外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

2 サブサハラ・アフリカ地域情勢と日本の取組

(1)アフリカ連合(AU)

第26回AU総会が1月にアディスアベバ(エチオピア)で開催され、チャドが2016年のAU議長国に選出された。日本からは木原外務副大臣が同総会に先立って開催された第28回AU閣僚執行理事会に、また、河井総理大臣補佐官が同総会にそれぞれ出席し、多くのアフリカ諸国要人と会談を行い、TICAD VIに向け協力していくことなどを確認した。

7月にキガリ(ルワンダ)で開催された第27回AU総会では、AUの事務局であるAU委員会の委員長選挙が実施されたが、いずれの候補者も当選に必要な票数を獲得できなかった。2017年1月に開催された第28回AU総会において再度委員長選挙が実施され、ムーサ・ファキ・チャド外務・アフリカ統合大臣が選出された。

2017年3月には、2018年をめどにAU日本政府代表部を開設することが決定された。

(2)東部アフリカ地域

東部アフリカ地域
ア ウガンダ

ウガンダは、東アフリカの主要国の1つであり、安定した内政に加え、石油開発が見込まれるなど貿易・投資面からの高い潜在性も有している。2月に行われた大統領選挙の結果、ムセベニ大統領が再選を果たした(5期目)。5月の大統領就任式には、日本から総理特使として田中衆議院議員(日・アフリカ連合(AU)友好議員連盟副会長)が出席した。また、8月のTICAD VIの際には、日・ウガンダ首脳会談を実施し、経済分野を始めとする両国の友好協力関係を一層強化していくことで一致した。

イ エチオピア

エチオピアでは、7月頃から国内各地で政府への抗議運動が散発的に発生したことを受け、10月にハイレマリアム首相が非常事態宣言を発表、11月に新内閣が組閣された。その一方で、堅調な経済成長を継続し、工業化への経済構造転換を進めている。

日本との関係では、1月に河井総理大臣補佐官が第26回AU総会の機会にエチオピアを訪問し、ハイレマリアム首相との会談が行われた。7月には、アディスアベバの日本貿易振興機構(JETRO)事務所が再開され、日本企業の活動を一層後押しする体制が整った。さらに、9月の国連総会の際に、岸田外務大臣とテドロス外相との間で外相会談が行われ、経済関係の強化や「カイゼン」を通じた人材育成分野での協力について議論が行われた。

JETROアディスアベバ開所式(7月20日、エチオピア・アディスアベバ)
JETROアディスアベバ開所式(7月20日、エチオピア・アディスアベバ)
ウ ケニア

東アフリカの玄関口であり同地域の経済を牽引(けんいん)するケニアは、ケニヤッタ大統領の安定した政権運営の下、堅調な成長を続けている。一方で、ソマリアを拠点に活動するアル・カーイダ系イスラム過激派組織アル・シャバーブによるテロの脅威や一般犯罪への対策が課題となっている。

日本との関係では、7月の国連安保理公開討論の機会に岸田外務大臣とアミナ外務長官等との朝食会が行われた。また、8月のTICAD VIの機会に、安倍総理大臣は国賓としてケニアを訪問し、ケニヤッタ大統領との首脳会談を行い、日・ケニア共同声明を発表した。両首脳は、同会談の機会を捉え、日・ケニア投資協定の署名及びモンバサ経済特区に関する覚書の署名を行うなど、二国間関係が大きく前進した。TICAD VIの機会には、日・ケニア外相会談も行われた。また、11月には大島理森衆議院議長の招待でムトゥリ国民議会議長が訪日し、安倍総理大臣に表敬するなど、要人往来も活発に行われた。

安倍総理大臣のケニア国賓訪問(上:歓迎行事、下:共同記者発表)(8月26日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣のケニア国賓訪問(上:歓迎行事、下:共同記者発表)
(8月26日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
エ ジブチ

ジブチは、ヨーロッパから地中海、スエズ運河、紅海を経由し、インド洋、アジアを結ぶ重要な海上交通路の要衝に位置している。4月には大統領選挙が実施され、現職のゲレ大統領が再選した(4期目)。

