ODA(政府開発援助)
日本人の私たちだからこそ 世界のために今できること
世界中には飢えや貧困に苦しむ人が,まだまだたくさんいます。
むしろ,食料や飲み水が不足していたり,教育や医療を満足に受けられなかったりする国や地域が,世界の多くを占めているのが現状。
でも…話のスケールが大きすぎて,自分ができることが思い浮かばない人も多いハズ。
世界のために,学生の私たちにできることって?
「学校で世界の貧困問題を習ったことはあるけど,遠い国の話っていうイメージ。縁がないから,イマイチ実感がわかないんだよね……。」
「たしかに,そういう人が多いよね。じゃあこう考えてみて。1日200円で暮らす生活って想像できる?」
「に,200円!?だって,朝ごはんだけでも200円で収まらないのに,そんなのムリだよ!」
世界の現状その1
生きる上で最低限必要な1日の所得を数値化したのが,世界銀行が定める「国際貧困ライン」。現在は1日1.9ドル(日本円で200円程度)と設定されていますが,なんと,それ以下の所得で生活をしている人が世界に約7億人もいます。食料や住居すら不十分で,一家の生活が成立しない状況。何十年も昔の話ではなく,いま現在の世界の姿です。
世界の現状その2
「途上国」と聞くと,限られた少数の国というイメージがありませんか? 実は,世界中を見ると,経済と産業の発展がまだ進んでいない「途上国」に暮らす人々のほうが断然多いのです。その数は全人口の約74%。毎日ごはんを食べることができ,教育や医療を受けられる先進国のほうが少数派。私たちの生活は,決して当たり前ではないのです。
「し・・・知らなかった!世界が,そんなことになっているなんて!」
「だからこそ,日本は国として「開発途上国」を手助けしているの。それが,「開発協力」なんだよ!」
「開発?協力・・・・・・?一体,日本は何を手助けしているの!?」
開発協力とは?
開発協力とは,「開発途上地域の開発のために,政府及び政府関係機関が実施する国際協力活動」。つまり,平和構築や統治,基本的人権の推進,人道支援など,途上国のさまざまな“課題の解決”のために,資金や技術の提供を行っています。その分野は,感染症対策や人材育成,法制度の整備などさまざま。幅広い取り組みにより,世界に貢献しています。
「なるほど。すばらしい取り組みだし,日本ができることはすべきだと思う。でも,いまは国内も課題がいっぱいで,そんな余裕はない気がしちゃうけど・・・・・・。」
「世界の国々を援助することは日本のためでもあるの!」
開発協力による日本のメリット
日本経済も活性化
途上国に対してインフラ支援や整備などを行う際は,企業の協力が必要不可欠。結果,国内企業の海外進出を促し,海外案件の受注の増加につながることも少なくありません。また,途上国の人材を育成することは,未来のビジネスパートナーを育成することにもなるのです。
地球規模課題の解決
世界各地で起こる感染症や大気汚染などは,他人ごとではありません。国境を超えて,日本に影響を及ぼす可能性もあります。そういった地球規模の課題の解決につとめることで,問題の広がりを未然に防ぐことが可能。ひいては,日本を守ることにもなります。
日本のイメージアップに
支援によって日本の信頼が高まり,多くの親日的な国・地域から好意的な対応を得られているのも事実です。それを実感するのが日本のパスポート。本来,取得に時間がかかるビザがなくても入国できる国が多いのは,友好関係が良好であることの証しでもあります。
「開発協力が,日本にとっても大切だってことがわかったよ。国として,それだけ援助しているなら安心だね!」
「それが,国としての援助だけでは全然足りないの!より細やかで,より効果的な支援をするためにはみんなの協力も必要なの。」
「そのひとつにボランティアがあるね。たしかに学生のいまなら時間もあるし,人生経験としてもいいかもしれない」
「ボランティアは素晴らしいことだけど,ほかにも道はたくさんあるの。仕事として国際協力にたずさわることだってできるのよ!」
私たちにできる国際協力の形
国際協力の形はさまざま!仕事として対価をもらうものや,営利を求めないボランティア活動など自分にあった形を探せるの!そのうちの4つを紹介するね。
その国と向き合う 外務省・JICA等でのお仕事
外務省やJICAでは途上国の「いま」にじっくり向き合うことができます。途上国の人は,いま何に困っていて,何を求めているのかを考え,その上で日本はどうするべきかを判断し,実施する役割を担っています。地球の問題に向き合う,責任のあるお仕事です。
こんな人にオススメ!
