ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年10月19日
評価年月日:平成28年7月6日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福孝男
1 案件名
(1)供与国名
スーダン共和国
(2)案件名
コスティ市浄水場施設改善計画
(3)目的・事業内容
本計画は,南部の白ナイル州コスティ市において,浄水場施設の新設・改修及び機材調達を行うことにより,浄水能力及び施設運営能力の向上を図り,もって同州の給水環境改善を通じた基礎生活の向上に寄与するもの。供与限度額は,31.51億円である。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がスーダン共和国政府により実施される必要がある。
- ア 先方政府の負担事項(免税,施設周辺の防護柵,電柱移転,非正規住民移転等)の実施。
- イ 浄水場施設の運営・管理に必要な人材配置がなされること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア スーダン共和国(以下,「スーダン」という。)は,アラブとサブサハラ・アフリカの境界を成し,干ばつや食糧危機に繰り返し見舞われるアフリカの角地域等と国境を接しており,同国情勢の不安定化は,周辺地域や,我が国の通商,交易上重要なシーレーンの一部である紅海やソマリア沖にも波及することが懸念されることから,同国の安定的な発展は我が国にとっても重要な課題である。また,スーダンは豊かな鉱物資源を有する資源国であるほか,広大な国土を有し,農業開発に関する潜在性も大きい。一方で,長年続いた内戦の影響もあり,基礎的な生活インフラの欠如,国内避難民の社会再統合支援等が課題となっている。同国がこれらの課題を解決し,安定した発展を遂げることは,治安の安定及び投資環境の改善等を通じて,我が国とスーダンとの間の経済関係の進展にも資する。
- イ 白ナイル州の年間人口増加率は3.7%で全国平均の3.2%を上回っており,特にコスティ市周辺はダルフール地方や南スーダン共和国からの避難民の流入により給水需要は増加している。一方,1942年に建設されたコスティ市の既存浄水場は施設の老朽化が著しく,濾過機能の低下等の問題を抱えている。このため,増加する給水需要に対応しきれず,給水率は約4割に留まっている。また,処理水の濁度は10~250NTUと高く,5NTUが求められるスーダンの飲料水水質基準を大きく下回っていることから,処理機能の低下と人口増加が相まって既存浄水場の改築の逼迫度が高い。
- ウ 同国の安全な水へのアクセス率は59%であるが,国家25ヶ年給水計画(2003~2027)では,同アクセス率を2027年までに100%とすることを目指している。また,白ナイル州は,水・衛生セクター戦略計画(2011~2016)の中で,安全な水へのアクセス率を2016年までに100%とし,一人一日あたり給水量を2010年の25リットルから2016年までに76リットル以上とすることを目指しており,本計画による浄水場の機能向上が求められている。
(2)効率性
- ア 対スーダン共和国国別援助方針(2012年12月)の重点分野の一つとして「基礎生活分野支援」を置き,水・衛生支援プログラムを実施している。これまで,技術協力「水供給人材育成プロジェクトフェーズ2」(2011~2015年)において,白ナイル州はパイロット州の一つとして選定され,給水施設の維持管理に関する人材育成が行われた。また,技術協力「州水公社運営・維持管理能力強化プロジェクト」(2016年~2020年)において,白ナイル州水公社の職員を対象とした給水施設の運転・維持管理能力及び州水公社の経営管理能力を強化することにより,白ナイル州水公社の組織運営及び運転維持管理能力の強化を図ることとしており,本計画は,これらの実績を踏まえて実施する。
- イ スーダンの給水セクターでは,UNICEF,イラン輸入開発銀行,英国際開発省,アフリカ開発銀行,中国,EU等が支援している。UNICEFはWASH(水と衛生)プログラムを推進し,主に村落における井戸やトイレの設置を支援している。イラン輸入開発銀行は白ナイル州ドゥエム市において有償資金協力による浄水場(50,000立方メートル/日)を建設中である。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 事業完成5年後の2024年に,平均浄水量(立方メートル/日)が年間10,000-15,000(2013年実績値)から,23,700まで増加する。
- イ 事業完成5年後の2024年に,浄水の濁度(NTU)が10~250(2013年実績。2013年年平均値は43)から,5まで低下する。
- ウ 衛生的な飲料水の供給により水因性疾患が減少する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)スーダン共和国政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能。)
- (3)技術協力「水供給人材育成プロジェクトフェーズ2」終了時評価調査結果要約表(PDF)
- (4)技術協力「州水公社運営・維持管理能力強化プロジェクト」案件概要表(PDF)