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Vol.161 2017年11月10日
日本と中央アジア5か国との外交関係樹立25周年

2015年10月,安倍総理大臣は日本の総理大臣として初めて,中央アジア5か国全ての国を訪問し,各国で温かい歓迎を受けました。中央アジア諸国とは,かつて日本に多くの分野や知識をもたらしたシルクロード上に位置する国々です。「シルクロードは知っていても,それぞれどういう国なのかよくわからない」という方のために,今回は,私たちにとって実はゆかりが深い,中央アジアの国々についてご紹介します。

人気漫画にも登場する注目の地域

中央アジア地図「乙嫁語り」という漫画をご存じでしょうか。この漫画は第7回マンガ大賞(2014年)にも選ばれた,森薫さんが描く人気作品です。物語の舞台は,19世紀後半の中央アジア・コーカサス。ストーリーの素晴らしさもさることながら,この地域の文化や風習などを,丁寧に描いていることでも人気が高く,私たちが中央アジアの国々を知る,ひとつのきっかけともなる作品です。「中央アジア」とは,ユーラシア大陸の中央部,カスピ海の東側にある,ロシアと中国とアフガニスタンとイランに囲まれた5か国(カザフスタンウズベキスタンキルギスタジキスタントルクメニスタン)のことを指します。これらの国々は豊富な天然資源を有し,雄大な自然のもとで,独自の歴史と文化を育んできました。それでは,ひとつひとつの国の特徴について,見てみましょう。

「乙嫁語り」の作家・森薫さんが手がけた中央アジア各国と日本のイメージキャラクターたち
 

国内の宇宙基地から日本人宇宙飛行士も旅立つ - カザフスタン

中央アジア諸国の中で最大の国土面積を有しているのが,カザフスタンです。その大きさは日本の約7倍,世界でも第9位の広さを誇ります。領土の29%をステップ(草原)が占め,標高7010mのハン・テングリ山を擁する天山山脈の支脈が連なっています。日本でもおなじみの花・チューリップは,この地方のものが原種とされています。人口は約1760万人。一人当たりGDPは中央アジア諸国では最も高く,近隣諸国への支援を行う立場にあり,石油,天然ガス,ウラン,レアアース等,豊富な資源を有しています。国際社会においても近年存在感を増しており,2017年には中央アジア初の安保理非常任理事国に選出されました。日本との交流も活発に行われ,2016年11月にはナザルバエフ大統領が訪日し,安倍総理と首脳会談を行いました。2017年6月10日から9月10日には首都アスタナにて「2017年アスタナ国際博覧会」が開催され,日本も出展しました。また,カザフスタン南部にあるバイコヌール宇宙基地からは,日本をはじめとする各国の人工衛星が打ち上げられており,野口聡一さんや若田光一さんなど多くの日本人宇宙飛行士が,同宇宙基地から国際宇宙ステーションへと旅立っています。

首都アスタナのシンボル「バイテレク展望塔」(左)と「カザフスタンのスイス」とよばれる北部の町ブラベイに位置するバラボエ湖
 

古都サマルカンドは世界屈指の人気観光地 - ウズベキスタン

ウズベキスタンの人口は中央アジア諸国の中で最も多く,3030万人に上ります。面積は44万7400平方キロメートルと日本の約1.2倍で,ウラン,金,ヨウ素,石油,天然ガス等の天然資源が豊富に産出されます。ウズベキスタンといえば,世界遺産にも登録された古都「サマルカンド」が有名です。かつて繁栄を極めたティムール帝国の首都であり,「サマルカンド・ブルー」と呼ばれる鮮やかな青色タイルを施した建物群の美しさは,世界中の観光客を魅了しています。国政的には,1991年の独立以来,一貫して同国を統治していたカリモフ大統領が2016年9月に急逝し,同年12月にミルジヨーエフ首相が新大統領に就任しました。日本との交流の歴史は古く,かつて日本人抑留者が建設した劇場や工場等は現在も稼働しており,日本人の技術・仕事への信頼・敬意の対象となっています。2016年11月には,スルタノフ・ウズベキスタン日本人抑留者資料館館長に対して叙勲が行われました。近年では日本企業の進出が著しく,2007年にはいすゞ社がウズベキスタンの自動車会社SAF社と契約を締結し,現地で小型バスの生産を開始しました。また,古代シルクロードの交差点であり,千年以上の絹生産の歴史を有する国内東部のフェルガナ地域では,2009年以降,日本の支援事業により,高品質蚕糸の安定生産が実現しています。

