ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年9月23日
評価年月日:平成28年6月15日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
キューバ共和国
(2)案件名
主要病院における医療サービス向上のための医療機材整備計画
(3)目的・事業内容
本計画は,キューバの主要病院において医療機材の供与を行うことにより,同国におけるがんの診断及び低侵襲治療の強化を通じた保健医療サービスの質の向上を図り,もって持続可能な社会・経済開発に寄与するもの。
供与限度額は12億7,300万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がキューバ共和国政府により実施される必要がある。
- ア 本計画により整備される機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
- イ 関連活動に必要な人的手当て及び予算措置を行うこと。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア キューバの生涯がん罹患リスク,生涯がん死亡リスク及び5年再発率は,中南米地域の平均よりも高い水準にあり,がんは2007年以降循環器系の疾患を超えて同国の死亡原因の1位となっている。キューバ政府は「国家がん対策戦略」を2013年に策定の上,平均余命の延伸に伴い増加するがん患者に対する迅速かつ的確な医療サービスの提供を目指し,がん診療サービスの体制強化に向けて取り組んでいる。
- イ しかしながら,キューバでは外貨不足による財政難の影響で,医療機材の恒常的な不足や老朽化が常態化し,がん診断・治療についても適切な対応が十分にできていない。がん診断に必要な医用画像診断については,X線撮影の検査に数日間の待ち時間を要するため迅速な診断ができていない。また,病理検査機材の不足によりがん診断に必要な病理検査の実施が困難である。さらに,がん治療の際,患者の病態に応じた負担の少ない適切な内視鏡下手術が実施できていない。このことから,がんの診断及び低侵襲治療に必要な医療機材の整備は急務である。かかる状況から,キューバ政府から,同国内主要病院におけるがんの診断及び低侵襲治療のための医療機材の供与に係る支援の要請があったものであり,実施の必要性は高い。
- ウ 我が国は,対キューバ国別援助方針において,「農業開発」及び「持続可能な社会・経済開発」を重点分野としており,本計画は,重点分野「持続可能な社会・経済開発」で言及している「官民連携型の協力も期待できる保健医療分野」に合致する。
(2)効率性
医療機材の校正やデジタル医用画像の読影技術の向上等に関する支援を技術協力「医療機器保守管理・診断能力強化プロジェクト」を通じて実施し,本件の効率的な実施を図る。
(3)有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 主要24病院における医用画像診断機材の整備により,一般X線の年間撮影枚数が889,365枚(2013-2015年平均値)から,1,422,983枚(2020年:事業完成3年後)に増加する。
- イ 主要17病院における病理検査機材の整備により,生検検査の年間件数が83,727件(2013-2015年平均値)から,133,964件(2020年:事業完成3年後)に増加する。
- ウ 主要6病院における低侵襲医療機材の整備により,上・下部内視鏡,腹腔鏡下の年間手術件数が5,149件(2013-2015年平均値)から,8,239件(2020年:事業完成3年後)に増加する。
- エ 低侵襲手術の実現により,診断・治療にかかる時間が大幅に短縮され,患者や家族の負担軽減による満足度が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)キューバ政府からの要請書
- (2)キューバ国別評価報告書
- (3)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (4)対ニカラグア「ボアコ病院建設計画」事後評価書(JICAを通じて入手可能)