4 南部アフリカ地域
(1)アンゴラ
アンゴラは安定した政治基盤を有し、積極的な多国間外交を通じて、地域の平和と安定に重要な役割を果たしている。豊富な資源を有する同国は、経済多角化・安定化を目指し、ビジネス環境の改善や国内産業の振興に取り組んでいる。7月には、日・アンゴラ投資協定が発効した。8月には、TICAD閣僚会合出席のため訪日したオリヴェイラ工業・商務相と深澤外務大臣政務官が会談し、2025年にAU議長国を務めるアンゴラとのTICAD9に向けた連携強化や、日本企業の投資促進について議論した。
(2)エスワティニ
エスワティニは、国王であるムスワティ3世の下、アフリカ唯一の絶対君主制が維持されている。また、アフリカで唯一台湾との外交関係を有する国である。8月、TICAD閣僚会合出席のため訪日したドラドラ副首相は上川外務大臣と会談を行い、食料安全保障、教育などの分野で引き続き協力していくことで一致した。
(3)ザンビア
銅などの豊富な鉱物資源を有するザンビアは、2024年にザンビア独立60周年及び日本との外交関係樹立60周年を迎えた。4月にはカブスウェ鉱山・鉱物開発相が鉱業投資セミナー出席のため訪日した。8月、日本は、ザンビアの食料不安に対応するため、緊急無償資金協力による食料支援を決定した。また、同月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したムソコトワネ財務・国家計画相と上川外務大臣が会談し、経済関係を始めとした二国間関係の一層の強化に向け協力することで一致した。2025年2月には、ヒチレマ大統領が実務訪問賓客として初めて訪日し、石破総理大臣と首脳会談を行った。両首脳は日・ザンビア投資協定の署名を歓迎し、ビジネス関係を含む二国間関係の強化及び国際場裡での協力深化について一致した。

(4)ジンバブエ
ジンバブエは、南部アフリカ地域における交通・流通及び送電などの要所であるとともに、豊富な鉱物資源や肥沃な土地に恵まれた内陸国であり、8月から南部アフリカ開発共同体(SADC)の議長国を務める。日本は、1980年の独立以来、良好な外交関係を有しており、3月には、地域経済への統合に資する南北回廊の改修への支援を、8月には干ばつ対策として食糧援助を決定した。また、8月のTICAD閣僚会合の際に実施された日・ジンバブエ外相会談では、シャワ外務・国際貿易相から支援への謝意が述べられるとともに、資源の安定的な供給に関して議論を行った。
(5)ナミビア
2月、ガインコブ大統領の急逝後、ムブンバ新大統領への権限委譲が平和裡に行われた。11月に実施された大統領選挙では、与党である南西アフリカ人民機構(SWAPO)候補者のナンディ=ンダイトワ副大統領が勝利した。
干ばつ被害が深刻なナミビアに対し、8月、日本は、緊急無償資金協力による食料支援を決定した。同月、TICAD閣僚会合出席のため訪日したムシェレンガ・国際関係・協力相と上川外務大臣が会談を行い、産業多角化に向けた幅広い分野で連携を強化していくことを確認した。
(6)ボツワナ
10月30日、総選挙が行われ、野党であった「民主改革のためのアンブレラ(UDC)」が国民議会選挙で過半数を獲得し、UDCのボコ代表が11月8日に新大統領に就任した。1966年の独立以来初の政権交代となったが、選挙プロセスも政権移行も憲法の規定に従って民主的かつ平穏に行われた。
8月、TICAD閣僚会合出席のため訪日したクワペ外相が上川外務大臣と二国間会談を行い、ボツワナが重視する産業多角化や人材育成分野での連携促進を確認した。
(7)マラウイ
マラウイは、1964年の独立以来、安定した内政を維持している。日本は、基本的な価値や原則を共有する同国と長年にわたり友好関係を築いており、外交関係樹立60周年に際し、8月にはテンボ外相を外務省賓客として招へいした。上川外務大臣は、テンボ外相と会談を行い、累積派遣数が世界最多であるJICA海外協力隊員を通じた友好関係の更なる増進、鉱業分野での人材育成など様々な分野で引き続き協力していくことで一致した。

(8)南アフリカ
5月に実施された総選挙で与党アフリカ民族会議(ANC)の得票率が1994年以降初めて過半数を割り込み、他党と国民統合政府(GNU)が樹立された。再任されたラマポーザ大統領の下、12月からはG20議長国を務め、アフリカの経済大国、またビジネスの展開拠点として、日本を含む外国企業から引き続き関心を集めている。7月には海上自衛隊練習艦隊が寄港し、両国間で初の親善訓練を行った。8月、TICAD閣僚会合に際して上川外務大臣がラモラ国際関係・協力相と会談を行い、二国間関係の強化や国際場裡における連携について確認した。12月には、水素・アンモニアや電力といったエネルギー分野における日本との協力関係強化のため、ラモホパ電力・エネルギー相が訪日した。

