ODA(政府開発援助)
難民・移民の救出に駆けつける 日の丸をつけた救急車
原稿執筆 在セルビア日本国大使館
国境の街に異変が

セルビア共和国の首都ベオグラード市から南東へ約330キロメートル,ディミトロブグラード市はブルガリアとの国境に位置する人口1万人程度の辺境の町です。この静かな町が,2015年の夏に大変な苦難に陥りました。シリアを始めとした中東諸国から西欧を目指す難民・移民が,ギリシャ,ブルガリアを経由してディミトロブグラード市に多数押し寄せたからです。セルビア政府は,これまで100万人以上の難民・移民が国内を通過したとしています。
救急車が足りない!
同市に流入した難民・移民の多くは,ブルガリア国境の険しい山間部を徒歩で移動するため,怪我を負うなどにより医療処置が必要な難民・移民が多数に上りました。そのため,同市に所在する唯一の医療機関であるディミトロブグラード診療所は,彼らに適切な処置を施すため精力的に対応してきましたが,患者数の急増により,既存の救急車のみでは,難民・移民への対応だけでなく市民からの緊急搬送要請への対応も迅速に行うことが困難な状況に陥りました。
日の丸を付けた救急車が活躍

このような状況を改善するために,日本の支援により新しい救急車が供与されました。これにより,難民・移民を搬送するために救急車を使用している際にも,市民の緊急搬送要請に応えることができます。また,難民・移民危機が解決した後にも,市民が安心した日常生活が送れるよう引き続き日の丸を付けた救急車が活躍することでしょう。引渡式にはセルビア政府関係者や市長だけでなく,多数の地域住民や子どもたちも駆けつけ,盛大な歓迎を受けました。
難民・移民だけでなく,受け入れる地域住民にも支援の手を!
難民・移民危機は未だ解決していません。現在においても4千名以上の難民・移民がセルビア国内に滞在しています。日本は,難民・移民問題が長期化してきたことに照らし,難民・移民に対して人道支援を実施するのみならず,彼らを受け入れるコミュニティの開発に対する支援も同時に進めていくことが大切だと考えています。
希望に満ちた未来へ

最後に,難民・移民の未来が希望に満ちたものとなること,そして,将来これらの人々が無事故郷に戻ることができる日が来ることを願って止みません。