日本は、2009年からソマリア・アデン湾において海賊対処行動を実施しており、2011年には自衛隊活動拠点の運用を開始した。自衛隊を含む各国部隊の活動は同海域における海賊等事案の発生件数減少に大きく貢献している。2016年5月には小野寺五典衆議院議員(日本・ジブチ友好議員連盟会長)が総理特使としてゲレ大統領の就任式典に出席したほか、8月のTICAD VIの機会には日・ジブチ首脳会談が実施されるなど、二国間関係は一層強化された。

安倍総理大臣発の親書をゲレ・ジブチ大統領に手交する小野寺総理特使(5月8日、ジブチ)
安倍総理大臣発の親書をゲレ・ジブチ大統領に手交する小野寺総理特使(5月8日、ジブチ)
オ セーシェル

115の島から成る島嶼(とうしょ)国のセーシェルは、インド太平洋の中心に位置し、アフリカとアジアをつなぐ要衝である。4月に憲法改正が行われ、大統領の任期が3期から2期になったことを受け、同年10月、既に3選を果たしていたミッシェル大統領が退任、フォール副大統領が新大統領に昇格した。

カ ソマリア

ソマリアでは、内戦からの再建に向けた取組が進められており、国際社会は、2016年の連邦議会選挙に際して政治プロセスや国内の治安改善に向けた支援を実施し、2017年2月、大統領選挙が平和裏に行われた。干ばつの影響による人道危機の発生や、イスラム過激派組織のアル・シャバーブ(AS)の活動は継続しており、その脅威はケニアを含む周辺諸国に及んでいるものの、ソマリア国軍とアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)により、安定化に向けた取組が進んでいる。

キ マダガスカル

マダガスカルでは、2009年の政変以降、民主化プロセスに時間を要したものの、ラジャオナリマンピアニナ大統領が2016年4月にマハファリ首相を任命して新内閣を発足させて以降、政治情勢は相対的に安定している。

8月のTICAD VIの際には、日・マダガスカル首脳会談が実施され、日本企業の投資支援などを含む二国間関係の強化について確認した。

ク 南スーダン

南スーダンでは、4月、前年に署名された「南スーダンにおける衝突の解決に関する合意」に基づき、反主流派のマシャール前副大統領が第一副大統領に就任し、国民統一暫定政府が発足した。しかし、7月に首都ジュバで衝突が発生し、マシャール第一副大統領は国外に退避した。キール大統領は、7月に反主流派から就任したタバン・デン第一副大統領等と協力しつつ、合意履行や国民対話の準備に取り組んだ。

日本は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への自衛隊の派遣等を通じ、南スーダン政府による平和と安定の定着と国造りに向けた取組に寄与した。なお、2017年3月、自衛隊の施設部隊については5月末をめどに活動を終了することが決定された(3-1-3(2)参照)。

(3)南部アフリカ地域

南部アフリカ地域
ア アンゴラ

アンゴラは、豊富なエネルギー・鉱物資源を背景に、高い経済成長を遂げてきた。しかし、近年の油価の下落により、経済が停滞していることから、石油一辺倒ではなく、産業の多角化を重視してきている。

2016年は、日本とアンゴラが外交関係を樹立してから40周年に当たり、3月には、ドス・サントス国会議長が訪日し、安倍総理大臣を表敬した。また、2016年の1年間、日本と共に国連安保理非常任理事国を務め、国際場裏においても協力関係を構築している。

ドス・サントス・アンゴラ国会議長と握手を交わす安倍総理大臣(3月22日、東京 写真提供:内閣広報室)
ドス・サントス・アンゴラ国会議長と握手を交わす安倍総理大臣(3月22日、東京 写真提供:内閣広報室)
イ ザンビア

独立以来内政が安定しており、南部アフリカの安定勢力と言われるザンビアは、近隣諸国の和平への仲介、難民受入れ等、地域の平和と安定に積極的に貢献している。8月の大統領選挙の結果、現職のルング大統領が再選を果たした(2期目)。産業構造の多角化及び外国投資の誘致を引き続き最優先の経済政策として掲げており、安定した内政と豊富な鉱物資源の存在という特性から、日本企業からの投資が期待されている。

