ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年9月7日
評価年月日:平成28年7月1日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
タジキスタン共和国及びアフガニスタン・イスラム共和国
(2)案件名
災害リスク軽減及び対応能力強化計画(UNDP連携)
(3)目的・事業内容
本計画は,タジキスタン全土及びアフガニスタン北部山岳地域において,災害対応マニュアルや防災関連インフラ・機材を整備するとともに,タジキスタン及びアフガニスタンの災害対応関係機関職員等への研修を実施することにより,防災インフラ機能及び災害対応能力の向上を図り,もってそれら各国の地方開発に寄与するもの。供与額は11億7,200万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
タジキスタン・アフガニスタン国境地域については,治安情勢の急変にも留意しつつ案件を実施する必要がある。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 国土の93%を山地に被われているタジキスタン及び山岳地域に位置するアフガニスタン北部では,近年,猛暑による氷河熔解等に起因する洪水,土砂流,地震等の自然災害による被害が発生しており,経済損失のほか,村落部では生活環境に多大なる影響を及ぼしており,貧困からの脱却を妨げる要因ともなっている。
- イ タジキスタン政府は非常事態・民間防衛委員会及び経済発展貿易省が災害対策に取り組んでいるが,災害リスク軽減のための対策が不十分である。またアフガニスタン政府も「国家発展戦略」において災害対応能力強化を掲げ,災害管理庁が災害対策に取り組んでいるが,アフガニスタン北部の国境付近地帯は山岳部のため,国内主要都市からのアクセスが難しく,より近郊のタジキスタン領土内から被災地にアクセスし救助活動を行うための体制構築が地域的課題となっている。このため国連開発計画(UNDP)及びタジキスタン政府,アフガニスタン政府は,本件支援を今般我が国に要請するに至った。
- ウ 本計画は,タジキスタン全土及びアフガニスタン北部山岳地域において,災害対応マニュアルや防災関連インフラ・機材を整備するとともに,タジキスタン及びアフガニスタンの災害対応関係機関職員への研修を実施することにより,防災インフラ機能及び災害対応能力の向上を図り,もってそれら各国の地方開発に寄与するものである。
- エ 本計画により,タジキスタン及びアフガニスタン北部での災害対策機能・能力が強化され,タジキスタン全土及びアフガニスタン北部の地域住民の安全・生活の安定が保障されることで,タジキスタン及びアフガニスタンの「民生安定化」及び「人間の安全保障」に寄与し得るため,実施する意義は大きい。
- オ 平成27年3月に仙台にて実施された第3回国連防災会議において,日本側の貢献策として資金協力及び防災・復興人材育成を含む「仙台防災協力イニシアティブ」を発表した。また同年10月の安倍総理のタジキスタン訪問の際に発出された共同声明においても,防災を含む差し迫った地球規模課題の解決のために両国が協力する必要性につき言及されている。本件支援は,こうしたハイレベルの国際会議及び要人往来のフォローアップとしても位置付けられるため,大きな外交的効果が期待できる。
(2)効率性
全国レベルの災害リスク評価及び防災計画が未整備のタジキスタン及び治安情勢が不安定なタジキスタン及びアフガニスタンとの国境地域において効果的な支援を行うためには,タジキスタン国内で長年に亘り防災分野の事業実施経験を有し,また国境地域における事業実施経験もあるUNDPとの連携が効率的である。なお,防災分野の協力における国際機関との連携の重要性は「仙台防災協力イニシアティブ」及び「防災協力イニシアティブの評価」報告書(一般財団法人国際開発機構)でも言及されている。
(3)有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 災害リスク評価,小規模防災インフラ整備,災害リスク軽減マニュアル策定及び早期警報システム構築を実施することにより,タジキスタンにおける防災及び災害時の対応能力が強化され,対象地域住民計388万人(小規模防災インフラ整備対象地域住民約8万人,早期警報システム利用可能となる国内住民約380万人)に裨益する。
- イ 防災・避難計画策定のための会合,研修及び訓練を実施することで,会合や研修に参加するタジキスタン全土の避難救助隊員計約200人及び訓練に参加する国内各地のコミュニティ・ベース捜索救助隊員計約1,200人の能力が強化される。
- ウ 都市部での災害発生時の対策強化及び地方における災害発生時の物資供給源となる都市部の災害対応能力が強化されることで,対象地域の住民約51万人に裨益する。
- エ タジキスタン・アフガニスタン北部山岳部住民のための災害支援物資保管庫の設置及びタジキスタン・アフガニスタン両国間の避難救助隊相互協力促進のための研修を通じて,救助隊員計約220人の能力が強化される。また,これにより,相互協力体制の構築が図られ,より効率的・効果的な災害対策の実施が可能となることで,両国国境付近対象地域住民総計約35万人(アフガニスタン側バダフシャーン県内国境付近6郡の住民約14万人及びタジキスタン側ゴルノ・バダフシャン自治州の住民約21万人)に裨益する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)タジキスタン政府及びアフガニスタン政府からの要請書
- (2)UNDPからの要請書
- (3)「仙台防災協力イニシアティブ」
- (4)「防災協力イニシアティブの評価」報告書(一般財団法人国際開発機構)