ゼロからものを組み立てることが好きな人や,グローバルな視点でものを考えるのが得意な人におすすめ!開発協力の第一線で,大きな事業に携わり活躍することができます。
- 先輩体験談 「外務省」杉原さん
国際協力局政策課でODAの運用等を担当。JICAや関係省庁と協力した邦人の安全対策にも尽力。
「外務省の仕事は,何よりもスケールの大きさが魅力。自分が担当したことやいったことが,国の意思決定や行動につながる。そこに責任と同時に大きなやりがいを感じています。」
今自分にできることを! JICAボランティアでのお仕事
誰もが耳にしたことのある「青年海外協力隊」は,50年以上もの歴史を誇る日本を代表するボランティア。途上国の要請に基づいた人材が派遣され,現地の人々と生活を共にしながら一緒に課題解決を目指します。派遣期間は原則2年で,帰国後はその経験をキャリアにいかしつつ,それぞれの道へ進むことになります。
こんな人にオススメ!
人とのつながりを感じる仕事がしたい,自分の知識や経験をいかしたい,という人におすすめ。今自分が持っている技術でできる支援がきっと見つかります。
- 先輩体験談 「青年海外協力隊」小野田さん
「PCインストラクター」として中央アメリカのベリーズに派遣。協力隊で得たのは「サバイバル力」!
「現状を把握し,必要なことは何かを考え,行動する。この現状把握能力と行動力は現職でも役立っています。」
各分野の専門家として支える 国際機関でのお仕事
国連事務局,また国連児童基金(UNICEF),世界食糧計画(WFP)といった国連の下部機関,国連教育科学文化機関(UNESCO),世界保健機構(WHO)といった専門機関など,世界には国際機関が多数。専門性を生かし,世界の第一線で自分の能力を存分に生かせるだけでなく,ポストや赴任先も色々あるので,国際公務員として自分らしく働けます。
こんな人にオススメ!
国際機関では,高度な専門性を持った即戦力が必要とされます。自分の専門,能力を活用して国際貢献をしたい人におすすめ。世界の舞台で通用する働き方をしたい人にピッタリです。
- 先輩体験談 「国連児童基金(UNICEF)」山口さん
現在はニューヨークを拠点に各国を飛び回り,政府との交渉や資金調達などを担当。
「自分の強みを発揮できるのが国際機関の最大の魅力。少しでも「国際機関で働きたい」という気持ちがあるなら,とにかく飛び込んでみてください!(2015年インタビューより)。」
同じ志を持った仲間で協力 国際協力に取り組むNGO・NPOでのお仕事
NGO・NPOとは非政府組織として,開発,貧困,保健・衛生,教育・人材育成等の地球規模の問題に取り組む非営利の団体のこと。国際協力に取り組む日本のNGOの数は400以上の団体があると言われています。政府や国際機関とはまた違った視点で,世界の貧困や飢餓,環境などの問題と向き合い,なかなか行政の施策が行き届かない社会的弱者に寄り添いながら国際協力を行っています。
こんな人にオススメ!
ひとりひとりと向き合い現地の人と同じ思いで動きたいという人にはNGOやNPOでの活動がピッタリ。人々の生活,人生に寄り添う温かい活動によって,自分の行動が人の役に立つことを実感できます。
- 先輩体験談 「国際NGO(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」岡本さん
モンゴルで地元の公立学校を対象とした教育事業や,現地の緊急・復興事業に携わる。
「NGOはその気になって動けばできることが多いです。常に動き続け,やりたいことがあれば行動してみる。その行動に失敗はなく,すべてが成功か学びになると思っています。」
国際協力を仕事に!将来について考えてみよう
国際協力は,誰もが携われる身近なもの。途上国を支援したいという思いは,“仕事”を通じて形にすることもできるのです。自分の能力や気持ちが誰かを救う。そして,そのキャリアが自分の財産になる。そんな将来をちょっとだけ想像してみませんか?
漫画でわかりやすく学ぼう
「ODAガール&主夫ボーイ」は,就職を考え始めた大学3年のカップル・涼太と由紀の姿を描いた漫画。由紀は「青年海外協力隊に入りたい」という夢を涼太に打ち明けるが,彼女との結婚を考えている涼太は反対。そんな中,2人は由紀の父の赴任先・カンボジアへ。日本が実施してきた開発協力を目の当たりにした涼太は,心動かされていく。