ODA(政府開発援助)

平成27年8月27日

原稿執筆 在コンゴ民主共和国日本国大使館

「マタディ橋を考える会」

 アフリカ中部に位置し,世界第11位の面積とアフリカ第3位の人口を擁するコンゴ民主共和国。首都キンシャサに約1000万人の人口を抱えるこの国にとって,大西洋に面するわずかな海岸線と首都を結ぶ国道1号線は,物流の生命線である。
 広大な国土にはアフリカ第2の長さを誇るコンゴ河が流れている。国道1号線の渡河地点に架かるマタディ橋は,全長722メートル。当時まだ日本で建設中だった本州四国連絡橋の技術が活用された,アフリカ大陸初の長大吊り橋である。マタディ橋建設の成功はその後,日本の吊り橋建設技術の海外展開の第一歩となった。
 コンゴの政治的混乱により日本人が引き上げた後,マタディ橋を守り続けたのはバナナ・キンシャサ交通公団(OEBK)の職員たち。彼らを衝き動かしたのは,ともに働き,その技術と精神を伝えてくれた日本人が去った後は自分たちが維持管理しなければ,という責任感だった。そして彼らを日本から支えたのが,建設に携わった日本人で組織される「マタディ橋を考える会」であった。

支援プロジェクトスタート

 それから30年。紛争の時代を経て,治安も回復した2012年,日本の協力再開を待ち望むOEBK職員の声に応えJICAによる「マタディ橋維持管理能力向上プロジェクト」がスタート。日本人専門家が現地に入り,橋の点検・維持管理技術の向上,若手技術者の育成などの協力を実施した。2014年には無償資金協力「マタディ橋保全計画」が決定。ケーブルを除湿して腐食を防ぐ送気システムが導入される予定だ。コンゴと日本の友好の橋は,新たな技術と世代に引き継がれることになる。

コンゴと日本の「架け橋」へ

  マタディ橋の様子。
完成から30年以上経った今でも,
完成時同様の姿で物流を支えている。
  2013年,マタディ橋開通30周年記念式典にて。
垂れ幕には「ようこそ日本の皆さん」と書かれている。

 2014年9月にニューヨークで開催されたアフリカ地域首脳級会合スピーチで,安倍総理はマタディ橋のエピソードを紹介し,最後にこう述べた。「日本はインフラを作らせたら,長持ちするものを作る。もっと大切なことに,働く喜びや努力の尊さを,人々の心に残す。」マタディ橋が「架け橋」となり,今後も長く将来にわたりコンゴと日本の友好が続いていくに違いない。

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