以下の事項が挙げられる。
- ア 用地取得,住民移転,貴重植物の移植,慰霊碑の移設等を含む先方負担事項は,キルギス運輸・通信省が本計画の入札参加資格事前調査公示前までに完了する必要がある。
- イ 外部条件として,治安情勢が悪化しないことが必要である。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 内陸国のキルギスは物・人の移動の大半を道路交通に依存し,約34,000キロメートルの国内道路網は国民の生活道路,また周辺国との交易を担う主要な経済インフラとしての役割を担っている。ビシュケクーオシュ道路はキルギスの首都ビシュケクと第二の都市オシュを結ぶ,キルギス国内唯一の南北幹線道路であり,またアジア全体の物流の円滑化,経済の発展を図るために必要な国際回廊としても定められている。しかしながら,同道路は険しい山岳地帯を通過することから,毎年雪崩等の自然災害が多発し,通行止めが発生している。特に,同道路の246キロメートル地点は近年,毎年大規模な雪崩による通行止めが発生しており,2012年に発生した雪崩では10名が死亡し,1週間の通行止め,約1か月間の時間制限通行止めを行う事態となった。
- イ このような状況から,キルギス政府は我が国に対し,雪崩対策のための設備の整備につき,要請を行った。
- ウ 本計画は,首都ビシュケクと第二の都市オシュを結ぶ国際幹線道路であるビシュケクーオシュ道路上において,雪崩対策を実施することにより,幹線道路の交通改善を通じた国内産業の輸出競争力の強化を図り,もってキルギス国内の運輸インフラ維持管理と首都ビシュケクや第二の都市オシュのような都市とその間に点在する農村地域の地域間格差の是正に寄与するものである。2013年に策定した我が国の対キルギス国別援助方針の重点分野「運輸インフラの維持管理と地域間格差の是正」にも合致するものであるため,支援実施の意義は高い。
(2)効率性
- ア スノーシェッド(雪崩よけのための設備)の設計にあたっては,構造形式をアーチカルバート式とすることでコンクリート断面を縮小し,施工方法も現場打ち工法を採用することで費用の削減を図った。
- イ 機材調達については,アスファルトを既存プラントから調達すること,鉄筋の現地調達を行うことで費用の削減を図り,案件全体の効率化を図った。
(3)有効性
本件の実施により以下のような成果が期待される。
- ア 本案件対象地域であるビシュケクーオシュ道路246キロメートル地点で発生する雪崩による年間通行制限日数が,30日(2014年)から0日(2021年(事業完成3年後))に減少する。
- イ 本案件対象地域であるビシュケクーオシュ道路246キロメートル地点で発生する雪崩による年間通行不能日数が,7日(2014年)から0日(2021年(事業完成3年後))に減少する。
- ウ ビシュケクートクドクル間における冬期(12~3月)平均交通量が,約1,650台/日(2014年)から2,000台/日(2021年(事業完成3年後))に増加する。
- エ 雪崩発生時における交通の安全性の向上,冬期におけるキルギス国内及び周辺国へのアクセスが向上することで,キルギスの経済活性化に貢献する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)キルギス政府からの要請書
- (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)対ベトナム円借款「ハイヴァントンネル建設計画」事後報告書評価報告書(JICAを通じて入手可能)
- (4)対ブータン無償資金協力「橋梁架け替え計画」事後評価報告書(JICAを通じて入手可能)