首都サマルカンド「レギスタン広場」のモスク(左)と,ウズベキスタンの伝統料理「ノン(平たい丸形パン)」(右)
 

キルギス人と日本人の顔立ちはそっくり? - キルギス

キルギスは,国土面積19万8500平方キロメートル,日本の約半分の広さを持ち,その9割以上が標高1500m以上にあるという山岳国です。人口は約600万人,首都のビシュケクは北緯43度とほぼ札幌と同じ緯度にあり,万年雪に覆われた山の景色が美しい都市です。琵琶湖の約9倍の大きさを誇るイシククル湖は,三蔵法師も立ち寄ったと言われる湖で,旧ソ連時代は外国人の立ち入りが禁止されていたため「幻の湖」とも呼ばれていました。キルギスに暮らす人々は,かつては季節ごとに移動し,羊,馬,ラクダ,牛といった家畜を育てながら遊牧生活を営んでいました。ソ連の定住化政策により,固定家屋に定住するようになりましたが,現在でも夏期や冠婚葬祭の折には,伝統的な移動式住居(ユルタ(ボズユイ)/モンゴルや中国では「ゲル」「パオ」などとも呼ばれる)を使用しています。日本との最大の共通点といえば,人々の外見です。キルギス人と日本人は,同一民族だったという説もあるほど顔立ちが似ている人が多く,新生児のお尻には蒙古斑が出るところも日本人と同様です。そのためなのか,キルギス人は非常に親日的です。2001年からは日本人に対する査証が免除されており,2012年より行われているキルギスマラソンには毎年多くの日本人が参加しています。またキルギス出身の盲目の歌手グルムさんが2015年に日本デビュー,その美しい歌声に多くの日本人ファンが魅了されています。

伝統舞踊を踊るキルギス人の子供(左)と,世界第2位の透明度と湖面標高を誇るイシククル湖畔にならぶユルタ(右)
 

風光明媚な山岳と豊かな水の国 - タジキスタン

中央アジアの大部分がステップや砂漠で覆われているのに対し,タジキスタンは隣国キルギスとともに,中央アジアでは珍しい山岳国です。人口は約850万人,14万3100平方キロメートル(北海道の約2倍)の国土の約9割を山岳地帯が占めており,良質なアプリコットやレモン等のフルーツの産地としても有名です。「タジキスタン国立公園」は,「世界の屋根」と呼ばれるパミール高原に広がる同国最大の自然保護区であり,世界遺産に登録されている屈指の観光地です。標高7000m級の山々,ユーラシア大陸最大の氷河地帯や隕石の衝突で形成されたとされるカラクル湖など,変化に富んだ景観と,希少な動植物に出会うことができます。タジキスタンには,この大氷河の他,大小あわせて1300以上の湖があり,さらに国内の河川の総延長は2万8500キロメートルと,地球の円周の7割の長さにもなります。この豊かな水の恵みを活かした水力発電が盛んにおこなわれており,将来的には国内で発電した電力をアフガニスタンやパキスタンに輸出する計画が期待されています。一方で,タジキスタンは旧ソ連から独立後,内戦の時代(1992-97年)を経て,現在では経済発展と貧困削減を国家再建の最優先課題としています。またアフガニスタンと長い国境線を接しており,同国からロシア・欧州への麻薬流通主要ルートとなっているため,タジキスタンとアフガニスタンの国境管理能力の強化が国際的にも課題となっています。日本は内戦時から現在に至るまで,タジキスタンに対して継続的な復興・開発支援を行っています。近年では,JICAによる甘草栽培への支援が行われ,日本企業も進出を開始しています。

