ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年10月27日
評価年月日:平成28年9月2日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
モルディブ共和国
(2)案件名
地上デジタルテレビ放送網整備計画
(3)目的・事業内容
本計画は,モルディブにおいて日本方式による地上デジタルテレビ放送網の整備を行うことにより,国民の情報へのアクセスの向上を図り,もって気候変動対策・防災及び島嶼間情報格差の是正に寄与するもの。
供与限度額は27億9,200万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
モルディブ政府により,入札図書作成開始時までに地デジ放送実施に必要な法制度が整備され,必要な周波数が割り当てられること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 約1,190の小環礁島,人口約34万人から構成されるモルディブ共和国では,島嶼間の情報格差の是正が重要な課題となっている。モルディブでは現在,公共及び民間放送局4社により地上アナログ放送が行われており,同国の人口の83.2%をカバーするなど,テレビが国民の主な情報入手の手段となっている。
- イ 一方,民間放送局は首都マレ島及びその周辺でのみ放送しており,全国規模で放送しているのは公共放送局のみであり,国民の情報へのアクセスの向上及び島嶼間情報格差の是正を図るためには,地方の島において現地語で視聴できる番組数の増加等,放送サービスの拡充が必要である。
- ウ また,同国は暴風や洪水,気候変動等による自然災害に対し脆弱であり,緊急時の迅速かつ詳細な防災情報提供が喫緊の課題である。このため,複数の地上波放送事業者による共同送信,放送の多重化,データ放送を通じた気象情報・防災情報を含む多種多様な情報提供を可能とする地デジ放送網の整備が求められている。同国の「第7次国家開発計画(2005~2010年)」は,質の高い放送への改善及び全ての行政区におけるメディアへの同等水準のアクセス機会の提供という方針を掲げており,現在策定中の第8次国家開発計画においても,地デジ化の推進により,島嶼間情報格差の是正,災害管理・気候変動対策に係る方針が盛り込まれる見込みである。
- エ 本計画は,日本方式による地上デジタルテレビ放送網の整備を行うことにより,国民の情報(気象情報や防災情報を含む)へのアクセス向上を図り,もって気候変動対策・防災及び島嶼間情報格差の是正に寄与するものであり,実施の必要性及び意義は大きい。
(2)効率性
本事業で整備する地デジ放送プラットフォームの運営においては,民間放送事業者と公共放送局の強い連携が必須であるところ,プラットフォーム参画時,民間放送事業者の機材に係る新たな投資が発生しない設計(地デジ放送網運営機関による運営)とする。これによって,民間放送事業者のプラットフォーム運営への円滑な参画,カメラ等スタジオ機材の高画質化への注力を可能とし,地デジの放送の特徴である高画質の番組を効率的に視聴者に届けるようにする。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア モルディブにおける地上波放送の人口カバー率が83.2%(2015年:アナログ放送での推計値)から91.3%(2021年:事業完了3年後)に上昇する。
- イ モルディブの地方で視聴可能な番組系統数が1チャンネル(2015年:アナログ放送)から8チャンネル(2021年:事業完了3年後)に増加する。
- ウ 島嶼間の情報格差是正のための環境整備,地方のニーズを反映した番組の提供,気象情報・災害情報へのアクセスが向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モルディブ政府からの要請書
- (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能。)
- (3)対カメルーン無償資金協力「ラジオ放送機材整備計画」の事後評価書(JICAを通じて入手可能)