外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

各論

1 第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の開催

(1)対アフリカ外交の柱としてのTICAD VI

TICADは、日本が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催するアフリカの開発に関する国際フォーラムである。1993年以降、アフリカの「オーナーシップ(自助努力)」と日本を含む国際社会との「パートナーシップ」を基本理念として開催されてきた。

これまでTICAD首脳会議は5年に1度日本で開催されてきたが、アフリカ側の意向を受け、第6回会議以降は3年に1度、アフリカと日本で交互に開催していくこととなった。これを受け、2016年8月27日から28日まで、TICAD VIがナイロビ(ケニア)で開催された。

TICAD VI集合写真(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
TICAD VI集合写真(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)

(2)TICAD史上初のアフリカ開催

3月にはジブチにおいてTICAD VI高級実務者会合が、6月にはバンジュール(ガンビア)においてTICAD VI閣僚級準備会合が開催された。閣僚級会合には日本から濵地外務大臣政務官が出席し、TICAD VIの成果文書について意見の集約が図られた。

8月に開催されたTICAD VIは、サイドイベントを含めた全体で約1万1,000人の参加を得て、これまでで最大規模の会議となった。日本からは安倍総理大臣が首席代表として出席し、開催国ケニアのケニヤッタ大統領及びAU議長国チャドのデビー・イトゥノ大統領と共に共同議長を務めた。

TICAD VIで基調演説を行う安倍総理大臣(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
TICAD VIで基調演説を行う安倍総理大臣(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)

今回のTICAD VIでは、①経済の多角化・産業化、②強靱(きょうじん)な保健システムの促進及び③社会安定化促進を優先分野とし、開会セッションにおいては、安倍総理大臣から、2016年から2018年までの3年間で、日本の強みである質の高さ(クオリティ)を生かした約1,000万人への人材育成(エンパワーメント)を始め、官民総額300億米ドル規模の「アフリカの未来への投資」を行うことを発表した。具体的には、①経済の多角化・産業化については、約100億米ドルの「質の高いインフラ投資」の実施に加え、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative:ABEイニシアティブ)」を拡充し、即戦力となる技能系人材やマネジメント人材の育成を新たに加えた取組として「ABEイニシアティブ2.0」を発表した。②強靱な保健システム促進については、G7伊勢志摩サミットの成果である「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」をアフリカにおいても着実に実践するために、特に人材育成を通じて「公衆衛生危機への対応能力及び予防・備えの強化」及び「アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進」の実現に貢献していくことや「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」の創設等の栄養分野での取組を打ち出した。そして、③社会安定化促進については、平和で安定したアフリカの実現に向けて、5万人への職業訓練を含む約960万人の人材育成及び約5億米ドルの支援の実施等を表明した。

全体会合及びテーマ別会合では、2013年のTICAD V以降に顕在化した国際資源価格の低下、保健システムの脆弱(ぜいじゃく)性及び暴力的過激主義の台頭等の課題に対応するため、アフリカを始めとする各国及び国際社会の取組について議論が交わされた。閉会式では、各会合の議論を踏まえ、TICAD VIの成果文書として「ナイロビ宣言」及び「ナイロビ実施計画」が採択された。

TICAD VI開催中、安倍総理大臣は、開催国ケニアのケニヤッタ大統領を始め、26人のアフリカの首脳級参加者との間で、岸田外務大臣は、10人のアフリカの閣僚級参加者及び7人の国際機関の長との間で、個別又はグループでの会談を行った。

TICAD(アフリカ開発会議)概要
TICAD(アフリカ開発会議)概要

今後、日本は、今回のTICADで表明した日本の取組及びナイロビ宣言の内容を国際社会と共に官民挙げて着実に実行に移していく。特に、今回安倍総理大臣が表明した日本の取組は、G7伊勢志摩サミットの成果を実践する第一歩である。日本の優れた科学技術・イノベーションの力を生かしつつ、TICADフォローアップメカニズム等を通じ、アフリカの開発及び民間セクターの活動を一層後押ししていく。

特集
TICADVI
~民間セクターのアフリカへの関心~

豊富な資源と人口増加を背景に成長を続けるアフリカは、国際社会における存在感を増しており、日本にとっても政治的・経済的に重要なパートナーです。日本は1993年にアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)を立ち上げてから一貫して、アフリカの開発課題に対する国際社会の議論をリードしてきました。TICADは「開かれた包摂的フォーラム」として、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)を共催者とし、開発関係の国際機関、欧米やアジアを始めとする開発パートナー国、市民社会や民間企業まで幅広い関係者が一堂に集うアフリカ開発に関する最大規模の国際会議です。

2016年8月27日及び28日の2日間にわたりケニアのナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICADVI)は、初のアフリカ開催という点のみならず、その規模や成果においても、歴史的な会合でした。TICADVIにはアフリカ53か国を始め、国際機関や市民社会、民間企業の代表等が参加し、サイドイベントを含めた参加者は全体で約1万1,000人というTICAD史上最大の規模となりました。会議では、2013年のTICADV以降にアフリカが直面している開発課題である、国際資源価格の下落により顕在化した経済構造転換の必要性、エボラ出血熱の流行に見られる保健システムの脆弱(ぜいじゃく)性及び社会の不安定化への対応について、集中的に議論を行い、成果文書として「ナイロビ宣言」を採択しました。

日本・アフリカ・ビジネスカンファレンスに出席する安倍総理大臣(8月28日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
日本・アフリカ・ビジネスカンファレンスに出席する安倍総理大臣(8月28日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
ジャパン・アフリカEXPOを視察する安倍総理大臣(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)
ジャパン・アフリカEXPOを視察する安倍総理大臣(8月27日、ケニア・ナイロビ 写真提供:内閣広報室)

また、TICADVIの大きな特徴は、民間セクターの全面的な関与にあります。日本からは、榊原定征経団連会長を始めとする77団体の企業・大学等による経済ミッションが安倍総理大臣に同行し、全てのセッションに民間の代表者が参加しました。サイドイベントの「日本・アフリカ・ビジネスカンファレンス」では、これら民間団体とアフリカ側の政府機関・企業等との間で73件の覚書が署名されました。経団連会長及び日本を代表する企業のトップがこれだけの規模でアフリカを訪問したことはこれまでになく、アフリカ側からも、大陸を代表する民間企業のトップが出席し、日本企業の貢献に対する評価と更なる投資促進への期待が述べられました。

そして、TICADVIが生み出したアフリカとの貿易・投資促進の機運を一過性のものにしないために、安倍総理大臣から、「日アフリカ官民経済フォーラム」の立ち上げが表明されました。これは、日本とアフリカ双方の閣僚、経済団体及び企業のトップが3年に1度アフリカに集い、更なる投資促進のための課題をビジネスの目線で特定し、官民が力を合わせて取り組んでいくフォーラムです。また、「2020年までに100の国・地域を対象とする投資関連協定の署名・発効を目指す」との政策目標を念頭に、アフリカ各国との投資関連協定についても集中的に取り組んでいきます。

TICADの強みは、アフリカ諸国の多様なニーズを踏まえた取組の着実なフォローアップにあります。2016年10月には、萩生田内閣官房副長官が、TICAD VIの成果の着実な実施について、在京アフリカ各国大使との間で意見交換を行いました。2019年のTICADVIIを視野に、官民挙げて積極的に取組を進めていきます。

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