ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成28年12月15日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
ネパール連邦民主共和国
(2)案件名
ナグドゥンガ・トンネル建設計画
(3)目的・事業内容
ネパールの首都カトマンズと主要都市を結ぶ幹線道路上にあるナグドゥンガ地域の峠にトンネルを建設し,当該区間の運輸交通網を円滑化させることにより,急増する交通需要への対応,移動時間の短縮,通行の安全性向上を図り,もって持続可能で均衡のとれた経済成長のための社会基盤・制度整備に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- トンネル建設,アクセス道路,橋梁整備
- 料金所,管理事務所,道の駅建設,配電線整備
- コンサルティグ・サービス(詳細設計,入札補助,施工監理,運営・維持管理等)
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 166.36億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる,道路セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,カテゴリーBに相当する。ネパールの環境法令に基づき作成が求められている環境影響評価(EIA)報告書は,2015年12月に科学技術環境省より承認を取得済。 - イ
- その他・モニタリング
各実施機関が工事中及び供用後の大気質・水質についてモニタリングを行う。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ネパールは,国土の約8割が山岳地帯のため,運輸交通(貨物・旅客)の約9割を道路に依存している。国内の車両登録台数は過去5年間で約2倍に増加し,陸路を中心とする貿易取引額も2004年度から2012年度にかけて輸出は約1.7倍,輸入は約3.2倍に増加するなど,年々貨物量・旅客量とも拡大を続けている。一方で,道路密度(0.17キロメートル/平方キロメートル)は南アジアの中で最低レベルで,未舗装道路率も46%と高く,道路ネットワークの整備の遅れが経済成長のボトルネックとなっている。特に,首都カトマンズから国土を東西に貫くミッドヒル・ハイウェイ(約1,750キロメートル),及びカトマンズから南部のタライ穀倉地帯を経て,インドとの陸上交易の最重要拠点ビルガンジへ繋がる幹線道路は,陸上取引の約6割が通過するネパール経済の大動脈であるが,増加する貨物量・旅客量に道路整備が追いついていない。ミッドヒル・ハイウェイの一区間を構成するナグドゥンガ地域の急峻な峠(標高800メートル~1,500メートル)は,10%超の急勾配や急カーブにより交通渋滞や交通事故が頻発する等,同国の運輸交通のボトルネックとなっている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
2012年4月策定の対ネパール「国別援助方針」においては,同国が目指す後発開発途上国(LDC)からの脱却に向けた持続的かつ均衡のとれた経済成長を支援するため,(ア)地方・農村部の貧困削減,(イ)平和の定着と民主国家への着実な移行,及び(ウ)持続可能で均衡のとれた経済成長のための社会基盤・制度整備を重点分野として掲げている。今次案件は,上述(ウ)の重点分野に対応した支援となっている。我が国は,持続可能な開発目標(SDGs)の達成のための支援,南西アジア地域の貧困削減への支援を重視しており,本件計画の支援は我が国の基本政策に合致する。
(2)効率性
ベトナム「ハイヴァントンネル建設事業」の事後評価結果等から,新技術の適用を伴う事業では,維持管理計画を事前に準備する等,工事期間中から維持管理の準備を進めるべきであるとの教訓が得られている。本事業では,ネパールにとって初の山岳道路トンネルを整備することから,上記教訓を踏まえ,コンサルティング・サービスやトンネルの運営維持管理能力にかかる技術協力等を通じて,実施機関の組織体制や実施能力の向上を図り,維持管理計画を準備すると共に,完成後最低1年間はコンサルタントが運営・維持管理を支援する。
(3)有効性
本計画によって,事業完成2年後の2023年には,対象区間において,所要時間が東側(カトマンズ行)で7分(2014年実績値:30分)及び西側(ナウビセ行)で6分(2014年実績値:20分)に短縮され,年平均日交通量が10,200台/日に増加するとともに(2014年実績値:7,700台/日),交通事故件数が車両で120件(2014年実績値:240件),人身で65件(2014年実績値:130件)に減少することにより,急増する交通需要への対応,移動時間の短縮,通行の安全性向上を図り,もって持続可能で均衡のとれた経済成長のための社会基盤・制度整備に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
ネパール政府の要請書,国際協力機構提出資料等,ネパール国別評価(平成24年度)等。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。