ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年2月16日
評価年月日:平成28年9月1日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
ネパール連邦民主共和国
(2)案件名
ポカラ上水道改善計画
(3)目的・事業内容
本計画は、ネパール第2の都市であるポカラ市において、上水道施設の整備を行うことにより、水供給量増加及び水質改善を通じた給水サービス向上を図り、もって社会・経済インフラ整備に寄与するもの。供与額は48億1,300万円。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がネパール連邦民主共和国により実施される必要がある。
- ア ネパール側負担事項のうち特に、運転維持管理のための増員がスケジュール通りに実施されること。
- イ 燃料代などが想定される物価上昇率を超えて上昇しないこと。
- ウ 浄水施設建設用地について、用地取得及び1件の住民移転が発生するため、本計画での補償方針に則った補償が実施機関により確実に実施されること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア ポカラ市は首都カトマンズに次ぐネパール第2の都市として人口約25万人(2011年、ネパール政府センサス)を抱え、かつ最大の観光都市として年間約23万人(2010年、Pohkara Tourism Office)が訪れている。人口規模にも拘わらず、その水道事業を担うネパール水道公社(Nepal Water Supply Corporation、以下「NWSC」という。)ポカラ支所では、給水水質・給水頻度・設備投資等の面で課題を抱えている。具体的には、同国内の54%の家庭では飲料水質基準の50NTU(注 NTU:水の濁りの程度を表す単位)以上に達することや、98%の家庭の水道水から大腸菌が検出されるなど,水質に大きな問題を抱えるとともに、不均等な給水頻度の改善が課題となっている。さらに、NWSCでは、過去数年間にわたり収益的収支が全て赤字であり、2014年時点における累積赤字は10億円に上っている。2014年には、大幅な水道料金の値上げを行い赤字解消に努めているものの、自己資金による水道サービス改善のための設備投資は困難な状況にある。
- イ 上水道施設の改善はネパール政府にとって重要な課題の一つであり、国家開発戦略の最上位に位置づけられる「第13次3か年計画(2013/14~2015/16)アプローチペーパー」において、「安全な飲料水と衛生サービス」を重点課題として掲げ、2017年までに全ての人々に対して信頼できる給水及び衛生サービスを提供することを目指している。また、「国家上下水道政策(2009年)」においても、水量・水質・サービスに関する需要と供給の不均衡の改善を課題としている。
(2)効率性
- ア ノン・プロジェクト無償「セクタープログラム無償(2004年)」にてポカラ市周辺村落部に位置する主要な取水源から市内ビンダバシニ配水池までの導水管資材(ダクタイル鋳鉄管、直径500ミリメートル、11キロメートル)の供与を行っており(敷設工事はネパール側が実施)、本計画ではこの導水管を活用して水道施設の整備を行う。
- イ 技術協力でJICAはネパール上水セクターの政策立案支援や新規案件形成を行う技術協力事業「水道政策アドバイザー」(2013~2017年)を実施しており、同事業によって派遣されているアドバイザーは案件形成段階から本事業と連携している。
(3)有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
- ア 2015年から事業完成後3年後の2023年までの間に、(ア)濁度が4~419NTUから5NTU以下に低下し、(イ)残留塩素が0.0ミリグラム/リットルから0.5ミリグラム/リットル以上に増加し、(ウ)給水頻度について、給水エリア内の住民のうち21%が週7日、56%が週3~4日、23%が週1日から100%が週7日に改善される安全な水の安定的供給の確保が図られる。
- イ 漏水量の削減と給水圧の適正化に伴う水道サービスの改善、漏水量の削減と給水メーターの更新及び無収水量の低減によるNWSCポカラ支所の料金徴収の増加、水道公社の財務基盤強化及びポカラ市住民の生活環境改善に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ネパール政府からの要請書
- (2)ネパール国別評価報告書
- (3)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)