ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年11月24日
評価年月日:平成28年9月28日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男
1 案件概要
(1)供与国名
セネガル共和国
(2)案件名
マメル海水淡水化計画
(3)目的・事業内容
首都ダカールにおいて海水淡水化施設を建設するとともに配水管網を改善することにより,水供給能力の強化,水源の多様化及び安全な水へのアクセス改善を図り,もって同国の経済発展のための基盤整備に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 海水淡水化施設の建設
- 配水管網の改善
- コンサルティングサービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 274.63億円 年0.70% 30(10)年 一般アンタイド (注)コンサルタント部分の金利は0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価):本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに該当する。
- イ
- 社会環境面:本計画の対象地は2.56ヘクタールの民有地と2.41ヘクタールの国有地であり,非自発的住民移転は生じない。当国国内法令及びJICA環境社会配慮ガイドラインに沿って再取得価格に基づき補償が行われ,用地取得が進められる。本計画により影響を受けうるステークホルダーとの協議が実施され,計画実施にかかる合意形成が進められている。
- ウ
- 外部要因リスク:特段なし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
セネガル政府は,2014年2月にセネガル新興計画(PSE:Plan Senegal Emergent)を策定し,2035年に新興国入りすることを目指した戦略を掲げている。その実現に向け,(ア)「経済構造の変革,成長」,(イ)「人的資本,社会保障,持続的発展」及び(ウ)「ガバナンス,制度,平和,安全」の3つの柱を打ち出している。
首都ダカール州では,近年人口が急増し(2002年~2013年で約1.4倍増),全国土面積の0.3%の範囲に同国の全人口の20%以上に相当する約310万人が居住しており(2013年国勢調査),同国の産業活動の約8割が集積している。1980年代初めに30万人規模の想定で整備された首都圏の都市インフラは,人口増加を背景に拡大する需要に十分対応できておらず,飲料水については,2010年時点で既に水供給量(311,310立方メートル/日)が日最大需要量(316,943立方メートル/日)を満たせていない。2025年には日最大需要量が600,000立方メートル/日以上に達すると予測されている(2015年,JICA調査報告書)。
ダカール州の水道水源は表流水と地下水が半々の構成である。表流水を生産する2つの浄水場は何れもダカールから約250キロメートルの遠隔地に位置するギエル湖を水源としているが,2013年9月には浄水場とダカール州を結ぶ送水管が破裂し,約3週間の断水により首都圏の住民生活と経済活動に甚大な影響を及ぼした。また,地下水については揚水過多のため中長期的には利用の抑制が求められており,水源の多様化を通じた水供給能力の拡大が急務である。
加えて,配水管の老朽化による漏水の問題も深刻であり,特にダカール州の中心地に位置するダカール1配水区では,配水管の約4割が施工後40年以上経過していることから,無収水率が約27%とダカール州内でも最も高く,水源開発と併せて配水能力の向上が求められている。
かかる背景の下,セネガル国営水道公社(SONES)は,中長期的な水需要の増大に対応すべく,2010年に「ダカール州及びプティ・コート地区における給水マスタープラン」を,2014年には「ダカール州水資源開発計画」を策定し,既存浄水場の拡張と海水淡水化施設の建設を組み合わせた水源開発計画を策定した。なお,2014年2月に発表されたセネガルの国家計画「セネガル新興計画(PSE)」における「優先的行動計画:2014~2018年」の中に,本計画が掲載されている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
日本は,セネガル共和国を援助重点国とし,西アフリカにおける広域支援拠点国と位置付けており,援助方針において,「西アフリカ地域の安定と発展を支える経済開発と社会開発の支援」を援助の基本方針(大目標)に掲げ,ハード(施設整備)とソフト(人材育成)の連携,及び地域全体への裨益を念頭に,「持続的経済成長の後押し」と「基礎的社会サービスの向上」を重点分野に位置づけた協力を展開することとしている。重点分野「持続的経済成長の後押し」のもとでは,「経済発展のための基盤整備」を開発課題として設定し,都市インフラの整備を推進している。
本計画は,都市の生活インフラの基盤となる水インフラの整備を行うものであり,上記の国別援助方針と合致する。 - ウ
- 二国間関係
日本とセネガル共和国は,同時期(2016年-2017年)に共に安保理非常任理事国を務めていることに加え,同国はIWCにおいても日本の立場を支持している。本件円借款供与を通じ,良好な日・セネガル関係を維持・強化させることは,国際場裡における同国からの支持を引き続き獲得していくために極めて重要である。
(2)効率性
本計画においては,事業対象外の要因(老朽化した配水管からの漏水等)により,対象事業の効果が低減しないようにするため,水生産から配水に至る水供給プロセスを総合的に勘案し,特に無収水率が高い配水区域における配水管網の改修・改善を事業対象に含んだ。
(3)有効性
本計画の実施により,水供給能力の強化,水源の多様化及び安全な水へのアクセス改善が見込まれ,もって経済発展のための基盤整備に寄与することが期待される。運用・効果指標(事業完成後2年後(2023年)見込み)として,ダカール州における年間生産水量(138.8百万立方メートル/年,2014年実績値:104.6百万立方メートル/年)等を設定している。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。