ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年10月13日
評価年月日:平成28年4月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原圭一
1 案件名
(1)供与国名
東ティモール民主共和国
(2)案件名
ディリ港フェリーターミナル緊急移設計画
(3)目的・事業内容
首都ディリの国際港において、既存のフェリーターミナルの移設・拡張を行うことにより、旅客・貨物輸送の安全で効率的な運用を図り、もって飛び地・離島へのアクセス向上及び海上輸送拡大を通じた経済活動の促進に寄与するもの。供与限度額は21.97億円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 施設整備に必要な建設予定地の整地及び旅客ターミナルビルの建設が東ティモール側によりなされる必要がある。
- イ 機材・施設の運用・維持管理に係る予算配分が東ティモール側によりなされる必要がある。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 東ティモール政府は,2030年までに上位中所得国になることを目標として2011年に戦略開発計画(Strategic Development Plan)を定めており,港湾セクターのインフラ開発は,その達成のための重点課題の一つとして位置付けられている。
- イ 現在,当国の国際港湾は首都にあるディリ港のみであり,同港は国際貨物船が寄港する港としての役割に加え,飛び地(オエクシ)及び離島(アタウロ島)の住民,生活必需品を運ぶフェリーが寄港する港として,最重要運輸インフラの一つとなっている。同港におけるコンテナ取扱量は,2003年には2万TEU(twenty-foot equivalent unit/20フィートコンテナ換算)であったが,2012年には4.5万TEUを記録するなど,近年の伸びが著しく,2020年頃までにPPP方式(官民が連携して公共サービスの提供を行う方式)にて首都近郊(ティバール)に貨物専用の新港を整備する計画を進めている。
- ウ 現在の旅客フェリーターミナルは,コンテナヤードに近接しているため,旅客の乗降時に,貨物の積み下ろしや運搬作業を停止している。また,貨物船の着岸,荷役作業時や低潮位時には,フェリーの着岸を著しく制限して運用しているため,フェリーの接岸可能時間は2014年実績値で1日当たり3時間となっている。このように,旅客・貨物輸送の安全性・効率性が阻害されており,旅客・貨物輸送の安全で効率的な運用を図るため,旅客フェリーターミナルと貨物コンテナヤードの分離は早急な対応が必要な課題である。また,右フェリーターミナルの容量は,現在運航しているフェリー1隻に対応したものであるが,同フェリー1隻では,定員超過状態での運航を余儀なくされているなど,住民の移動及び生活物資の輸送能力の限界に達している。これを受け,当国政府は2016年,2017年にフェリーを各1隻導入する予定である。このため,3隻のフェリー着桟に対応する旅客ターミナルの整備が必要不可欠である。
- エ また,JICAが実施中の技術協力「ディリ都市計画策定プロジェクト」(2014年~2016年)において,ディリ港は,2020年から(ア)国内外の旅客輸送を中心とした港湾として開発,(イ)バスへの乗り換えなど交通結節点として整備,(ウ)観光拠点として整備する計画などを提案しており,将来の旅客専用港としてのディリ港拡張の基盤整備が必要である。
(2)効率性
- ア プロジェクトサイトの水深や恒風方向,既存の埠頭との距離及びこれらを考慮した操船性等を考慮して,桟橋やプラットフォームの方向,位置及び構造等を設計した。
- イ ドイツのコンサルタント会社が行った需要予測の結果や,今後の東ティモール政府のフェリー購入計画を考慮し,それらに対応可能な設計とした。ランプウェイが前開きのフェリーと横開きのフェリー両方に対応できる設計とした。
(3)有効性
本件の実施により、以下の成果が期待される。
- ア フェリーの接岸可能時間の増加
基準値(2014年)3時間/日→目標値(2021年:事業完成3年後)24時間/日 - イ 既存航路旅客数の増加
ディリ-アタウロ航路
基準値(2014年)21,000人/年→目標値(2021年:事業完成3年後)28,000人/年
ディリ-オエクシ航路
基準値(2014年)44,000人/年→目標値(2021年:事業完成3年後)71,000人/年 - ウ 定性的効果
2隻同時着岸と24時間/日の接岸が可能となり,フェリーの運航スケジュール立案の自由度が増し,旅客の需要に柔軟に対応可能となる。その結果,今後計画されている地方航路(ディリ-カラベラ,コム)やインドネシア領クパンへの航路(ディリ-オエクシ-クパン)への対応が期待できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)東ティモール民主共和国政府からの要請書
- (2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)