ODA(政府開発援助)

平成28年8月31日

評価年月日:平成28年5月10日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件名

(1)供与国名

ネパール連邦民主共和国

(2)案件名

主要空港航空安全設備整備計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,トリブバン国際空港を含むネパール国内主要8空港において,航空安全設備等を整備することにより,航空機の目的地空港への誘導及び着陸の安全性の向上を図り,もってネパールの持続可能で均衡のとれた経済成長のための社会基盤・制度整備に寄与するものである。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がネパール政府により実施される必要がある。

  • ア チャンドラガジ及びダンガジ空港における航空安全設備設置のための用地取得の予算措置がなされること。
  • イ 2015年9月以降数か月にわたりネパールで発生したインドとの国境封鎖に起因する深刻な燃料不足等が事業期間中に発生しないこと。

2 無償資金協力の必要性

(1)必要性

  • ア ネパールは,国内の約75%を急峻な山岳地帯により形成されており,その地形的特徴から,空路は重要な移動・流通手段であり,特に山岳地帯で空路の確保が国内移動手段として不可欠となっている。本案件の対象空港の一つであるトリブバン国際空港では,国際便の旅客数が138万人(2006年)から351万人(2014年)に急増し,その他,本事業対象7空港を含めた過去5年間の旅客数の増加率は平均9.5% となるなど,近年の経済成長を背景として航空需要が急速に拡大している。ネパール政府は国家開発戦略「第13次計画」において,民間航空システムの整備・拡張を通じた観光産業発展を掲げており,航空輸送に係る運用方針として,近代的な航行援助設備の設置,国際規範に準拠した運航の安全監視及び全ての航空機に対する検査の実施を掲げ,航空輸送の安全性向上に努めている。
  • イ しかしながら,トリブバン国際空港は周囲を高い山に囲まれており,世界で最も離着陸の難しい国際空港の一つとされている一方,航行援助設備が不十分であるため,航空機の着陸時の誘導精度及び運行率が低いという問題を有している。主要な地方空港であるダンガジ空港,チャンドラガジ空港には航行援助設備が設置されていないため,航空機の離着陸時の安全確保は目視等に頼らざるを得ず,パイロットの技量に依存せざるを得ない状況にある。また,ルクラ,ジョムソン,ジュムラ,ララ,シミコット等の主要山岳空港では,気象条件が急変しやすい状況にあるにもかかわらず,滑走路位置を示す航空灯火が全く設置されていない状況であり,航空安全上,早急の対応が必要な課題となっている。
  • ウ かかる状況から,ネパール政府は我が国に対して航空安全設備の整備に対する支援を要請したものである。
  • エ 本事業は,トリブバン国際空港を含む国内主要8空港において航空安全設備等を整備することにより,航空機の目的地空港への誘導及び着陸の安全性の向上を図り,もってネパールの持続可能で均衡のとれた経済成長のための社会基盤・制度整備に寄与するものであり,実施の必要性は高い。
  • オ なお,2012年度に実施した「ネパール国別評価」においても,「社会基盤・制度整備を最重点分野とすることが考えられる」と評価されているとともに,社会インフラの整備は日本の比較優位をいかした支援として活用が提言されており,今回の計画は同評価結果も踏まえたものとなっている。

(2)効率性

  • ア 対ネパール無償資金協力「トリブバン国際空港近代化計画」(2013-2015年)においてトリブバン国際空港の空港監視レーダー等の調達・据付けを実施しており,本事業で調達する離着陸に係る装置との連動が図られる予定。
  • イ また,対ネパール技術協力「補給管理センター及び航空路レーダー管制業務整備プロジェクト」(2014-2017年)によって整備される補給管理センターにおいて,本事業で整備される機材のスペアパーツの管理も行われる。

(3)有効性

 本件の実施により、以下のような成果が期待される。

  • ア トリブバン国際空港においてローカライザーを用いたより正確な進入が利用できる航空機数(便/年)が0機(2014年)から27,000機(2021年:事業完成3年後)に増加する。
  • イ 目的地空港まで 超短波全方向式無線標識/距離測定装置(VOR/DME)を用いた高精度航法にて飛行する国内線便数の割合が48.5%(2014年)から51.2%(2021年:事業完成3年後)に増加する。
  • ウ トリブバン国際空港におけるジェット機の滑走路利用可能率が89%(2014年)から95.5%(2021年:事業完成3年後)に増加する。
  • エ 航空保安施設・機材・電源の充実により,本事業の対象8空港における航空機運航の安全性が向上する。
  • オ 訓練環境の整備により,対象空港における航空機運航の安全性が向上する。
  • カ 飛行方式設計システムの導入により飛行方式設計業務の効率化・高度化の環境が整う。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ネパール政府からの要請書
  • (2)ネパール国別評価報告書
  • (3)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (4)対ネパール無償資金協力「トリブバン国際空港近代化プログラムにおける航空管制設備改善計画」の事後評価書(JICAを通じて入手可能)
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