アジア

平成28年5月9日

 5月1日(日曜日)から6日(金曜日)まで,岸田文雄外務大臣はタイ,ミャンマー,ラオス及びベトナムを訪問したところ,概要以下のとおり。

1 訪問日程

(1)タイ・バンコク(5月1日~2日)
 外相会談,プラユット首相表敬,ソムキット副首相表敬

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    岸田外務大臣によるプラユット・タイ首相表敬
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    岸田外務大臣によるソムキット・タイ副首相表敬
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    ドーン・タイ外務大臣からの贈呈品

(2)ミャンマー・ネー・ピー・ドー(5月2日~3日)
 アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相と会談,ティン・チョウ大統領表敬,ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談

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    ティン・チョウ・ミャンマー大統領表敬
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    ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官表敬
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    アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問兼外相との会談

(3)ラオス・ビエンチャン(5月4日~5日)
 外相会談,トンルン首相表敬

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    トンルン・ラオス首相への表敬
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    日・ラオス外相会談
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    日・ラオス外相共同記者発表

(4)ベトナム・ハノイ(5月5日~6日)
 外相会談,日越協力委員会,フック首相表敬,クアン国家主席表敬

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    クアン・ベトナム国家主席表敬
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    フック・ベトナム首相表敬
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    日・ベトナム外相会談

2 東南アジア訪問の全般的な評価

岸田外務大臣ASEAN政策スピーチ
  • 岸田大臣は,今回のタイ及びラオス訪問によりASEAN10カ国全ての訪問を実現。実際の行動を通じて日本のASEAN重視の姿勢を示した(注1)。
  • ミャンマー,ラオス及びベトナムの新政権との間で友好関係が再確認された。
  • 2日,バンコクにおいて日本のASEAN政策についてのスピーチを実施。日本の強みを生かしてメコン地域を中心に「生きた連結性」を実現するため,「日メコン連結性イニシアティブ」(注2)を発表し,各国の賛同を得た。各国要人との会談を通じ,日本がASEANにとって欠かせないパートナーであることが改めて確認された。
  • 全ての訪問国において,熊本地震に対する丁重なお見舞いが繰り返し表明された。
  • 南シナ海問題を含む地域・国際場裏での課題についても率直に議論。

(注1)日本の外務大臣によるASEAN全10各国訪問は,約12年ぶり。

(注2)「日メコン連結性イニシアティブ」とは,メコン地域において,インフラ整備とともに,次のステージとして物理的な連結性が十分に活用されるための制度的な連結性,人的な連結性の強化に取り組み,謂わば「生きた連結性」を実現することにより,成長の果実を地域全体に普及させることを目的に,今般岸田大臣が提案した。

3 各国訪問の概要

(1)タイ

 メコン地域の中心。地域の発展・連結性強化のカギ。岸田大臣の初訪問。

(5月1日)<ドーン・タイ外務大臣との外相会談及び夕食会

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    日・タイ外相会談
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    日・タイ外相会談
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    日・タイ共同記者発表

 「戦略的パートナー」関係強化に向けて様々な意見交換実施。来年の日タイ修好130周年に向けた幅広い分野での協力強化,邦人の安全確保,日本企業の投資環境の促進等で一致。
 岸田大臣より「日メコン連結性イニシアティブ」について説明し,賛同を得た。
 岸田大臣より,先般のG7外相会合の成果を説明し,タイが地域の主要国としてASEANにおいても更に積極的な役割を担うことについての期待を表明。南シナ海の問題に関しては,外交的解決,法に基づく問題解決,及びASEANの一体となった対応が重要との認識で一致した。
 両外相は,農業や関連産業における一層の関係強化を促進するため「日本政府とタイ王国政府との間の農業及び関連分野における協力の深化に係る意図表明覚書」に署名した。

(5月2日)<プラユット首相表敬

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    プラユット・タイ首相表敬
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    プラユット・タイ首相表敬
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    プラユット・タイ首相表敬

 日・タイ・ミャンマーの3か国協力案件であるダウェー開発,鉄道協力その他のインフラ分野における協力の推進を確認。同首相は「日メコン連結性イニシアティブ」を支持。
 プラユット首相より,日本の政治・民主主義に学びたいと述べ,タイの政治改革・民主化に向けた努力について説明。岸田大臣より民政復帰プロセスへの期待を表明。

