ODA(政府開発援助)

平成28年7月27日

評価年月日:平成28年3月9日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男

1 案件名

(1)供与国名

エジプト・アラブ共和国

(2)案件名

エジプト日本科学技術大学教育・研究機材調達計画

(3)目的・事業内容

 エジプト日本科学技術大学(E-JUST)に対し,教育・研究用機材の供与を行うことにより,E-JUSTの教育・研究機関としての基盤強化を図り,もってエジプトと日本の産業界との連携の強化を通じた輸出振興・産業育成による,持続的経済成長と雇用創出の実現に寄与するもの。供与限度額は20億円。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 本計画は,エジプト側で建設中のエジプト日本科学技術大学(E-JUST)工学部8学科に対し,教育・研究用の機材の調達を主たる内容としており,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
  • イ エジプト政府により,(ア)工学部用新キャンパスの建設が計画通りに進められる,(イ)工学部8学科への教員配置,等の先方負担事項が確実に実施される必要がある。
  • ウ プロジェクト全体計画達成のための外部条件として,治安が急激に悪化しないことが挙げられる。

2 無償資金協力の必要性

(1)必要性

 エジプトは,近年国立大学における授業料の無償化により学生数が増加しており,これに伴い教員一人当たりの学生数も増加,教育の質の低下が深刻化している。エジプト国内の大学における講義は全般的に座学による理論中心で,実践的,先端的な教育を行う大学は限定的であり,研究面においても研究機材の不足等により,総じて大学の研究能力は高くない。このため理工系分野の優秀な学生は海外留学し,海外で就職することが多く,優秀な人材の頭脳流出は当該国の大きな課題となっている。

 エジプト政府は,「2022年までの経済・社会開発計画に関する戦略的枠組」の中で,その目標の一つとして高付加価値な産業構造の構築を掲げており,そのための人材育成戦略として,ア 高等教育における科学技術分野の重視,イ 製造業に従事する人材育成のための実践的手法の重視を挙げている。

 上記の高等教育セクターの課題に対応するため,2005年にエジプト政府は,同国内の既存大学とは異なる日本型工学教育の特徴を活かした「少人数,大学院・研究中心,実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトとした「エジプト日本科学技術大学(E-JUST)」の設立支援を我が国に要請した。2009年にエジプト政府及び我が国政府は「エジプト・日本科学技術大学の設置に関する日本政府とエジプト・アラブ共和国政府との間の協定(二国間協定)」を締結し,この中で両国政府がE-JUSTの設置及び運営を行っていくことに合意している。

 本計画は,この二国間協定での合意事項を実現すべく,新キャンパス内に開設される工学部の教育・研究用機材を整備するものであり,実施の妥当性・必要性は高い。

(2)効率性

 これまで日本政府は,上記2 (1)の高等教育セクターの課題に対応するため,技術協力プロジェクト「エジプト日本科学技術大学設立プロジェクト」(2008年~2014年)を通じてE-JUSTの工学系大学院設立支援を行い,同大学院は2010年に開設された。現在は技術協力プロジェクト「エジプト日本科学技術大学プロジェクトフェーズ2」(2014年~2019年)を通じ,工学系大学院の教育・研究能力の向上,産業界との連携促進,大学院の運営改善等に継続的に取り組んできている。

 本計画は,工学系大学院に引き続き,エジプト政府が2017年9月を目標に計画しているE-JUST工学部開設に向けた新キャンパス建設に合わせ,同工学部8学科要の教育・研究用機材の調達を実施するものであり,これまでの大学院への技術協力との相乗効果を図りつつ,E-JUSTの教育・研究機関としての基盤強化を図るもの。

(3)有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • ア 2017年と比し,事業完成4年後の2021年に,
    • (ア)新設される工学部8学科(電子通信工学科,コンピューター情報工学科,メカトロニクス学科,産業・製造工学科,材料工学科,エネルギー資源工学科,化学石油学科,電気エネルギー工学科)の教育・研究用機材が整備され,2,000名の工学部8学科在籍学生が,実験・実習や研究に基づく実践的な教育を受けられるようになる。
    • (イ)工学部8学科の実験・実習・研究時間の割合が18.6%から32.8%に増加する。
  • イ エジプト日本科学技術大学を卒業した優秀な人材がエジプトの産業界の発展に貢献する。
  • ウ 工学部への入学志願者数が増加傾向を示す。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)エジプト・アラブ共和国からの要請書
  • (2)協力準備調査の報告資料等,JICAから提出された資料
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