ODA(政府開発援助)
紛争の歴史を乗り越えて
中部・北部紛争影響地域の公共サービス改善のための人材育成プロジェクト
原稿執筆 在コートジボワール日本国大使館/JICAコートジボワール事務所
南北分断が残した負の遺産
コートジボワールは世界一のカカオとカシューナッツの輸出量を誇る西アフリカの農業国。サッカーが強いことでも有名です。しかしこの国のもう一つの横顔として,2002年から十数年にわたる紛争の歴史があります。
紛争時代には国が南北に分断されたため,医療や教育,給水などの基礎的行政サービスは滞り,地方部の住民や貧困層は開発から大きく取り残される事態に。大統領選挙後,2011年1月に生じた内戦は同年4月に終結しましたが,国内格差の拡大と,異なる社会グループ間の対立,行政に対する住民の信頼低下など,大きな負の結果をもたらしました。
住民間の和解と行政の信頼回復に向けて
プロジェクトは(実施期間2013年11月~2017年4月)は,紛争終結後の同国において,行政の基礎的社会サービスの提供機能を回復するとともに,住民間の和解と共存を促進することを目的に開始されました。
対象地域は,南北分断時代の北側の中心都市であったブアケ市と,同市があるベケ州自治体。小学校や井戸施設の整備を行う「パイロット事業」を通じ,現状調査による住民ニーズの把握,住民との合意形成による事業選定,中央政府と地方政府との調整機能の確立,施工業者の公正な調達と施工監理など,住民ニーズに適切に応える公共サービスを提供するために必要な一連の機能を地方行政官が果たせるよう,日本人専門家による技術支援が行われました。
住民と行政が手を携えて
プロジェクトの結果,ベケ州内の全9か所の市町村において,小学校11校,井戸施設建設77か所の建設・改修が実現しました。また,建設された学校や井戸施設を住民が主体となって維持管理・活用できるよう,行政の支援のもと,住民委員会も組織され,住民自ら料金の徴収方法などを決められるようになりました。
プロジェクト終了のセレモニーで行政官や住民から「私たちは世の中から取り残されたわけではない」,「日本は我々の力でコミュニティを作っていく方法を一緒に考えてくれた」と感謝の言葉をいただき,そして「この方法を持続的に実践していくのは,我々の責任である」と決意が述べられました。
この国の紛争の歴史は,これだけで乗り越えられるほど浅いものではありませんが,プロジェクトが与えた勇気と知恵,そして日本から学んだ経験は,今後の自発的なコミュニティづくりの基礎となっていくことでしょう。