(5月2日)<ソムキット副首相表敬

ソムキット・タイ副首相表敬

 タイにおけるインフラ協力,日本企業のため投資環境の一層の整備,「産業人材育成協力イニシアティブ」を始めとする人材育成に関する協力等について意見交換。

(2)ミャンマー

 新政権発足後,日本の閣僚の初訪問

(5月3日)<アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相との会談

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    アウン・サン・スー・チー・
    ミャンマー国家最高顧問兼外相との会談
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    アウン・サン・スー・チー・
    ミャンマー国家最高顧問兼外相との会談
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    アウン・サン・スー・チー・
    ミャンマー国家最高顧問兼外相との共同記者会見

 岸田大臣より,新政権に日本の官民を挙げて協力していく,ミャンマー政府が重視する雇用創出,農業,保健等の分野で全面的に協力すること等発言。「日メコン連結性イニシアティブ」の下,インフラ整備に加え,制度改善や人材育成等に協力することを説明。スー・チー国家最高顧問は日本の支援に期待と謝意を表明し,同イニシアティブに賛同。
 岸田大臣より,国民和解の更なる進展に期待し,日本政府は笹川政府代表とともに,ミャンマーの取組を支えると述べ(注3),先方より笹川代表への謝意が表明された。
 岸田大臣より,G7広島外相会合の結果を説明し,ミャンマーのCTBT早期批准を要請。スー・チー国家最高顧問は,G7における日本のリードを誇りに思う,CTBTの早期批准は前向きに検討したいと述べた。

 (注3)岸田大臣のミャンマー訪問にあわせ,ミャンマーの少数民族地域において,民族同士の紛争や昨年の洪水被害に苦しむ住民,避難民に対する支援4件総額約38億円を国際機関と連携して実施することを決定し,交換公文に署名した。新政権が重視する国民の生活向上や,少数民族との国民和解に貢献するもの。

(5月3日)<ティン・チョウ大統領表敬

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    ティン・チョウ・ミャンマー大統領表敬
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    ティン・チョウ・ミャンマー大統領表敬
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    ティン・チョウ・ミャンマー大統領表敬
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 岸田大臣は,昨年9月のティラワ経済特区の開業を歓迎し,外国企業の円滑な登記等投資環境整備のため「日本ミャンマー共同イニシアティブ」を進めたい,租税条約について今後よく相談したい,旧日本軍の遺骨帰還事業に協力を得たい等発言。
 ティン・チョウ大統領は,旧日本軍の遺骨収集行事にできる限り協力したい,ティラワ経済特区における日本企業の活動が円滑に進むよう法律面を含め改善に努力する等応答。

(5月3日)<ミン・アウン・フライン国軍司令官表敬

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    ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官表敬
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    ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官表敬
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    ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官表敬

 国軍は民主化への動きを今後も強化するとの発言あり。防衛協力・交流等を議論。

(3)ラオス

 年初の人民革命党大会を受け,本年4月新たな国家指導部発足。今月末のG7サミット・アウトリーチ会合に新首相が参加予定。本年ASEAN議長国。岸田大臣初訪問。

(5月4日)<日ラオス外相会談

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    日・ラオス外相会談
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    日・ラオス外相会談
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    日・ラオス外相会談
 岸田大臣より,トンルン首相のサミット・アウトリーチ会合出席への謝意とASEAN議長国として議論への積極的な貢献を期待する旨述べ,先方も賛同。  岸田大臣より,LDC(後発開発途上国)脱却に向けたラオスの努力への支援を改めて表明し,「日メコン連結性イニシアティブ」の下,質の高いインフラ整備に加え,制度改善,人材育成等ソフト面の支援をきめ細かく実施する旨述べた。サルムサイ外相からは,日本の支援への期待及び謝意と,同イニシアティブへの賛同が表明された。  岸田大臣より,日本は,ASEANの更なる統合,格差是正に向けた議長国ラオスの取り組みを全面的に支援する,本年の関連会議に向け,(1)ASEAN共同体強化,(2)EAS強化策の着実な実施,(3)地域の喫緊の課題を重視することを説明した。  南シナ海問題に関し,双方は,国際法に基づく紛争の平和的解決及びASEANの中心性・一体性の重要性について一致した。双方は北朝鮮への懸念を共有。

(5月5日)<トンルン首相表敬

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    トンルン・ラオス首相表敬
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    トンルン・ラオス首相表敬
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    トンルン・ラオス首相表敬

 先方より,ASEAN議長国として本年のG7サミット・アウトリーチ会合への参加を楽しみにしているとの発言。また,「日メコン連結性イニシアティブ」への支持を表明。
 岸田大臣よりASEAN議長国ラオスを全面的に支援する旨発言。先方からは,様々な問題に直面すると思うが全力で問題解決に努めたい,協議を通じて文書のとりまとめに努めたいと応答。また,日本の支援に対する謝意が表明された。

