アジア
第7回日本・メコン地域諸国首脳会議
平成27年7月4日



本4日午前9時10分から10時40分までの約1時間半,東京において,第7回日本・メコン地域諸国首脳会議(日・メコン首脳会議)が開催されたところ,概要は以下のとおりです(出席者:安倍晋三内閣総理大臣(議長),フン・セン・カンボジア首相(Samdech Akka Moha Sena Padei Techo Hun Sen, Prime Minister of the Kingdom of Cambodia),トンシン・タンマヴォン・ラオス首相(H.E. Mr. Thongsing Thammavong, Prime Minister of the Lao People’s Democratic Republic (Lao PDR)),テイン・セイン・ミャンマー大統領(H.E. U Thein Sein, President of the Republic of the Union of Myanmar),プラユット・ジャンオーチャー・タイ首相(H.E. Mr. Prayut Chan-o-cha, Prime Minister of the Kingdom of Thailand),グエン・タン・ズン・ベトナム首相(H.E. Mr. Nguyen Tan Dung, Prime Minister of the Socialist Republic of Viet Nam))。
会議では,今後3年間の日・メコン協力の方針「新東京戦略2015」が採択されました。
1 冒頭,安倍総理大臣から,陸上・海上輸送の要衝にあたるメコン地域の平和と安定は日本にとり極めて重要であるとともに,力強い経済成長を遂げつつあるメコン地域は,将来性豊かな成長のパートナーである旨述べました。
2 また,「東京戦略2012」の成果を総括しつつ,メコン地域で,包摂性,持続可能性,強靱性を兼ね備えた「質の高い成長」の実現を目指すことが重要との観点から,今後3年間の取組として,「新東京戦略2015」を提案しました。さらに,日本は,メコン地域に対して今後3年間で7500億円のODA支援を実施する旨表明しました。
(1) 「東京戦略2012」の成果の総括として,安倍総理大臣から,日・メコン協力は,この3年間,「東京戦略2012」に基づき,(1)連結性強化,(2)共に発展する,(3)人間の安全保障と持続可能性の確保を三本柱として,着実に成果を挙げてきた旨述べました。また,3年前に表明した3年間で約6,000億円のODA支援は達成しており,これは日本の強い決意の表れである旨発言しました。
また,日・メコン協力の進展には地域の安定が重要であり,民主化,民政復帰に向けた努力,国民和解,法の支配,人権等にかかる諸国の取組を歓迎する旨述べました。さらに,5月にタイ政府主催のインド洋での非正規移民に関する会合等の人道問題への地域のイニシアティブを評価する旨発言しました。
また,先月,アジアの平和構築に関するハイレベル・セミナーを開催したことに言及しつつ,戦後70年間,日本は平和国家としてアジアの平和と繁栄に全力を尽くし,アジア各国の平和構築と民主化に向けた動きに貢献してきた,この歩みを基礎に国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を掲げている旨を説明しました。
(2) 安倍総理大臣から,「新東京戦略2015」について,官民パートナーシップの活用も含め,民間投資の更なる促進と,地方及び民間の活力も取り込んだ重層的な協力関係の構築に努めつつ,以下の4つの柱に基づいて取組を進めていく旨説明しました。
第一の柱:メコン地域における産業基盤インフラの整備と域内外のハード連結性の強化
膨大なインフラ需要を有するメコンは最重点地域の一つであり,先般発表した「質の高いインフラパートナーシップ」に基づき,アジア開発銀行(ADB)と連携しながら,5年間で総額約1,100億ドル規模の「質の高いインフラ投資」を「質も量も」という姿勢でメコン地域においても推進していく決意を表明しました。
また,産業インフラ整備と域内外のハード連結性の強化も重視しており,域内外のハード連結性では,高速鉄道や都市鉄道の整備,メコンとインドをつなぐダウェー開発等に努めていく旨述べました。
第二の柱:産業人材育成とソフト連結性の強化
ソフト面では,(1)官民連携の促進や「メコン産業開発ビジョン」策定,(2)産業人材をはじめとする人材育成,(3)法制度整備を含む制度的連結性の強化,(4)東アジア地域包括的経済連携の早期妥結等,経済面での「ソフト連結性」の強化に取り組んでいく旨を説明しつつ,メコン諸国に対しては,民間の活力を一層活用すべく,更なる投資環境の整備に取り組むよう要請しました。また,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現等保健医療分野の協力や,文化・スポーツ・人的交流についても,我が国の取組を説明しました。
第三の柱:「質の高い成長」実現のための持続可能な発展に向けたグリーン・メコンの実現
グリーン・メコンの実現に向け,防災や環境・気候変動,エネルギー等への対応が必要であり,これらの分野において多くの知見を有する日本は,メコン地域の強靭性を高めるべく支援する用意がある旨を述べました。また,この関連で,「世界津波の日」制定に対するメコン諸国の支持に謝意を表明しました。このほか,高効率石炭火力の推進や,水資源管理,鯨類を含む水産資源の保全と持続可能な利用などについても議論が行われました。
