ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年3月29日
評価年月日:平成29年3月16日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件概要
(1)供与国名
マダガスカル共和国
(2)案件名
トアマシナ港拡張計画
(3)目的・事業内容
トアマシナ港の拡張・整備を行うことにより,増加する貨物需要に対応するための港湾機能の強化,荷役生産性向上を図り,もって鉱物資源の輸送の円滑化をはじめ,投資促進,民間セクターの開発を促進することにより,マダガスカルの経済インフラ開発に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 土木工事(防波堤建設,コンテナ貨物用バース建設及び増深,バルク貨物用バース増深,コンテナヤード拡張)
- コンサルティングサービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 452.14億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価):本計画は,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月制定)に掲げる影響を受けやすい地域に該当するため,カテゴリAに該当する。事業対象地域周辺のサンゴ礁は,マダガスカル政府により影響を受けやすい地域に指定されているが,当該サンゴ礁周辺での開発は許可されており,工事中には,貴重種のサンゴを移植し,サンゴ幼虫の着生を促す消波ブロックを使用し,また水質汚濁防止策を実施することにより,自然環境への望ましくない影響を軽減する。さらに,海岸浸食・堆砂が予測されているため,詳細調査を実施した上で必要に応じて防砂堤の建設を検討する。貴重種を含むサンゴ礁群が生息するため,工事時はサンゴの移植作業が行われる。
- イ
- 社会環境面:本計画は,既存の港の拡張事業であり,用地取得及び住民移転を伴わないが,港湾施設の拡張に伴い,港湾の保安対策が強化され,周辺で漁業を営む漁民の生計に影響が及ぶ可能性があるため,漁民の要望を踏まえた生計回復支援策を実施する。
- ウ
- 外部要因リスク:特段なし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
マダガスカル政府は経済成長の基盤となるインフラ開発を重点的に進めており,マダガスカルの国家開発計画(Plan National de Dévelppement:2015~2019年)では,投資促進・民間セクター開発のための基幹インフラ整備を優先課題として掲げている。また,同国は南インド洋に位置する島国で,海上輸送が基幹輸送モードとして重要な役割を担うことから,「運輸セクター政策」(Politique Sectorielle des Transports)において,トアマシナ港の整備を最優先事項としている。
トアマシナ港は同国最大の商業港であり,同国の国内向け貨物の約75%,国際貨物の約90%を取り扱っている。2009年の政治危機以降,同国の経済は回復の兆しを見せており,2016年以降は4%を超える成長率が見込まれる(2016年,IMF)。トアマシナ港では,このような経済成長に伴うコンテナ貨物の需要増加(2005年から2014年の10年間で約2倍増加。2014年:207,000TEUから2035年:約950,000TEU)が見込まれるが,同港のコンテナターミナルは狭く,岸壁の長さや水深も十分ではないため,需要増加への対応が困難な状況である。また,同港におけるバルク貨物の取扱量も急速に増加しており,2011年から2014年の4年間でバルク貨物の取扱量は約1.5倍に増加し,今後更に増加が見込まれる。加えて,バルク貨物船は大型化の傾向にあるが,バルク貨物を取り扱うバースの水深は浅く,大型バルク船が寄港することができないため,対応可能な岸壁の整備が必要である。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国は,対マダガスカル共和国事業展開計画において,「経済開発と社会開発のバランスの取れた持続的発展支援」の基本方針の下,「経済インフラ開発」を重点分野とし,同国首都と海外を結ぶ物流ラインをハード・ソフトの両面から包括的に支援することとしており,本計画はこの方針に合致する。
また,我が国は,2016年8月に開催したTICAD VIにおいて,「約100億ドル(約1兆円)の質の高いインフラ整備」を表明しており,本計画はこれを具体化するものである。
(2)効率性
本計画においては,防波堤の建設に使用する消波ブロックを先行的に作成することにより,施工時の港湾内の混雑を軽減し,事業実施の効率化を図ることとしている。また,コンテナ貨物用バースの建設については,部分竣工させることにより,増加するコンテナ貨物にいち早く対応する予定としている。
(3)有効性
本計画の実施により,港湾機能の強化,荷役生産性向上が図られ,もってマダガスカルの経済インフラ開発に寄与することが期待され,年間コンテナ取扱量を約21万TEU(2014年実績)から約46万TEU(事業完成後2年後(2027年))に増加等の効果が見込まれる。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン,マダガスカル国別評価報告書(2006年),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。