ウ ジンバブエ

ジンバブエでは、現在6期目のムガベ大統領の下で、種々の産業振興策が実施されている。しかし、慢性的な貿易赤字や外国直接投資の不足、逼迫(ひっぱく)した財政等の問題を抱えている。

3月にムガベ大統領が訪日し、安倍総理大臣との間で首脳会談が行われ、共同声明が発表された。安倍総理大臣からは、本格的な二国間経済協力としては15年ぶりとなる前年の無償資金協力に続き、同国による開発努力及び投資環境整備を引き続き支援していくこと等が表明された。

エ 南アフリカ

南アフリカは、サブサハラ・アフリカにおける経済大国として、また同地域へのビジネス展開の拠点として、日本企業を含む外国企業から引き続き注目されている。

2月には、経団連が南部アフリカ経済ミッションを派遣し、ラマポーザ副大統領を始めとする主要閣僚と懇談を行った。また、8月のTICAD VIの際に、安倍総理大臣はズマ大統領と首脳会談を実施し、雇用創出や人材育成の分野での協力を表明した。

オ モザンビーク

モザンビークは、石油・天然ガス等のエネルギー資源が豊富であり、日本を含めた外国企業の投資先として非常に注目されている。これら外国資本による資源開発により、穏やかな経済発展を遂げている。

8月のTICAD VIの際には、日・モザンビーク首脳会談が実施され、2017年の日本・モザンビーク外交関係樹立40周年に向けて、二国間関係の更なる発展を相互に確認した。

ニュシ・モザンビーク大統領と会談する安倍総理大臣(8月26日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
ニュシ・モザンビーク大統領と会談する安倍総理大臣(8月26日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
カ レソト

南アフリカ共和国に囲まれた内陸国であるレソトは2016年に独立50周年を迎え、独立記念日(10月4日)には首都マセルで記念式典が行われた。

この節目の年の11月に、レツィエ3世国王及びマセナテ王妃両陛下が初めて日本を訪問した。国王王妃両陛下は訪日中に東京のほか、地方も視察した。特に両陛下が東北地方の被災地を視察したことは、被災地の復興状況を国際的に発信する機会となった。

レツィエ3世レソト国王及び王妃両陛下による復興記念樹の植樹(11月26日、福島県相馬市)
レツィエ3世レソト国王及び王妃両陛下による復興記念樹の植樹(11月26日、福島県相馬市)

(4)中部アフリカ地域

中部アフリカ地域
ア コンゴ民主共和国

アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国は、東部地方で近隣諸国の反政府武装勢力が活動するなどの課題を抱えており、現在も国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)が展開している。

12月、次期大統領選挙の日程が未確定のまま、カビラ大統領は任期満了となったが、同大統領は職にとどまった。与野党間で12月31日に結ばれた政治合意を基に2017年中の選挙実施に向けた協議が行われている。コンゴ民主共和国の安定と成長は、周辺地域の発展にも大きく貢献すると考えられることから、日本は、平和の定着のため、国連機関と連携して警察民主化研修を実施しているほか、インフラ整備や環境保全活動を実施している。

イ サントメ・プリンシペ

サントメ・プリンシペでは、7月から8月にかけて行われた大統領選挙において、元首相のカルヴァリョ候補が当選した。日本は、今次大統領選挙に際し選挙監視員の派遣を行った。

12月、同国は、約20年続いていた台湾との外交関係を終了し、中国との国交を回復した。

ウ 赤道ギニア

赤道ギニアでは、4月の大統領選挙で5選目を果たしたンゲマ大統領が8月のTICAD VIに出席し、安倍総理大臣との首脳会談を実施した。ンゲマ大統領は、人材育成や政策面での協力など日本の支援への感謝の意を述べた。

エ チャド

チャドは、周辺国への国連PKOやテロ対策のために多数派兵しており、また、周辺国から多くの難民を受け入れるなど、地域の安定に大きく貢献している。4月の大統領選挙では、現職のデビー・イトゥノ大統領が再選(5期目)した。