第四の柱:「質の高い成長」実現に向けた,効率的・効果的支援等の実施のための,多様なプレーヤーとの連携
安倍総理大臣からは,メコン地域に対して主要国,国際機関,NGOなど多様な主体が強い関心を示す中,連携を通じた効率的・効果的支援が重要である旨を説明しつつ,日本は,エーヤワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)首脳会議を始め,メコン諸国自身の取組との連携を強化し,南南協力や三角協力にも取り組む旨述べました。また,ADBや東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を始めとする国際機関や関係国,民間の資金,知見を活用すべく,協力を強化していく旨述べました。
3 これに対し,メコン各国から,日本が,ASEAN共同体の発足を控え,「東京戦略2012」の三本柱に基づく取組を着実に実施し,メコン地域の域内外の連結性強化と「質の高い成長」に貢献していることへの高い評価とともに,メコン地域の開発と発展における日本の役割,特に,日本が「質の高いインフラパートナーシップ」に基づきメコン地域における「質の高いインフラ投資」を推進していくことや,人材育成への強い期待が表明されました。また,メコン諸国からは,日本とメコン地域の経済関係の深化を歓迎すると共に,日本企業の更なるメコン地域への進出,投資の増加,官民連携の強化を期待する声が聞かれました。
メコン諸国からは,日本が本年3月に仙台にて第3回国連防災世界会議を開催し,防災分野においても日本が建設的な役割を果たしていることへの高い評価と,グリーン・メコンの実現に向けた日本への期待感が表明されました。
また,「新東京戦略2015」が全会一致で採択されるとともに,今後,2018年に向けて日メコン協力を一層進展させていくことが合意されました。
4 また,国際社会と地域の平和と安定についても議論が行われました。安倍総理大臣からは,現在国会にて審議中の「平和安全法制」について,日本人の命と平和な暮らしを守ると共に,国際社会の平和と安定に一層貢献するためのものであることを説明し,各国首脳からは,地域の平和と安定はメコン地域の発展に不可欠であるとの認識が示されるとともに,戦後70年間の日本の平和国家としての歩みと積極的平和主義の取組に対し,力強い理解と支持が表明されました。特に,日本がこれまでPKOを通じて国際社会の平和と安定に貢献してきたことに対する高い評価と,今後の更なる取組への期待が表明されました。
また,朝鮮半島などの地域情勢,国連改革を含む国際課題についても議論が行われ,各国から日本の常任理事国入りにつき支持が表明されました。
海洋の安全に係る議論も行われ,航行及び飛行の自由について一致したほか,海洋における法の支配の必要性についても議論があり,南シナ海情勢における最近の動向に関する懸念が表明されました。
5 最後に,安倍総理大臣から,日本が今後も積極的平和主義の下,メコン地域諸国の繁栄と発展に貢献していきたい旨改めて表明しつつ,首脳間で,「質の高い成長」に向けた新たな行動計画を8月の外相会議で策定すること及び2016年に第8回日・メコン首脳会議をラオスにて開催することが確認されました。
会議では,今後3年間の日・メコン協力の方針「新東京戦略2015」が採択されました。
1 冒頭,安倍総理大臣から,陸上・海上輸送の要衝にあたるメコン地域の平和と安定は日本にとり極めて重要であるとともに,力強い経済成長を遂げつつあるメコン地域は,将来性豊かな成長のパートナーである旨述べました。
2 また,「東京戦略2012」の成果を総括しつつ,メコン地域で,包摂性,持続可能性,強靱性を兼ね備えた「質の高い成長」の実現を目指すことが重要との観点から,今後3年間の取組として,「新東京戦略2015」を提案しました。さらに,日本は,メコン地域に対して今後3年間で7500億円のODA支援を実施する旨表明しました。
(1) 「東京戦略2012」の成果の総括として,安倍総理大臣から,日・メコン協力は,この3年間,「東京戦略2012」に基づき,(1)連結性強化,(2)共に発展する,(3)人間の安全保障と持続可能性の確保を三本柱として,着実に成果を挙げてきた旨述べました。また,3年前に表明した3年間で約6,000億円のODA支援は達成しており,これは日本の強い決意の表れである旨発言しました。
また,日・メコン協力の進展には地域の安定が重要であり,民主化,民政復帰に向けた努力,国民和解,法の支配,人権等にかかる諸国の取組を歓迎する旨述べました。さらに,5月にタイ政府主催のインド洋での非正規移民に関する会合等の人道問題への地域のイニシアティブを評価する旨発言しました。
また,先月,アジアの平和構築に関するハイレベル・セミナーを開催したことに言及しつつ,戦後70年間,日本は平和国家としてアジアの平和と繁栄に全力を尽くし,アジア各国の平和構築と民主化に向けた動きに貢献してきた,この歩みを基礎に国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を掲げている旨を説明しました。