(9)モザンビーク
モザンビークは、南東部アフリカの玄関口としてFOIPを西側から臨む要衝であり、天然ガス、石炭、黒鉛などの豊かな天然資源を背景に、外国資本による開発が進展している。同国北部における武装勢力による襲撃の継続により、2021年以降、日本企業も参画する液化天然ガス(LNG)開発事業が中断されたこともあり、日本政府は、治安改善に向け様々な支援を継続している。3月には、アフリカ初となるオファー型協力を活用し、カーボデルガード州の安定化及び北部地域全体の成長につながる多角的な開発を共に進めていくことの重要性を確認し、実現に向けて調整していくことで一致した。8月、TICAD閣僚会合出席のため訪日したゴンサルヴェス外務協力副相と辻󠄀外務副大臣との会談では、同外務協力副相から、北部の治安改善や、前年10月に開港したナカラ港への日本の協力に対し謝意が表され、エネルギーを始めとした様々な分野で引き続き協力していくことで一致した。
(10)レソト
レソトは国土の大部分が山岳高地の内陸国で、豊富な水資源を有し、近隣国に水を輸出している。日本も、同国の小水力発電設備に対する支援など、様々な分野で協力関係を築いてきた。8月、上川外務大臣は、TICAD閣僚会合出席のため訪日したタウ首相府担当相と会談を行い、再生エネルギー促進、若者を対象とした人材育成、食料安全保障、ブルーエコノミーなどを通じて、二国間関係を強化していくことを確認した。
2024年、日本とザンビアは外交関係樹立60周年を迎えました。ザンビアは、周辺8か国と国境を接する南部アフリカの内陸国で、独立以来安定した政治体制を維持しており、南部アフリカにおける「平和の曙(しょ)光」とも呼ばれています。また、その美しい自然と、銅に代表される豊かな鉱物資源で知られています。特に、ジンバブエとの国境に位置し、世界遺産にも登録されているヴィクトリアの滝は、その壮大さで訪れる人々を魅了しています。また、ザンビアは多様な野生動物が生息する国立公園や、伝統的な文化と現代的な都市が共存する国としても知られています。
日本とザンビアの友好関係は、1964年のザンビア独立と同時に始まりました。この年、日本では東京オリンピックが開催され、ザンビアは当時の国名であった北ローデシアとして参加していました。ザンビアが高らかに独立を宣言した10月24日に東京オリンピックの閉会式が実施され、真新しいザンビア国旗が国際舞台で初めて掲げられたというオリンピック史上唯一無二の歴史的エピソードがあります。
日本はザンビアの経済・社会開発を後押しするため、多岐にわたる分野で幅広い協力を実施してきました。特に日本の支援を受けて1986年に完成したザンビア大学獣医学部では、これまで北海道大学から200名以上の研究者が研修指導を行い、ザンビア大学からは学生が学位取得などのために来日するなど、両国間の友好関係を象徴するフラグシップとなっています。
外交関係樹立60周年という重要な節目の年である2024年には、両国間の相互理解の促進と友好関係の深化のため、両国各地で数多くの記念事業が実施されました。ザンビアのルサカ国立博物館において開催された、国際交流基金(JF)による海外巡回展「NINGYO 日本人形の美と芸術」や独立行政法人国際協力機構(JICA)による写真展「協力と友情の60年、日本からザンビアへ」はその一例です。
中でも、和太鼓グループ「彩(さい)」によるザンビア公演1は、両国の友好関係をより一層強化する重要な大型文化事業となりました。8月31日から9月3日まで、四つの会場で計約3,200人の観客を前にリズムと躍動感あふれる和太鼓の力強い演奏が披露され、各会場では総立ちの観客から万雷の拍手が送られました。このような文化交流イベントは、日本とザンビアの両国民の距離を縮めるだけでなく、更なる友好関係を築く基盤となりました。

また、記念ロゴマークには、多数の公募作品の中から、両国の国旗の色をベースに、ザンビアの国鳥であるサンショクウミワシ(フィッシュ・イーグル)と日本の国花である桜があしらわれた作品が選ばれました。両国の自然、力強さ、文化の象徴を美しく織り込み、日本とザンビアの過去、現在、そして未来のパートナーシップに向けた誇りと感謝が込められています。

さらに、2025年2月3日から7日までヒチレマ大統領が実務訪問賓客として初訪日しました。ヒチレマ大統領は、石破総理大臣と首脳会談を行い、経済関係の一層の強化、国際場裡(り)における協力の強化などで一致しました。同大統領訪日中、天皇陛下は御所で同大統領と御会見になりました。この他、ヒチレマ大統領は日・ザンビア・ビジネスフォーラムへの出席、日本企業の視察などを行いました。今次訪問の機会に日・ザンビア投資協定が署名されるなど、今回の大統領訪日は2024年の外交関係樹立60周年を踏まえ、二国間関係の更なる強化に向けて弾みを付ける契機となりました。

1 本公演を含む現地での60周年記念イベントについては、在ザンビア日本国大使館の公式facebook参照(随時更新)
https://www.facebook.com/JAPANinZAMBIA/?locale=ja_JP