2016年のAU議長である同大統領は、5月、G7伊勢志摩サミットにおけるアウトリーチ会合に参加するために訪日し、安倍総理大臣との間で日・チャド首脳会談を行い、日・チャド共同声明を発出した。8月のTICAD VIで、同大統領は安倍総理大臣やケニヤッタ・ケニア大統領等と共同議長を務め、会議を成功に導いた。

デビー・イトゥノ・チャド大統領と握手を交わす安倍総理大臣(5月28日、愛知県名古屋市 写真提供:内閣広報室)
デビー・イトゥノ・チャド大統領と握手を交わす安倍総理大臣(5月28日、愛知県名古屋市 写真提供:内閣広報室)

(5)西部アフリカ地域

西部アフリカ地域
ア ガーナ

アフリカにおける「民主主義の優等生」として知られるガーナでは、12月に行われた大統領選挙で、野党候補のアクフォ=アド元外相が選出された。2017年1月に行われた大統領就任式には、総理特使として坂井学衆議院議員(日本・ガーナ友好議員連盟会長)が出席した。

日本との関係では、マハマ大統領が5月に訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を行い、経済協力を含む共同声明が発出された。8月のTICAD VIの機会にもマハマ大統領は安倍総理大臣と首脳会談を行った。

イ ガンビア

6月のTICAD VI閣僚級準備会合の開催国となったガンビアでは、12月に大統領選挙が実施され、20年以上大統領を務めた現職のジャメ大統領を破り、バロウ候補が当選した。ジャメ大統領は一時、選挙結果の受入れを拒否したが、2017年1月、西アフリカの地域諸国が主導する調停を受け入れてガンビアを出国し、政権移行が実現した。

ウ ギニア

2014年から2015年にかけてエボラ出血熱が大流行したギニアでは、2015年12月末にコンデ大統領が再選を果たし(2期目)、2016年1月にユラ首相を首班とする内閣が発足した。

8月のTICAD VIにはコンデ大統領が出席し、安倍総理大臣との首脳会談を行い、エボラ出血熱禍からの復興・発展に向けた開発協力の推進などで一致した。

エ コートジボワール

近年安定的な経済成長を遂げているコートジボワールでは、副大統領職及び上院の創設等を盛り込んだ新憲法が国民投票を経て11月に公布された。一方、治安面では、3月にアビジャン郊外においてホテル襲撃事件が発生するなどイスラム過激派によるテロの拡散が懸念された。

日本は、3月に木原外務副大臣を団長として、民間企業13社を含むアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションを派遣した。8月のTICAD VIの機会に、ウワタラ大統領は安倍総理大臣と首脳会談を行い、両首脳間で二国間投資協定の交渉開始が宣言された。

オ ナイジェリア

ナイジェリアにおいては、ブハリ大統領が同国北東部でテロ行為を繰り返すイスラム過激派組織ボコ・ハラムの掃討に取り組み、一定の成果を出している。その一方で、アフリカ最大の産油国である同国では、資源価格の下落により経済情勢が悪化している。

8月のTICAD VIの機会には、ブハリ大統領が安倍総理大臣と首脳会談を実施し、ナイジェリアの投資環境整備の重要性等につき意見交換を行った。

カ セネガル

西アフリカの安定勢力であるセネガルは、2016年から2年間、日本と共に国連安保理非常任理事国を務めている。

日本との間でも二国間協力及び国際社会における協力が一層強化された。7月の国連安保理公開討論の機会には、岸田外務大臣とンジャイ外務・在外セネガル人相等との朝食会が行われた。翌8月には、ンジャイ外相が訪日し、岸田外務大臣との会談を実施した。また、同月のTICAD VIの際にはサル大統領と安倍総理大臣が首脳会談を実施した。

12月には、武井俊輔外務大臣政務官が「第3回アフリカの平和と安全に関するダカール国際フォーラム」に出席し、「積極的平和主義」に基づく国際社会の平和と安定への貢献を一層進めていく方針をアピールした。

キ ベナン

西アフリカにおける民主主義の模範と言われるベナンでは、3月に大統領選挙が平和裏に実施され、タロン大統領が選出された。4月に行われた大統領就任式には、総理特使として奥野信亮衆議院議員が出席した。また、8月のTICAD VIの機会にはタロン大統領が安倍総理大臣と懇談を行った。

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