(4)ベトナム

 年初の共産党大会の結果を受け,本年4月新たな国家指導部発足。今月末のG7サミット・アウトリーチ会合にフック首相が参加予定。

(5月5日)<フック首相表敬

フック・ベトナム首相表敬
フック・ベトナム首相表敬

 岸田大臣より,ODA等を通じたベトナム発展への支援の継続を表明。特に現在ベトナムで発生している干ばつ・塩害対策について具体的な支援を検討する旨表明し,フック首相からは日本の支援に対する感謝と期待が表明された。双方は,インフラ整備や日越大学を始めとする人材育成について協力を進めることで一致。
 岸田大臣より,G7外相会合の成果を説明し,今月末のサミット・アウトリーチ会合への参加と貢献を期待する旨伝達。フック首相は謝意とともに議論への貢献を表明。

(5月5日)<日ベトナム外相会談

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    日・ベトナム外相会談
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    日・ベトナム外相会談
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    日・ベトナム外相会談

 岸田大臣とミン副首相兼外相は,ベトナム新指導部との間で,「広範な戦略的パートナーシップ」の下,あらゆる分野の協力や要人往来,政財界の交流を強化することで一致。
 岸田大臣より,G7外相会合の成果を説明し,今月末のサミット・アウトリーチ会合へのフック首相の出席と貢献を期待する旨伝達。
 岸田大臣より「日メコン連結性イニシアティブ」について説明し,賛同を得た。
 両外相は地域情勢についても議論。南シナ海問題については,一方的な現状変更の試みに対する懸念が共有され,こうした問題についてASEANが一体となってメッセージを発出することが重要であること,法の支配,国際法に基づく紛争の平和的解決,航行および上空飛行の自由の重要性について一致。

(5月6日)<日越協力委員会第8回会合の主要成果>(注4)

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(1)日本企業のベトナムへの投資拡大に向け,日越共同イニシアティブ第6フェーズ等を通じ,企業が直面する課題の解決を図り更なる投資環境整備に取り組むことで一致。

(2)「質の高いインフラパートナーシップ」に基づき,従来以上に質・量ともに十分なインフラ投資をベトナムで実現することを我が方より表明。

(3)気候変動や環境分野における二国間プロジェクトの着実な実施を確認。干ばつ・塩害を含む気候変動対策について,具体的に協力する用意がある旨我が方より表明。

(4)その他,日越大学の推進,日越文化交流番組の継続,修学旅行の安定的実施について一致。

(注4)2006年11月,両国間の互恵的協力関係全体についての方向性を議論する場として設置。原則として年1回定期的に日本とベトナムで交互に開催。両国外相が共同議長となり関係省庁の幹部が同席。経済,経済協力,人的・文化交流,農業,エネルギー等幅広い分野を議論。

(5月6日)<クアン国家主席表敬

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    クアン・ベトナム国家主席表敬
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    クアン・ベトナム国家主席表敬
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    クアン・ベトナム国家主席表敬

 「広範な戦略的パートナーシップ」に基づく一層の協力,サミット・アウトリーチ会合へのベトナム出席を始めとする国際場裏での連携等を確認。地域情勢等も議論された。

4 ASEAN政策スピーチ

<概要>

  • 日時・場所:5月2日 チュラロンコン大学
  • 出席者:タイ政府関係者,現地外交団,タイ人学生,報道関係者他約160名

スピーチ骨子

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(1)日ASEANの3年半の歩み

 日本は一貫してASEAN共同体の構築,統合と域内格差是正を支援。「多様性」,「一体性」,「中心性」といったASEANの基本理念を尊重。

(2)今後の課題と日本の支援

 ASEAN,特にメコン地域の潜在力を開花させるため「連結性」の強化が重要。インフラ面だけでなくヒトとモノの流れを生み出す「生きた」連結性強化が重要。そのため,日本は,インフラの一層の整備や活用に加え,通関の円滑化等制度改善,「産業人材育成協力イニシアティブ」の下での人材育成,メコン河支援を実施していくとともに,昨年の日メコン首脳会議で表明した今後3年間で7,500億円の対メコン支援(PDF)別ウィンドウで開くを効果的に実施するための新しい枠組み「日メコン連結性イニシアティブ」の立ち上げを提案。

(3)地域・国際社会における協力

 地域の秩序を維持するため「多様性」の尊重を重視。「多様性」の尊重を支えるのは「法の支配」。日本は「海における法の支配の三原則」を主張。「法の支配」実現の鍵はEASの強化であり,日本は全面的に協力。

(4)日タイ関係

 「日メコン連結性イニシアティブ」を共に進めるパートナーとして,ドナーでもあるタイの一層の取組に期待。


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