ODA(政府開発援助)

平成28年9月28日

評価年月日:平成28年2月9日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

ボリビア多民族国

(2)案件名

ラグナ・コロラダ地熱発電所建設計画(第二段階)

(3)目的・事業内容

 ボリビア南部のポトシ県に地熱発電所建設等を行うことにより,電源の多様化,増加する電力需要への対応及び気候変動の緩和への貢献を図り,もって地方開発等を通じた生産力向上に寄与する。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事
    • コンサルティングサービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    614.85億円 0.3% 40(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,2007年8月に要請が接到したものであるので,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月制定)が適用される。本計画は,右ガイドラインに掲げる火力発電(地熱)セクター及び影響を受けやすい地域(国指定の保護対象地域)に該当するため,カテゴリAに該当する。
 本事業に係る環境影響評価(EIA)報告書は,2010年9月に環境・水資源省に承認された。環境ライセンスは毎年更新される必要があるが,2015年9月7日に更新されており,2016年9月7日まで有効であることが確認されている。
汚染対策
 汚染対策については,工事中及び供用後の坑井掘削により発生する汚泥は,金属製ピットに貯留され,有害物質を含むものはセメント固化後,処分場にて処理される。冷却塔からの排ガスに含まれる硫化水素の濃度は,冷却塔の高さの調整等により国際基準を満たす見込み。また,発電のために地下から汲みあげられる熱水は,浸透防止策を講じた貯水池に一時的に貯水し,還元井を通して貯留層に戻すため,地下水への負の影響は想定されない。ボリビア電力公社(ENDE)は地下水状況の予備調査を実施済みであるが,更に追加調査を行い,必要性が確認された場合はENDEにより追加的な緩和策が実施される予定。
自然環境面
 本計画対象地はラムサール条約登録湿地及びエドゥアルド・アバロア国立保護区内に立地するが,ボリビア国内法令等により,自然保護地域内での開発行為に関して審査を受け2010年に承認されている。パイプラインと交差する動物用通路の確保や水域周辺の植生除去の禁止等の緩和策が実施される予定である。また,送変電設備建設(米州開発銀行(IDB)が協調融資検討中。)に関しては,当該地域に生息するフラミンゴへの適切な配慮の一環として,IDBによるフラミンゴの生態調査結果等に基づき,ENDEが送電線ルートの変更等を検討中である。これにより,IDB及び国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインの要件を満たす見込みである。
社会環境面
 本事業の地域は,国有地であるため,用地取得及び住民移転は想定されない。送電用地が確定次第,国内法に基づき必要な使用手続きを行う。また,地下資源のコンセッションは国が保有していることを確認済みである。
その他・モニタリング
 大気質,水質,騒音・振動,生態系等のモニタリングは,工事中はコントラクターが行い,供用後はENDEが行う予定である。また,社会経済面のモニタリング(地元からの雇用者人数等)は,ENDEが実施予定である。なお,パイロットプラント建設については,現在環境レビューを実施中である。
外部要因リスク
 特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ボリビアは,国民の45%以上が貧困層に属し,南米で最も所得水準が低く,所得格差が大きい国の一つであり,開発ニーズは依然として高い。ボリビア政府の「電力計画2025」によると, 2012年から2025年までの電力需要増加率は,一人当たり年平均11%と見込まれており,2025年には3,498.8MWの発電能力が必要と見込まれている。かかる需要増加に対応するため,1,564.2MW(2012年)の発電能力を4,353MW(2025年)へ増強する計画である。また,同計画において,電源多様化に向けて,代替エネルギー(バイオマス,風力,地熱等)を1%(2015年)から4%(2025年)とすることを目指している。
我が国の基本政策との関係
(ア)
平成27年度開発協力重点方針において,対南米支援の重点課題として「再生可能エネルギー」及び「インフラ整備」を含めている。
(イ)
平成24年6月策定の対ボリビア国別援助方針においては,「貧困削減を通じた持続的経済成長の実現に向けた支援」を援助の基本方針(大目標)とし,「(i)人材育成を中心とした社会開発」及び「(ii)地方開発等を通じた生産力向上」を重点分野(中目標)として設定している。本計画は,重点分野である地方開発等を通じた生産力向上に合致する案件である。

(2)効率性

 本計画は,円借款では発電設備等の建設を行うが,IDBが送電線建設を分担することにより,目的の効率的な達成を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により,再生可能エネルギー等の導入に伴う電源多様化,安定的な電力供給(事業完成2年後(2024年)には年間送電端電力量824.51GWh(2014年実績値0GWh)が見込まれる。)による鉱業開発の事業リスク低下,経済開発促進,気候変動の緩和(年間約32万トン(二酸化炭素換算)の温室効果ガス排出削減が見込まれる。)等の効果が見込まれ,もって地方開発等を通じた生産力向上に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,ボリビア国別評価報告書,JICA環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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