タジキスタンが誇る山岳風景(左)と,タジキスタンの民族衣装(右)。
 

「白亜の首都」のある永世中立国 - トルクメニスタン

トルクメニスタンは人口約540万人,日本の約1.3倍の48万8000平方キロメートルの国土面積を有しています。世界4位の天然ガス埋蔵量を誇る資源大国であり,ロシア,中国,イランにパイプラインで輸出をしています。外交的には,一貫して中立政策を掲げる「永世中立国」です。「世界一凝った国旗」とも評される国旗には,国連旗とおなじ「平和の象徴」=オリーブの枝が描かれています。首都アシガバットは,ギネスブックに「白亜の大理石建造物の凝集度の高さ」世界一として載っている都市で,外装を白亜の大理石で覆われた13-14階建ての建物が林立している他,世界最大の室内観覧車や噴水複合施設など,ユニークな建築物が集中していることでも話題を集めています。日本との交流も活発で,資源の加工技術や発電等で先進機材の導入を重視している同国は,日本の高度な技術と人材育成に大きな期待を寄せています。また,教育重視の政策を打ち出したベルディムハメドフ大統領の決定により,2007年9月に初めて日本語学科が開設。現在では12の中学校と,その他5つの大学で日本語の授業が開始され,国内の日本語学習者数は1000人を超えています。一方,トルクメニスタン原産の馬種「アハルテケ馬」は,一日に千里を走るという中国歴史上の名馬「汗血馬」の子孫とする説もあるほどの名馬として知られており,東京の京王線「府中競馬正門前駅」の入口には,このアハルテケ馬がモチーフとなった銅像が建てられています。

「白亜の首都」アシガバット(左),トルクメニスタン国旗(中央),トルクメニスタン原産の名馬「アハルテケ」(右)。
 

「中央アジア+日本」対話

このように,めまぐるしい発展を遂げている中央アジア諸国に対して,日本企業も投資先として熱い視線を送っており,現地法人の設立などが相次いでいます。また日本と中央アジアは,外交的にも大変緊密な関係にあります。その象徴とも言えるのが「中央アジア+日本」対話です。この枠組みは,2004年に日本の川口外務大臣(当時)により立ち上げられた枠組みで,日本が言わば「触媒」となり,中央アジアの国々の地域協力を応援していこう,というものです。毎年のように公開シンポジウムが企画され,農業,防災,アフガニスタン情勢を見据えた麻薬対策・国境管理等,様々な分野において活発な意見交換が行われています。2014年にこの「中央アジア+日本」対話が10年目を迎えた時には,前述の森薫さんがイメージキャラクターを制作し,話題を集めました。また2016年の開催時には,「知られざる中央アジア」と銘打ち,従来の公開シンポジウム(東京対話)に加えて,映画祭,音楽祭,大使館オープンイベントという3つの文化交流イベントを初めて企画し,総勢約1200名が参加しました。音楽祭では,嘉門達夫氏が作詞作曲をした「ゆけ!ゆけ!中央アジア!!」が披露された他,キルギス出身の盲目の歌姫グルムさんのミニコンサートも開催され,大いに盛り上がりを見せました。

中央アジア+日本」対話・第9回東京対話ウィークリーイベントで行われた音楽祭(左)と大使館オープンイベント(右)の様子(2016年9月)
 

外交関係樹立25周年を迎えて

日本はこれまで,経済協力や「中央アジア+日本」対話などを通じて,中央アジア諸国の国造りを支援してきました。2017年2月には,「中央アジア+日本」ビジネス対話を開催。アジア5か国とのビジネスの可能性を紹介することを通じ,日本と各国との経済関係発展を後押しするための公開シンポジウムを行いました。また,同5月には,「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合がトルクメニスタンで開催され,岸田外務大臣と中央アジア5カ国の全ての外相が揃い有意義な議論ができました。さらに,同8月には,各国と日本との25年間の歩みを振り返る,「中央アジア+日本」対話・第10回東京対話「日・中央アジア関係の今と未来を展望する」(公開シンポジウム)が開催されました。昨年度に引き続き,サイドイベントとして,森薫さんの漫画作品「乙嫁語り」の原画展,森薫さんの書き下ろし漫画「中央アジアクッキング(全7話)」の制作・公開,中央アジアの料理動画の発信を行いました。いずれも,多くの方々にとって,漫画や料理という親しみやすい切り口から中央アジアの魅力に触れる良い機会となりました。 このように,冒頭でご紹介した通り,2015年の安倍総理の中央アジア5か国訪問 以来,連携強化の機運がますます高まってきています。2017年は,日本と中央アジア5か国とが,外交関係を樹立してから25年目に当たる節目の年です。これを契機に,日本と中央アジア諸国との関係の,さらなる発展が期待されています。

 
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