2 中央アジア諸国とコーカサス諸国
(1)総論
中央アジア・コーカサス諸国は、アジア、欧州、ロシア、中東を結ぶ地政学的な要衝に位置するほか、豊富な石油、天然ガス、ウラン等の天然資源を有する。また、同諸国を含む地域全体の安定、テロとの闘い、麻薬対策といった国際社会が直面する重要課題に取り組んでいく上でも高い重要性を有する。
日本はこれら諸国との二国間関係の強化を要人往来等を通じて引き続き図るとともに、「中央アジア+日本」対話の枠組み等を活用した地域協力促進のための取組を続けている。
(2)中央アジア諸国
日本は、中央アジアの「開かれ、安定し、自立的な発展」を支え、同地域の平和と安定に寄与することを目的とした外交を推進しており、①二国間関係の着実な強化、②「中央アジア+日本」対話を通じた地域協力の促進・地域共通の課題への貢献及び③グローバルな舞台での協力を中央アジア外交の三本柱としている。
2018年においては、前年に引き続き要人往来等の活発な交流が行われた。中央アジア諸国からは、9月にサファーエフ・ウズベキスタン上院第一副議長、10月にラフモン・タジキスタン大統領、メレドフ・トルクメニスタン副首相兼外相、ホルムラードフ・ウズベキスタン副首相兼国家投資委員長、ホジャーエフ同国対外貿易相、12月にアリハーノフ同国下院副議長等が訪日した。

このうち、ラフモン・タジキスタン大統領は、約11年ぶりに訪日し、広島・京都を訪問するとともに、安倍総理大臣との首脳会談を行った。同首脳会談では、人材育成分野での協力、対アフガニスタン国境管理における協力及び二国間経済関係の強化を行っていくこと等を確認した。
また、ホルムラードフ・ウズベキスタン副首相兼国家投資委員長及びホジャーエフ同国対外貿易相は、麻生副総理大臣兼財務大臣及び阿部外務副大臣等と会談を行い、日本・ウズベキスタン経済合同会議に出席した。メレドフ・トルクメニスタン副首相兼外相は、安倍総理大臣への表敬、河野外務大臣との会談等を行った。これら要人の訪日に際しては、日本企業との協力案件に係る文書も作成された。
日本からは、7月に中根外務副大臣がウズベキスタンを訪問し、ホルムラードフ同国副首相兼国家投資委員長ほか、政府要人と会談を行った。また、12月に山田外務大臣政務官がキルギスを訪問し、アイダルベコフ外相と会談した。
中央アジアの安定と発展には地域共通課題の解決に向けた地域協力が不可欠との観点から、日本が「触媒」として地域協力を促していくために2004年に立ち上げた「中央アジア+日本」対話の枠組みにおいて、これまで6回の外相会合のほか、有識者やビジネス関係者の参加も得て様々な議論を実施してきている。設立から10年以上がたち、近年は対話にとどまらない、より実践的な協力に取り組んでおり、1月に第12回高級実務者会合を開催し、観光を新たなテーマとすることが決定された。これを受けて、観光を主題として2月に第4回専門家会合を実施した。3月に開催した第2回ビジネス対話においては100人を超える日本企業・経済団体関係者の参加を得た。また、7月には、「中央アジアの地域協力と地域安全保障の戦略的展望」と題して第11回東京対話(知的対話)を開催し、11月には第13回高級実務者会合を行った。
2018年は、国連タジキスタン監視団(UNMOT)に政務官として派遣された秋野豊・元筑波大助教授が同国で殉職してから20年目に当たり、研究者としての同氏の功績を再評価するとともに、平和構築・国際貢献の分野での日本の役割等について考察するシンポジウムを7月、河野外務大臣の出席を得て東京で開催した。タジキスタンにおいてもシンポジウムやUNMOT殉職職員顕彰碑の維持管理貢献者への表彰を行った。
一方、中央アジアにおいては、地域諸国間の協力関係が進展したことが特筆される。3月には、第1回中央アジア諸国首脳会合がカザフスタンにおいて開催された。各国首脳間の往来の拡大や、国境検問所・直行便の再開といった動きも見られた。また、8月には、カスピ海沿岸諸国首脳会合がカザフスタンにおいて開催され、沿岸5か国(カザフスタン、ロシア、トルクメニスタン、イラン、アゼルバイジャン)の間でカスピ海の法的地位に関する協定等に署名がなされた。
(3)コーカサス諸国
2018年は、日本とコーカサス諸国との関係において画期的な年となった。
日本からは、9月に河野外務大臣がアルメニア、ジョージア、アゼルバイジャンのコーカサス3か国を訪問し、首脳への表敬や外相会談等を行った。アルメニア及びジョージアには日本の外務大臣として史上初の訪問となり、アゼルバイジャンには、1999年の高村外務大臣の訪問以来19年ぶりの訪問となった。



コーカサス地域には、ジョージアにおける南オセチア・アブハジアや、アルメニアとアゼルバイジャンとの間のナゴルノ・カラバフをめぐる紛争が依然として存在するが、同時に同地域は、アジア、欧州、中東をつなぐゲートウェイ(玄関口)としての潜在性と国際社会の平和・安定に直結する戦略的重要性を有している。河野外務大臣は、コーカサス諸国を訪問した際、同地域に対する日本外交の基本方針として、①国造りを担う人造り支援(人材育成)及び②魅力的なコーカサス造りの支援(インフラ整備及びビジネス環境整備)の二本柱から成る「コーカサス・イニシアティブ」を発表した。
アゼルバイジャンでは、4月に大統領選挙が行われ、アリエフ大統領が再選された。5月には平木経済産業大臣政務官がカスピ海石油・ガス展示会及び国際会議出席のためアゼルバイジャンを訪問した。
アルメニアとの間では、2月に投資協定の署名式が行われた。また、同月に堀井学外務大臣政務官がアルメニアを訪問し、ナルバンジャン外相と会談を行った。5月、サルグシャン前大統領の首相就任に反対する大規模なデモが発生し、政府側は武力弾圧することなく首相が辞任し、反対派を率いたパシニャン国民議会議員が首相に選出された。
ジョージアでは、10月に大統領選挙が行われ、11月の決選投票においてズラビシヴィリ国会議員が当選し、大統領に就任した。