(2) 安倍総理大臣から,「新東京戦略2015」について,官民パートナーシップの活用も含め,民間投資の更なる促進と,地方及び民間の活力も取り込んだ重層的な協力関係の構築に努めつつ,以下の4つの柱に基づいて取組を進めていく旨説明しました。
第一の柱:メコン地域における産業基盤インフラの整備と域内外のハード連結性の強化
膨大なインフラ需要を有するメコンは最重点地域の一つであり,先般発表した「質の高いインフラパートナーシップ」に基づき,アジア開発銀行(ADB)と連携しながら,5年間で総額約1,100億ドル規模の「質の高いインフラ投資」を「質も量も」という姿勢でメコン地域においても推進していく決意を表明しました。
また,産業インフラ整備と域内外のハード連結性の強化も重視しており,域内外のハード連結性では,高速鉄道や都市鉄道の整備,メコンとインドをつなぐダウェー開発等に努めていく旨述べました。
第二の柱:産業人材育成とソフト連結性の強化
ソフト面では,(1)官民連携の促進や「メコン産業開発ビジョン」策定,(2)産業人材をはじめとする人材育成,(3)法制度整備を含む制度的連結性の強化,(4)東アジア地域包括的経済連携の早期妥結等,経済面での「ソフト連結性」の強化に取り組んでいく旨を説明しつつ,メコン諸国に対しては,民間の活力を一層活用すべく,更なる投資環境の整備に取り組むよう要請しました。また,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現等保健医療分野の協力や,文化・スポーツ・人的交流についても,我が国の取組を説明しました。
第三の柱:「質の高い成長」実現のための持続可能な発展に向けたグリーン・メコンの実現
グリーン・メコンの実現に向け,防災や環境・気候変動,エネルギー等への対応が必要であり,これらの分野において多くの知見を有する日本は,メコン地域の強靭性を高めるべく支援する用意がある旨を述べました。また,この関連で,「世界津波の日」制定に対するメコン諸国の支持に謝意を表明しました。このほか,高効率石炭火力の推進や,水資源管理,鯨類を含む水産資源の保全と持続可能な利用などについても議論が行われました。
第四の柱:「質の高い成長」実現に向けた,効率的・効果的支援等の実施のための,多様なプレーヤーとの連携
安倍総理大臣からは,メコン地域に対して主要国,国際機関,NGOなど多様な主体が強い関心を示す中,連携を通じた効率的・効果的支援が重要である旨を説明しつつ,日本は,エーヤワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)首脳会議を始め,メコン諸国自身の取組との連携を強化し,南南協力や三角協力にも取り組む旨述べました。また,ADBや東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を始めとする国際機関や関係国,民間の資金,知見を活用すべく,協力を強化していく旨述べました。
3 これに対し,メコン各国から,日本が,ASEAN共同体の発足を控え,「東京戦略2012」の三本柱に基づく取組を着実に実施し,メコン地域の域内外の連結性強化と「質の高い成長」に貢献していることへの高い評価とともに,メコン地域の開発と発展における日本の役割,特に,日本が「質の高いインフラパートナーシップ」に基づきメコン地域における「質の高いインフラ投資」を推進していくことや,人材育成への強い期待が表明されました。また,メコン諸国からは,日本とメコン地域の経済関係の深化を歓迎すると共に,日本企業の更なるメコン地域への進出,投資の増加,官民連携の強化を期待する声が聞かれました。
メコン諸国からは,日本が本年3月に仙台にて第3回国連防災世界会議を開催し,防災分野においても日本が建設的な役割を果たしていることへの高い評価と,グリーン・メコンの実現に向けた日本への期待感が表明されました。
また,「新東京戦略2015」が全会一致で採択されるとともに,今後,2018年に向けて日メコン協力を一層進展させていくことが合意されました。
4 また,国際社会と地域の平和と安定についても議論が行われました。安倍総理大臣からは,現在国会にて審議中の「平和安全法制」について,日本人の命と平和な暮らしを守ると共に,国際社会の平和と安定に一層貢献するためのものであることを説明し,各国首脳からは,地域の平和と安定はメコン地域の発展に不可欠であるとの認識が示されるとともに,戦後70年間の日本の平和国家としての歩みと積極的平和主義の取組に対し,力強い理解と支持が表明されました。特に,日本がこれまでPKOを通じて国際社会の平和と安定に貢献してきたことに対する高い評価と,今後の更なる取組への期待が表明されました。
また,朝鮮半島などの地域情勢,国連改革を含む国際課題についても議論が行われ,各国から日本の常任理事国入りにつき支持が表明されました。
海洋の安全に係る議論も行われ,航行及び飛行の自由について一致したほか,海洋における法の支配の必要性についても議論があり,南シナ海情勢における最近の動向に関する懸念が表明されました。
5 最後に,安倍総理大臣から,日本が今後も積極的平和主義の下,メコン地域諸国の繁栄と発展に貢献していきたい旨改めて表明しつつ,首脳間で,「質の高い成長」に向けた新たな行動計画を8月の外相会議で策定すること及び2016年に第8回日・メコン首脳会議をラオスにて開催することが確認されました。